第15話
発砲した魔弾は、白銀を纏い鎌のような扇を描いて空を切り裂く。そして、狙った的の中心を貫通すると、そこからぱりぱりと的にヒビが入って割れ、的がカランと地に落ちた。
それを見届けてすぐ、私はその場に崩れ落ちるように膝を着いて蹲り、地に魔銃を置いた。
「いってぇ……」
発砲した衝撃が手のひらに、腕に伝わり、じりじりとした痛みと痺れが襲う。
(一瞬、腕ごと持ってかれたかと思った……)
手から腕の痛みと痺れは割とすぐに治り、魔銃を持って立ち上がれば、先程まで離れていたリンジーがまた側に来ていた。
「ガキンチョ、もうちょっと鍛えたほうがいいぜ? そんなひょろい身体じゃ何発も撃てねぇよ……まぁ、今日は試し撃ちだからあともう一回頑張れよ!」
言っていることは本当なので、素直に「わかりました」と頷く。この衝撃をあともう一度受けなければならないのか、と手のひらを一度見る。
(結構、キツいな……)
私の手に握られた魔銃がリンジーによって、もう一種類の魔銃が取り替えられる。
「次の魔銃は、カプセル状の物をつくるところからイメージして撃つんだ。あと、この魔銃は火属性の魔結石しか使えないが、やり方はさっきと一緒だ」
魔銃の引き金を引く手で握る銃把の側面には、先程のダイアモンドではなく、ルビーの輝きを放つ魔結石がはめ込まれていた。また、魔弾を収納する弾倉には、丸く薄い金属板がはめ込まれている。
リンジーが離れたのを確認し、構えをとり、照星から的の中心を見る。
そして、弾倉にある、丸く薄い金属板が火属性の魔結石で溶かされ、カプセル状に変形するイメージを魔結石に伝える。すると、この段階で魔結石が熱くなり、赤く輝き出す。あとは、先程のようにイメージするだけ。
人差し指をくいっと折り曲げて引き金を引く。
バアアァァン────────────!
発砲した魔弾は、地上に隕石が落ちる時のように、真っ赤な炎を纏って的を貫通した。貫通後の的は中心から広がるように徐々に燃えて一瞬のうちに焦がした。
銃声から、先程とは異なり格が違うのは明らかだ。凄まじい轟音が響き渡り、威力が強く、爆発でも起きたかのようだ。撃った衝撃で痛みや痺れはあるものの、二回目だからか蹲るほどではなく、手首をぶらぶらと振って解す程度で済んだ。
「こりゃあ、すげぇな……」
リンジーも想定外だったようで、口をあんぐりと開けている。
「発砲までに時間はかかりますが、威力はこっちの方が良さそうですね」
「あぁ、まるで魔力でも纏ってるみてぇだな……。まぁ、魔結石で実際に魔力は纏ってんだけど……って、何言ってんだか。ま、いっか! 上手くいったようで取り敢えず良かったぜ!」
リンジーは深く考えるのはやめたようだ。
(魔力を纏っている……か。)
武器屋をしているリンジーが言っているんだ。きっと何かあるんだろう。ひとまず、今回のことは頭の片隅に置いておくことにした。
ふと壁に佇む彼らに目をやると、ドン引きした顔をしていた。その顔は、昨日リンジーとウルジーに希望をだした時の顔とそっくりだった。
(まぁ、それもそうか……)
だって、丸く薄い金属板っていうのは、"硬貨"のことだからな。
〜魔銃のおさらい〜
【魔銃】
トリガーを引く手で握るグリップの側面には、魔結石がはめ込まれている。
魔弾を収納するマガジンには、魔結石から伝わる力を込めるために空洞になったカプセル状の物が入っている。このカプセルは刑事ドラマに出てくる銃弾と同じような形状。
最後に、魔結石にどのように魔弾が飛ぶのかイメージするだけ。
【隼人が希望したオーダーメイド魔銃】
トリガーを引く手で握るグリップの側面には、魔結石がはめ込まれている。
魔弾を収納するマガジンには、硬貨がはめ込まれている。この硬貨を火属性の魔結石で溶かして刑事ドラマに出てくるような銃弾に変形するようイメージする。
最後に、魔結石にどのように魔弾が飛ぶのかイメージするだけ。




