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第13話

 私は今、サンタクロースのような麻袋を背負っている。この中に入っているのは、先程買った家具が大幅を占める。後ろに引っ張られ、身体の重心が後方へいきそうなのを前のめりになり、腰を曲げて抵抗して歩く。


「自分に持たせて頂けませんか?」


 その様子を見かねたのだろう、家具屋を出てから五分も経たないうちに狼人がそう言ってきた。


「……有難う。頼む」


 奴隷商館から出たのは昨日だ。まだ、体力が戻っていないだろうに、と申し訳なさを感じつつ、登録収納の小さな麻袋のみを中から取り出して狼人に渡した。大丈夫だろうかと見ていると、パンパンになった大きな麻袋を涼やかな顔でひょいっと軽々しく背負ってしまうものだから唖然とする。


「大丈夫か?」


「はい」


 顔に出さないだけで、本当は重いのではと心配になって聞くが、返事をした彼はやはりケロッとしている。


(結構、重かったのにな……)


 獣人の力に感心していると、後方にいた狐人がふらりとやってきて横に並ぶ。


「ねぇ、アイテムボックス持ってないの?」


(アイテムボックス? なんでも収納できるやつか? でもあれは……)


「アイテムボックスといえば、スキルじゃなかったか?」


「いや? 無限収納(イベントリ)がスキルで、アイテムボックスは魔道具だよ。それ知らないって、君どれだけ田舎に住んでたのさ……」


 狐人が目を細めながら、「え? マジ? これだから田舎者は……」みたいな顔で蔑んでくるから思わずイラッとし、眉毛が無意識にピクッと動くのがわかったが、気にしないようにする。


「それで……アイテムボックスは買えるのか?」


「魔道具屋に普通に売ってるよ。でも、不良品押し付けてくる店もあるから気をつけてねー」


(ふむ。なら、あそこか)



***



 私たちは、『リンジーとウルジーの武器魔道具屋』にやってきた。


 ここは築年数がかなり長いためか、ロング・リーフ・パ(木製)インの床が歩く度にこつこつ音を立てると同時に、ギシギシと(きし)む。さらに油を使うためなのか、床がぬるっとしている。


 因みに、ここへ来るのは二回目で、異世界転生初日にここの武器屋に少し顔を出していたのだ。武器屋と魔道具屋は出入り口は別々だが、中は繋がった構造になっている。


「おぉ? あんちゃんじゃねぇか! ちょうど良かった。昨日言ってた魔銃、出来たぜ! 奥で試し撃ちしてくか?」


 くいっと親指を立てて後ろを指差すのは、ウルジーだ。彼はドワーフという背丈の低い種族だ。少し焼けた茶色い肌と職業柄かがっしりとした太い腕、上唇全体を覆う口髭(シェブロン)は頼りがいのある、おっさんという感じだ。


「もう出来たんですか?」


「あぁ! 今日、あんちゃんの宿に使いを出して伝えに行こうと思ってたから丁度良かったぜ!」


「ガハハハ」と人の良さそうな顔をして笑う彼は、客を探るような目で見てこないので、肩の力を抜いて話せる。そのため、私は自然と柔らかな口調になる。


「そういえば、何か他の用事でもあったのか?」


「はい、荷物の持ち運びにアイテムボックスを買おうかと思いまして」



 

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