第23話
ローブを羽織った五人を上から下までじっと観察する。拘束具が外され、剥き出しになっていた身体はローブで隠され、一見して奴隷とはわからないが、裸足のままだから足元を見ればそれが分かってしまうだろう。
それに、外は日本のコンクリートのように綺麗に整備されておらず、小石やでこぼこした地面が足の負担になる。
(このままだと痛いよな……)
ふと、麻袋に入っている予備のローブの存在を思い出し、それを取り出す。そして、再度サバイバルナイフをホルダーから抜き、
シュルッ、ビリビリビリビリ……────。
シュルッ、ビリビリビリビリ……。
応接室に無機質な音を響かせながら、ローブを引き裂く。
「え、何してんの?」
無言で淡々と作業を熟す私に、狐人が聞いてくる。狐人も含めて不思議そうな顔で見てきた。
「おまえらの靴の代わりだ。靴屋までそう遠くはないが、短距離でも地べたを歩くのは辛いだろう?」
暫し返答のない狐人が気になり、膝上にかけられたローブから視線を外せば、彼の顔はほんのり赤く染まっていた。気になって、私はローブを横に退けると、狐人の側に寄り、額に掌を当てる。
「どうした? もしかして、熱でも出たか……貴方は二回も契約したから疲れが出たんだろう。龍人、回復魔法で熱は治せるか?」
そう言って龍人の方を見てみれば、「フハハハハ!」と龍人が大きな声で笑いはじめた。
「なんだ……急に笑って」
突然笑い出したものだから、訳がわからず首を傾げ、不審な目を向ける。
「ご主人、狐人は熱が出たわけではないようだぞ。放っておけば、数分後には治る現象だから心配無用だ」
笑いを堪えようとするが、もう駄目だ堪えきれないといった様子で龍人は腹を抱えて、笑っている。
本当にこのままで大丈夫なんだろうかと再び狐人の顔を見ようとするが、彼はソファに顔を埋めていた。
十等分にしたローブの切れ端の束がようやく出来上がったので横目で狐人を気にしつつ、鬼人をソファに座らせ、彼の足を私のしゃがんだ膝の上に乗せる。すると、彼は身体をビクッとさせて硬直した。
「大丈夫か?」
「あぁ、いやっ、はい」
(どっちだ⁉︎)
大方、急いで敬語に直そうとしたからだろう。
膝に乗せた足を持ち上げ、足裏にローブの切れ端を巻き、足首で縛った。
「痛くないか?」
「は、はい!」とぎこちなく返事をしてソファから立ち上がると、「あ、有難う、ございます」と小さな声で礼を言ってきた。うつむいた彼の顔が少し見えたが、赤くなっていた。
(この世界特有の体質なのか?)
次はエルフだ。足に布を巻いてあげれば、彼は思ったよりもはっきりとした声で「有難うございます……」と礼を言って顔を赤くした。その後、フードを深く被ったので、恐らく主人の私が恐かったのだろう。
奴隷達との溝は深い、と思う隼人であった。




