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第18話

「グガアアァァァァァァァァァァァァーーーーー‼︎」


 3番の鬼人がけたたましい声を上げた。


「つっ……⁉︎」


 ボサボサのくすんだファイアーレッドの頭を振り、ジャラジャラと鎖を揺らして暴れ出す。思わず耳を塞ぎたくなるような悲痛な叫びと共に、涙がぼろぼろと流れ落ちた。


 その叫び声に、胸が締めつけられた。これで良かったのか、合っているのか、間違っていたのか、どうするべきだったのか、考えればもっと他の方法があったのでは、いや──途方もない自問自答が頭の中で何度も何度も繰り返された。室内に響き渡る叫びに、まるで責められているような気がして耳を塞ぎたくなり、膝に置いた手を少し一度持ち上げたが、また膝に戻した。


 奴隷を買うということは、命を買うということ。私にはまだその覚悟がなかったのかもしれない。甘かった。


 耳を塞がない代わりに、私は視線を下げて目を伏せた。


 隼人が奴隷を買う上での責任の重大性に気がついた瞬間である。


 鬼人が声を上げるのを止め、肩を上下に大きく揺らし息切れをし、少し落ち着いた頃、彼の左手の甲に白い湯気を上げながらじわりと紋が浮かび上がった。


(これが、命従紋(めいじゅうもん)か……)


「主従契約には痛みが伴うのか?」


「えぇ、これも奴隷を管理するために必要ですから」


 その後、17番、24番、55番と主従契約を結び、最後は97番の狐人のみとなった。


「役所で書いてきた。主従契約する前に内容を確認してくれ」


 私は麻袋から『血の契約書』を取り出し、狐人の前にそれを置いた。


「血の、契約書?」


 蝶ネクタイの男の呟きは無視する。この男は血の契約を知らないのだろう。



────────────────────────────────

         血の契約書



___この血の所有者は、本日から三年後下記の血の所有者を解放すると共に一年暮らせる程の金銭を充分に提供することをここに誓う。



___この血の所有者は、本日から三年間上記の血の所有者の元で労働することをここに誓う。


 双方共に契約違反した場合、天命に従うことをここに誓う。


────────────────────────────────



 狐人は血の契約書を奪い取るようにガサリと手にした。


「ふぅ~ん」


 契約書の文に全て目を通した後、彼は契約書を摘むように掲げ、次の瞬間、




 ビリビリビリリッ─────────‼︎




「なっ⁉︎」


 私は唖然とする。


(まさか契約書に不備が……?)


「ねぇ、やっぱり君って騙されやすいよねぇ~?」


 理解の追いついていない私を置いてきぼりにして、狐人の彼は軽快に「ハハハッ!」と笑った。


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