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第11話

 肩まで伸びた艶やかなリーフグリーンのストレートの髪、ゴールデンイエローの瞳、雪のようなスノーホワイトの肌をした青年は、顔を歪めていた。まるで、痛みに耐えるかのように───。


 彼女はきっと無意識だったのだろう。ご老人を庇って、歩道橋に背を向け空に手を伸ばし、足が浮いて落ちた瞬間、ほっとし笑った表情を浮かべていたことに───。



 何故、その歳でそんな顔が出来てしまうのか。



 彼女の顔は、あまりにも大人びていた。


 歩道橋の下で、血溜まりをつくりながらうつ伏せになっている彼女の側へ寄り添う。


 暫くすると、彼女の肉体からベビーブルーとターコイズブルーの入り混じった透き通るような球体──魂がふわりと姿を現した。



 なんて綺麗な魂なんだろう。



 よく見てみれば、奥深くにミッドナイトブルーのような暗い色が見えてくる。これは、彼女の心の闇だ。


「いいかい? 今度はちゃんと幸せになるんだ」


 そして、彼女の魂を両手で包み込み、飲み干した。私の世界の者とするために。




***




 星と世界は、神の数だけ存在する。何百、何千、正確には一体どれだけあるのかは、どの神も把握しきれていないだろう。


 それでも管理してゆかなければならないから、第一領域、第二領域……というように区分され、その領域だけは他世界同士であっても把握しなければならないという決まりがある。


 年に一度、神たちが集まり、会議を行う。特に大きな問題があるわけではないので、毎度、報告会という名の親睦会になっているわけだが。


 私の管轄である第三世界は、第一領域に区分され、今回は出雲大社にて会議が行われる予定であり、第三世界の代表として私が赴くこととなった。


 どうしても、管轄外である他世界へ行くと神力は弱ってしまい人の形をとれないので、その世界の動物に憑依しなければならなくなる。


 少ない神力でどうにか出雲大社のある島根に身体をおろした私は、近くにいた野良の白猫に憑依した。


 出雲大社へ向かう途中、うっかり車にはねられてしまった。世界が違い、車というものを見慣れていなかったことで、上手く対処できなかったからなのだろう。


 はねられた衝撃で、憑依していた猫の肉体から弾き出された。


 神は滅多なことがない限り死ぬことはないが、猫が私の所為で死んでしまうことに心が痛んだ。そんな時に、彼女に助けられたのだった。


 たかが猫一匹、車にはねられても誰も見向きもしないというのに、彼女だけがその猫に駆け寄り、血塗れの小さな身体を抱え、動物病院へと走って行ったのだ。


 治療費はとても値が張り、子供が支払うのは簡単ではないだろうに。


 あの時は会議に遅れてしまうので、他の動物を探して、またそれに憑依したのだった。確か烏だったか。


 他とは違う彼女が何故だか気になって、私は足首まで伸びた長い()()()()()()()()


 そして、出雲大社での会議を無事に終えた後、日本で最高位の神である天照大御神に、彼女の記録を見せてもらえないか頼み込んだのだった。



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