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0.1 序:奴隷館の主人

 私、元は小料理屋の主人をしておりましたが、今はこの「奴隷館」の主としての仕事をしております。


 魔物に侵されて久しいこの国では、国民がすがる最後の砦として異世界の「勇者」を召喚します。こんどこそ勇者様が世界を救って下さる。だからあとも少しだけがんばろう。そんな希望の光なのです。


 もちろん単に異世界から呼んだただの人間が勇者として魔を打ち払ってくれるなどありえません。彼らは特別な能力が与えられるわけではなく、本当にただ連れてこられるだけなのです。

 

 召喚した「勇者」にささやかな歓迎式典を行った後、悪魔を倒してくれるようたのみます。ここで、身支度を調える資金として金貨100枚を渡すのです。金貨100枚といえば市井の民が一生かけてようやく稼げるかどうかの金額。


 そして身支度のはじめとして紹介されるのが私どもの「奴隷館」です。

 

 連れてこられた奴隷館にはなぜか勇者様と縁の深い人物が檻に入れられています。値札には金貨100枚の表記。


 状況の全く分からない勇者は喜んで受け取ったばかりの金貨100枚を払い、その大切な人を檻から救い出すのです。それが門出の儀式であるかのように。


 説明するまでもありませんが、この「奴隷」も勇者様とセットで召喚した者を檻に入れただけです。


 私は代価として受け取った大金を見てため息をつきます。これが本当にこの店の売り上げだったらいいのに、と。


 改鋳を繰り返し、金属としての金が入っているのかどうかも怪しいこの国の金貨に価値などありません。そんな自称金貨でも、正直のどから手が出るほど輝いて見えてしまうのが今の状況なのです。

 

 私が受け取った金貨は後日、王のもとへ返されるとともに私は報酬の銀貨10枚を受け取ります。これを闇市でわずかな芋に換え、たっぷりの水で薄めて私と妻と使用人の3人で少しずつ食べて、もうしばらく生きながらえる。こんなことを繰り返しています。


 そう、これは茶番なのです。国庫などとっくに空。ただ国民が絶望しないためだけの心のよりどころとして、異世界から「勇者」を召喚する。勝手に連れてきておいてなにもサポートできない勇者様に対し、せめてもの代価として夢を演出する。


 能力も資産も与えられずに放り出される勇者様がその後どうなるかは分かりません。気の毒だとは思いますが、どうすることもできませんし、なにかするような余裕もありません。しばらくするとまた新しく勇者様が召喚される、ということはつまりそういうことなのでしょう。


 これが「奴隷館」の主、私の仕事です。

 そしてまた、新しい勇者様と奴隷がこの世界にやってきます。

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「朝起きたら女子高生が勃ってた(連載中)」
「竜のさきっちょ」
「ソーシャルディスタンス千香ちゃん(短編)」
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小鈴なお
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