気に食わねぇんだよ
「いやだね」
親父はそう冷たく言い放つと持っていた紙を離した。
親父の手から解き放たれた紙はひらひらと空中を舞ったのちに地面へと静かに落ちた。
「…理由をお聞きしても?」
手紙が地面へと落ちる様子を静かに見守っていた『アーシャ』は睨みつけるかのように親父を見て問いかけた。
「理由?あぁそうだな…天気が悪いからかな」
「いや親父、ここは年中天気わりぃぞ」
「んじゃあ寝つきが悪いからだ」
「いつも酒飲んでいびきかいてぐっすり寝てんだろ」
「じゃあどっかのクソガキがよわよわで使えないからだな」
「んだとバカ親父!!」
「いいかげんにしてください!」
俺と親父の『アーシャ』が大きな声で遮った。それもとびっきりの殺意、嫌悪が混ざっている威嚇に近い声だ。
俺はすぐに臨戦態勢へと移り『アーシャ』の動きに注目したが「やめとけクソガキ」と親父に制止された。
「別にこいつはお前を襲って食っちまおうと思ってるわけじゃねぇよ。俺の回答が気に食わねぇからキレてるだけだ」
「んだよ、驚かすな!」
「あなたたちはふざけているんですか!人の事をバカにしたような会話に態度!」
「ふざけちゃいねぇよ。いたって真面目だ」
俺と親父の態度がよっぽど気に食わないのかまだ威嚇を続けてくる『アーシャ』。その言葉にはどんどんと熱が入り怒りの様子が見て取れるほど肩を震わせていた。
「どこが真面目なんですか!こちらは頭を下げ、あなたに願っているというのになにが天気が悪いですか!何が寝つきが悪いですか!そんな冗談なんか言っている場合ではないのですよ!王都が、王が危機に瀕しているんですよ!なのになんですかその態度は!カイト王とお知り合いで旧知の仲であれば助けに行く、それが世の常ではないのですか!」
「おぉおぉ、処女膜も破れてなさそうないたいけな少女がずいぶんな口をたたくじゃねぇか。世の常だ何だなんて知ったことか。俺は俺の思った通りにいきんだよ。カイトがピンチだろうが何だろうが気に食わなきゃいかねぇよ」
「気に食わないですか…。何が気に食わないのでしょうか」
親父の体にみるみる殺気が溜まっていく。
あ、やべぇなこれ。親父キレてる。
「てめぇの態度が気に食わねぇんだよ、嬢ちゃんよ」
「」