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「あぁ?招集ですかい?なんでまたこんなおっさんなんか」


「招集理由については手紙に書いてあるとのことです。わたくしは手紙を確実に届け、クロード様を王宮に連れて帰るようにと言われただけです」


「ったくよ、一線退いて息子と平和に暮らしてるってのに。おめぇら若いもんでなんとかしろよな」


そういい親父は手紙を受け取るとひらひらと木の葉のようにちらつかせた。


「親父、さっきから王宮だ王都だって言ってるけどなんだそれ?」


「あぁ?大人の遊び場みたいなものだ。お前みたいなガキが行ったら笑われるところだ」


「俺はガキじゃねぇ!今年で17だぞ!もう大人だ!」


「はっ!大人はな、わざわざ自分は大人ですなんて言わねぇんだよ。ムキになって反論してるあたりがもうガキだ」


「んだと!」


俺と親父が言い合っていると「んっうん!」と小さく咳払いをする声がして振り向いてみると、『アーシャ』とかいう女魔物がこっちを見ながら眉間にしわを寄せていた。


「申し訳ありませんがクロード様、一刻も早く連れてくるようにとの事なので下らぬ戯れはやめ、王都へと向かって欲しいのですが。後、王都を変な場所のように紹介するのはやめていただきたいです」


「んだよつれねぇ姉ちゃんだな。生き急ぐと早死にすんぞ?」


「仕事ですので」


さっきまでの俺と言い合いしていた時とは違い、すごく落ちつた対応で親父の言葉を流す『アーシャ』。さっきまでは冷静さがなく、隙が多い感じだったが今は一切の隙がなく見える。


しかし時折親父と俺をチラッと見ては喉を鳴らしている。緊張状態なのか?


親父もそんな様子を見て頭を掻き「仕方ねぇな」と呟き、渡された紙を開き眺めた。


「なぁ親父、それって本の一部か何かか?」


「ちげぇよ、これは王が…人間が書いた文字が書いてあるんだ。それで、この文字ってのは俺のために書かれたもんってことだ」


「親父専用の文字ってことか?本とは違うのか?」


「あぁ!めんどくせぇな!違うもんだよ!つうか黙ってろ!手紙読んでんだよ!」


「なんだよ!俺にもなんて書いてあるか教えてくれよ!」


「だからこれは俺専用なの!ガキは読んじゃダメなんだよ!」


「だから俺も大人だって言ってんだろ!」


「もう言い合いはいいので早く読んでください!この森から早く出て戻らないと外に私の部下たちが待っているんです!」


俺達が言い合いをしていると『アーシャ』が咆哮で遮ってきた。細い体からは想像もつかないほど大きな声だったので一瞬ひるんでしまった。


「この森は強力な魔物ばかりで危ないから、仕方なく私一人で入ってきましたけれど、私以外の部下たちは森の境目で待っているんです!境目と言ってもあそこだって危ないし、私の弟だって…」


そこまで言い切ると目の端に涙をため体をプルプルと震えさせた。恐怖からのものだろうがそれを振り切るかのように頭を振ると「とにかく!」と言葉をつづけた。


「早く読んで早くついてきてください!部下たちが私の帰りを待っているんです!」


そう言い切り強い意志の顔へと戻った。さっきから見ていると感情がころころ変わっていてなんだか気味が悪いな。


「おーおー、わかったわかった。とりあえず内容はもう理解したよ。つまり王様、『カイト』の野郎が昔の恩を盾に俺に助けを求めてるってことだろ?」


「申し訳ありませんが手紙の内容は理解しておりません。ですが今現在『カイト・リーグ・フルシュ王』の納める王都に大きな混乱が巻き起こされようとしているのは事実です。失礼ですが『カイト王』とクロード様はかつて同じ戦地を渡り歩いた仲間だとお伺いしております。わたくしからもお願いいたします。どうか王都を救ってください」


そういい深々と頭を下げた。冷静を装って入るが恐怖や不安、焦りといった負の感情が見て取れる。どうやら本気で親父に頼み込んでいるらしい。


「おうおう嬢ちゃん、悪いけど頭下げられたって俺から出る答えは一つしかねぇぞ」


そういい親父は『アーシャ』の肩を掴んだ。


そして下げた頭を無理やり起こすと『アーシャ』の目を覗き込んだ。


「いやだね」


そしてただ一言だけ冷たく言い放った。

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