『女』
意識を失い肩で息をしているキラキラが暴れないように両手足を縛り家へ運んでいく。
親父がよく「サル」と呼んでいる生物と同じように、俺と親父みたいな二足歩行で生活する生物のようだ。
しかし俺と親父と違い体は銀色の甲殻を身にまとっている。匂いも違うことから俺たちとは違う生物と判断できた。
「ここでいろんな『レア』な奴は見てきたけど、こんな変な甲殻を持つ奴は初めて見たな。つうか食うところあるのか?」
不安を感じながらもとりあえず家へ着くと大声で親父を呼んだ。
「なんだクソガキ!せっかく寝かけてたのにうるせぇんだよ!」
「うるせぇ!なんか変な『レア』がいたから持ってきたんだよ!これ食えんのか?」
「あ?変なってなんだよ。まさか前みたいにスライムじゃねぇだろうな?」
「あの『ドロドロ』とはちげぇよ。なんか『キラキラ』してるやつだ」
肩に担いでいたキラキラを地面におろし親父へ見せる。すると親父は目を細め「おい」と口を開いた。
「おめぇこれどこで拾ってきた」
「向こうの奥だよ。森の境目のあたりで『牙のやつ』と『でかいやつ』と戦ってた」
森の境目とは、俺たちが住んでいるこの森とは違い、比較的に安全な地域の事だ。しかし親父からは「あそこじゃ強くなれないからここから出ちゃだめだ」きつく言われている。
昔一回楽をしようと出たことがあるが親父にばれて三日間追い回された挙句ぼこぼこにされたのはいい思い出だ。
「あぁ、こいつは食えねぇ」
「やっぱりな。小さいしこんな固い甲殻だしな」
「いやちげぇよ。こいつは『女』ってやつだ。俺達と同じ『人』ってやつだよ」
「あ?俺達と同じ?それにしちゃあ小さくねぇか?」
「だから『女』ってやつだ。俺たちは『人』の中でも『男』ってやつだ。俺達とは真逆の生き物だ」
「ん?なんだそれ?」
「まぁ教えてこなかった俺がいけねぇか。とりあえず食うな。とりあえず鎧を外してやれ」
「鎧って何だ?」
「『キラキラ』してる甲殻だよ。中身が傷つかねぇように外せるから考えて外してやれ」
そういい親父は家の中へと戻っていった。
「考えろって言ったってどうすんだよ」
とりあえずひっくり返して考えてみることにした。