発見
高く天まで延びている大木をいつもの要領で飛び移り、さらに音もあまりでないように移動していく。
狩りの基本である気配を消すことも忘れずに慎重に行動する。
音からして「でかいやつ」と「牙のやつ」が戦っていることは分かったが問題は「レア」だ。
他所の森から迷いこむモンスターは大抵貧弱で、後ろから追いかければ簡単に仕留められるんだが、今日の「レア」は様子が違う。
「この感じ…3体で戦ってるのか?」
いつもとは明らかに違う雰囲気に唾を飲み、より神経を尖らせた。
「でかいやつ」と「牙のやつ」はこの森で間違いなく最強の種類だ。
「でかいやつ」は分厚い毛皮に覆われ6本の強靭な腕をふるい、その爪で全てを破壊する生き物だ。
恐ろしいのはその巨大な身体からは想像もできないようなスピードだ。
しっかり見極めて攻撃を交わし、6本の腕の動きを把握しなければ倒せない相手だ。
「牙のやつ」もそうだ。身体はそこまで大きくはないが、「でかいやつ」よりも圧倒的なスピードと、口から生えた大きな牙がやっかいだ。
さらに学習能力が高く相手と戦っている最中に成長し、次の行動を予測してそのスピードで突っ込んでくる。
短期決戦でかたをつけなければこちらの体力が無くなっていき、動きが鈍ったところをやられてしまう。
「どう考えてもそんなやつと戦っているなんて普通のやつじゃないよな…」
できる限り意識を高め警戒を怠らないようにするが、それでも倒せそうになかったら親父を呼ぶか。
まぁ呼んだら「テメェ何て情けねぇ事抜かしてやがる!3日は寝れないと思えよ!」なんて怒鳴られるんだろうがこっちの身の安全が先だ。
「っと、そろそろ見えるか」
音がより一層近くなり、土煙が上がっているのが肉眼で確認できる位置に来るとそこでようやく移動をやめる。
3体の内1体でも同士討ちしてくれてればいいなぁなんて考えてはいたが、血の臭いがしないことからそれはあり得ないことを知る。
目を凝らしよくよく見ると「でかいやつ」と「牙のやつ」の姿が確認できた。
「ん?なんかおかしいな」
この森でこの2体が喧嘩をするのはよくあることだが、今日のは様子が違った。
2体は戦っておらず、むしろ共闘していた。
親父と2体が戦う時によくやるように連携を組み、それぞれが攻撃、牽制を行っている。
この森で親父が暴れすぎて自然の摂理を壊し、この2体が自分達を守るためにつけた知恵らしい。
全くなんてはた迷惑なことをしたんだろうかあの親父は。おかげで狩りが面倒なんだよな。
だがそんな親父や俺に対する警戒行動をこの2匹はとっている。
「つまり、俺達と同じぐらい強いって訳か…」
警戒のレベルをさらに上げできるだけ息を殺し近づいていく。
3体が暴れて巨木がなぎ倒され広場となった場所を覗く。
「な、なんだありゃ!?キラキラのちっさいのがいるぞ!?」
この森の強者である2体と戦っていたのは驚くべき事にキラキラと光る服を身に付け、さらに長い髪をキラキラさせた自分より小さな二足歩行する生き物だった。