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修行

深い深い森の中、いつものようにのどかな…。


「バカ親父!これじゃ死んじまうだろ、手加減しろ!」


「んだと!こんなやわな特訓で死ぬように育てた覚えはないぞくそガキ!」


「だーれがガキだ!もう18だぞ!ガキじゃねぇ!」


「こんなんで死ぬとか言ってる時点でまだガキなんだよ!死んだらくっちまうぞ!」


光景はこの森には一切なかった。


バカ親父に「坂をバランス崩さずに走りながら俺の攻撃を受けつつ反撃してこい!」といわれ向かった先は坂ではなく崖だった。


角度で言えば70度程のもはや直角とも言える角度を倒れずに走らされるどころか、後ろからそのバカみたいにデカイ拳から飛んでくる衝撃波を避けているのだ。


それでいて反撃してこい?無理だろ!


手渡された細い木の枝を使いなんとか衝撃を逸らしてはいるが、この枝すら頼りなくいつ折れるかわからない状況だ。


ましてや体を守るものもこの近くで捕れた獣の毛皮を腰に巻いて、上はただ毛皮を羽織ってるだけだ。


こんな格好でこけようものなら怪我ではすまないだろう。まさに死に直面している。


「おらおら!サボってんじゃねぇ!とっとと反撃してこい!地面についちまうぞ!」


「地面に着くどころかこの速度じゃ激突しちまうわ!」


「なに言ってんだ!足に力をいれてそのまま走り抜ければいいだろうが!」


「だったらそうならないように集中するから攻撃やめやがれ!」


「バカ野郎!こんなんで集中乱れるなんてどんだけ情けねぇんだよ!」


「この前もそれで岩の下敷きになったろ!」


そんな文句を言いつつも地面はどんどん近づいてくる。本気で駆け抜けないと死ぬぞこれ!


地面が目の前に来たところで俺は右足に全力を込め、そのまま目の前に来た地面を踏んだ。


なんとかそのまま左足を前に出しつつ状態を起こし、地面を走るような形で衝撃を逃がす。


「あっぶねえ!さすが俺だぐはぁ!?」


しかし安心して走り抜けたのもつかの間、後ろから強烈な衝撃が襲ってきてそのまま前へ転がった。そしてしばらく転がったあとに木の幹に衝突し止まった。


ぐるぐる回る世界で意識を保ちながら見ると目の前では親父が拳から衝撃波を飛ばしてきていた。


「殺す気かくそ親父!つうかまだうってくんのかよ!」


「わり!やめんの忘れてた!つうか当たんな!殺すぞ!」


衝撃波を転がりながら避け、そのまま親父と対峙する。殺すもなにも殺されるところだったんだけどな!


親父の衝撃波によって俺のぶつかった木は折れ、大きな地響きを起こしながら倒れていった。


「ったく、こんなもんで死にかけやがって。おら罰だ、今日の食料はお前がとってこい」


「うるせぇ!死ななかっただけ感謝しろ!しかもいつも俺が捕ってきてんだろうが!」


体を起こしながら体についた木の葉や細かい枝をとる。骨が折れなかったのが奇跡だ。


「おーおー、うるせぇ。俺に勝ってから言いやがれ」


「いつか絶対にはっ倒してやる!」


ヒラヒラと手を振り俺を背にして去っていく。本気で手伝う気がないみたいだ。


覚えときやがれ。絶対寝てるとき鼻に虫を詰め込んでやる。いや、獣の糞でもいいかもな。あの牙がはえたデカイやつの糞は相当臭いしそれがいい。


そんなことを考えつつ俺は獲物を狩るために木に飛び乗り、高いところから耳を済ませ嗅覚を研ぎ澄ませた。


しばらくすると親父がいった場所とは別の方向からかすかに枝が折れる音といくつかの生き物の臭いがした。


「いた、しかも牙のやつとデカイやつだ。あともう一つはなんの臭いだ?」


かぎなれた臭いに混じって知らない臭いもする。おそらく、それはこの森の中で暮らしているものではない。


「しめた、『レア』なやつか?今回のはうまいといいけど」


レアなやつとはつまりよその森から来た間違って迷い混んだかなにかに追われ逃げ込んできた生き物だ。


この森にすんでいるモンスターは確かにうまいが、他所から来るモンスターはもっと柔らかく、味がいいものが多いのだ。そのため『レア』なやつと呼びたまにあるごちそうだ。


ただたまに酷く固く臭いものもいるため当たり外れがある。


そのためうまいことを願いつつ俺は木を飛び移りながら臭いの元へ向かった。


向かってしばらくすると普段この森では聞こえないような大きな音がした。どうやら喧嘩しているようだ。


「この森に迷い混んで喧嘩するなんてもしかしたら強いやつかもな…」


用心しながらとっとと絞めるか。


しかし、目の前に現れた光景は俺の人生にとって初めて見るものとなった。



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