デリカシーは持ち合わせとけ
僕がマインスイーパーの力を最大限発揮してから少し後、僕達とミリアは(呼び捨てになったのはミリア本人からそう言われたからだ)街道に向けて森の中を歩いていた。彼女が道を覚えていて、ちょうど帰るところらしいので道案内してもらうことにしたのだ。その最中に先ほどの話の続きをしていた。
「世間のイメージはアレですが、女王はれっきとした戦闘職なんですよ」
「なるほどな、女王のジョブを持っているといっても皆が皆いかがわしいお店に行くわけじゃないんだな」
おお、ガイよ。普段はあれだけ気を使える奴なのに何故こういう時だけ無神経なのか…実際、ミリアは恥ずかしさから顔を赤らめてうつむいてる。僕はガイをげしっと蹴った。
「いてっ!ライル!てめぇ何すんだよ!」
「ガイのおバカ!無神経!ゴリラ!」
「誰がゴリラだ!ったく何に怒ってんd……あぁっ、す、すまねえミリア。デリカシーに欠けてたみたいだな」
僕が蹴ったことに怒ってこちらを向いたガイに、あごでクイッと指し示すと、自分の失言に気づいたのか謝罪した。うん、しっかり謝れてえらいぞっ!
ミリアも気にはしていないようで、話を続ける。
「い、いえ…世間のイメージがそういったものなのは理解してますから…実際、冒険者の方々でも知らない人が多いのか中々パーティが集まらなくて…結局一人でクエストを受ける羽目になってしましました」
パーティとは、冒険者たちが一緒にクエストを受ける際の仲間だ。大体、三~五人程度で組まれ、お互いの得意を生かし、不得意を補うために募集をかけたり、ヘッドハンティングしたりして集まる。
一人でもクエストは受注出来るが、非常に危険だ。不測の事態が起こったときにフォローする仲間がいないと致死率が一気に跳ね上がってしまう。なので、一部の高難易度クエストには何人以上からの参加、と制限がかけられることもある。
しかし、女王を知らない人からすれば、SMの人がギルドに何しに来てんだ。と思われても仕方ないだろう。第一、何が出来て、何が出来ないのかも不透明だ。パーティのメンバーは命を預ける仲間である。有名な最上級ジョブなら引く手あまただが、マイナーな、何が出来るのかわからないジョブの人間に命を預けろと言われても、厳しいだろう。
だがしかし、僕は女王を知っている。地雷を踏み抜く前に、SMの人以上でも以下でもない。みたいな言い方をしたが、実はそれだけではないのだ。
「女王は、多数の敵との戦闘においてトップクラスの強さを誇るんだよ!鞭による範囲攻撃、威嚇なんかのデバフも使える優秀なジョブなんだよ!!ちなみに、僕の好きな英雄の一人、レジーナ=バルバロッサも女王なんだよ!」
「おおう…いつになくライルのテンションが高いな…」
そうなのだ、女王はSMの人のイメージが非常に強いが、こと多数の敵との戦闘において最高クラスの性能を誇る最上級ジョブなのだ。僕も、冒険譚の中でバッサバッサと敵をなぎ倒すシーンを読んで憧れたものだ。鞭の扱いもイメージの中でだけは完璧に扱える。
ただ、非常に残念なのは、女王が女性限定でしが発現しなことである。そもそも男の僕には発現の可能性がないのである。それを知った時どれだけ落ち込んだかわからない。
それだけ憧れたジョブを持った女の子が目の前にいるんだ。僕のテンションが上がるのも致し方ない。ガイが少し引いているが、そんなことが気にならないぐらいに僕は浮ついていた。
「よくご存じですねっ!戦闘向きのジョブじゃないって思われがちなんですけど、多人数と敵対したときは物凄く役立つんですよ!レジーナ様が魔の溪谷で敵に囲まれあわや絶対絶命!というところで鞭を振り回しながら切り抜けていくシーンッ!苛烈ながら美しい!レジーナ様のそんなところに私は憧れて家出を……はっ!」
おやおや?何故か僕以上にテンションが上がったミリアがぽろっと聞き捨てならない事を口走った気がするよ?それにレジーナ様って…
ちょっとづつ、ちょっとづつキャラ崩壊していく予定です。その、予定です。
面白かった!面白くなりそう!面白くしてやんよ!という方は【☆☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして貰えると嬉しいです!!ほ、本当に嬉しいんだからねっ!勘違いしないでよねっ!