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英雄とは

うぅん…

「さて、じゃあどうしようか」


「なにがだよ!!」


 僕は、ものまねしと宣告されたその足で我が親友ガイの家へと足を運んだ。今は誰かと一緒にいないととても耐えれそうになかった。


「だからさ、ものまねしになってしまったのは仕方ないとして、どうしようか」


「どうするってなんだよ。ったく、あれだけ英雄が、最上級ジョブがって言ってたから相当凹んでるかと思っって心配してたが大丈夫そうで安心したぞ」


「別に凹んで無いわけじゃないよ、今でも最上級ジョブが欲しいしさ。ねぇ・・・ガイ」


「あ?」


「ガイの心臓とか食べたら僕もベルセルクになれるのかな?」


「怖ええよ!!!やめろっ近づくな!!!」


 ゆっくりと舌なめずりしながらガイに近づいていくと、予想以上にビビってくれた。楽しい奴だ。ガイは体も大きく筋肉質で、一見見るとゴリラにしか見えないが意外と冷静で頭も回る。

 そして結構なビビりだ。外見と中身は伴わないようだ。


「まあ、それはおいおいやるとして」


「お前、嘘だよな・・・?」


 ガイが本当にビビって引いているので話を本筋に戻すことにした。


「正直凹んでるけど、ものまねしになったぐらいで冒険する夢を、英雄になる夢を諦められるほど僕は出来た人間じゃあないからね」


 ジョブ診断をやり直せるなら、本当はやり直したい。最上級ジョブを取るまで諦めたくない。だけど、残念ながらジョブ診断は一回きり、ジョブは一生変わらないのだ。

 なら、ものまねしとして英雄になる方法を考えるしかないのだ。


「お前って、ただの本好きモヤシだと思ってたけど、根性あるんだな」


 なんてこと言うんだ。僕は親友に本好きモヤシだと思われていたのか。

 イラっとした気持ちをそのまま抜き手に込め、心臓を抉るべく突き出した。

弾かれた。


「まあ、そう睨むなって。わりいわりい。んで、どうするってなんだよ」


「だからね、ものまねしのまま英雄になるにはどうしたらいいかって話だよ」


 ものまねしになった今もう、僕の思い描いた王道の英雄譚を進めるとは思えない。彼ら彼女ら英雄は、最上級ジョブの特性を十二分に生かし、スキルを十全に使用し困難を排除していく。

 ものまねしでは到底それが出来ないのが目に見えている。


「最上級ジョブを持ったところでライルが王道を歩むとは思えないんだがまあいいか」


「まあいいなら言わないでよ」


 失礼な奴だ。確かに僕はひねくれてはいるが、英雄に対しては純粋な気持ちを持っているつもりだ。

 英雄譚に出てくる英雄は皆かっこいい、特に人気の高い英雄ガーランドなんかは最高だ。どの冒険も手に汗握るし、ドラゴンとの闘いは固唾を呑んだ。まさに王道の中の王道だった。


「そもそも英雄ってなんだよ」


「えっ?」


 ガイは何を言っているのだろうか?英雄は英雄でしょ?


「えっ?ってお前、英雄になりたいって言うには明確な英雄像があるんだろ?」


「明確な英雄像って?」


「だから、英雄とはこういうもの。ってことだよ。ジョブじゃない以上人それぞれの英雄像があるとは思うが、ライルの思う英雄ってどういうものだよ。目標がないと目指すにも目指せないだろ?」


 がつんっ、と頭に衝撃が走った。


 英雄とは何か。なんて考えたことはない。


 ただ、広大な世界を冒険している姿に憧れた。

 

 ただ、強敵と戦う勇敢な背中に惚れた。


 ただ、それだけだった。


 だから、この場で明確な答えなど出せなかった。今まで漠然と英雄に憧れていたから、はっきりとした英雄像を描くことが出来ない。


 でも、ガイの言うことにも一理あった。はっきりしない目標に何となくで進む。それほど無謀なことはない。しかも、僕はものまねしだ。

 より、頭を使わないと英雄なんて夢のまた夢。のまた夢のまた夢だと思う。


 何も、言えなかった。


「はぁ…まあ、ライルが英雄になりたいってのは親友の俺が一番聞かされてきたから理解はしてるけどよ、一度頭を冷やした方がいいんじゃないか?」


 ぐうの音も出なかった。あれだけ英雄になりたい、とほざいていたが、今は目指すべき英雄像を描けない。自分が英雄になる未来が見えない。目の前が真っ暗になり何も考えられなくなってきた。


 固まって動かなくなっている僕を見かねてガイが声をかけてくる。


「おい、大丈夫か?」


「うん、大丈夫だよ」


 もちろん大丈夫なんかではないが、やせ我慢するだけの元気はなんとか残っていたようだった。


「今日はもう帰ってゆっくり休め。な?」


 あまり、ガイの声も入って来なくなってきた。


 ぐるぐると思考が回転して止まらないが、このままガイに迷惑をかけ続ける訳にはいかない。


 ふらふらとした足取りでガイの家を出た僕はそのまま帰路に着き家に帰ると、そのままベッドへと倒れこんだ。


--------------


 僕がものまねしになった翌日、日の光が目に入り目が覚めた。


 ぼーっとベッドの上で昨日のことを思い返す。


 僕はものまねしになってしまった。それは、まあいい。いや、良くないが今さらどうしようもない。

 そこからどうするかが問題だ。ものまねしとして英雄になるにはどうするかを考えないと。


 でも、ガイは言った。「英雄ってなんだ」と。


 わからない。一日経って冷えた頭で考えてもよくわからない。僕が好きな英雄は勇敢で、実直で、強大な力をもって敵を排除する。皆に好かれ、皆に尽くす。そんな姿が描かれていた。


 僕は勇敢でもない、実直…ではあるかな?

なにより、敵を排除するだけの強大な力、すなわち最上級ジョブを取り損ねた。


 なら、僕は英雄になれないのか?


 よくわからない。


 なら諦めるのか?


 それは、嫌だ。


 ならどうする?


 どうしようか。


 自問自答を繰り返す。


 が、考えが纏まらない。


 そして、何度目かの逡巡の後ふと思った。


 僕は何故うだうだ考えているのだろうか。昨日も言ったじゃないか。ものまねしになった、最下級ジョブになった程度で諦めきれるものじゃないんだよ。


 目標もなく進むのは愚か?


 そうじゃない。


 そうだ、酷く単純なことじゃないか。諦めきれないなら……





 突っ走るだけだ!!

妄想を形にするのは難しいものです。


面白いと思って頂けたらブックマークと星マーク5個付けてくれると

めちゃんこ喜んで執筆も捗ります…捗らせます!!

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