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フィギュアを買ってもいいんですか?

青春を捧げるに至ったわけでして。





「何それ?」


「昨日、密林から届いたフィギュア」


「また買ったの? 浪費? 浪費なの?」


「いいじゃん。お前の財布は痛まない」


「ええーーーー 明日のデート代が減らされたー」


「ふざけんな。なんで当然のごとく俺が出すことになってんだよ。だいたいデートってどういうことだよ。俺ら付き合っちゃいねーだろーが」


「男と女が行動を共にする事をデートって言うんですー」


「定義はそうかも知らんが普通はデートとは言わんだろうが」


「デートですー」


「そもそも荷物持ちでしかねーじゃねーか。デートっぽいこと一個でもあるか?」


「ぶーぶー」


「めんどくせー。そんなにデートだって言うんだったら、何かそれっぽいことしてもらうぞ?」


「それっぽいことって何よ?」


「あーーー、えーと。あれだ。……なんやろ?」


「うわぁ。デートしたことないのがバレバレ」


「だまれ。その憐れみに満ちた顔はやめろ。そもそも俺がなんでデートしたことないのか、お前分かってるのか?」


「それは年齢イコール彼女無し歴だから」


「そ、そうだ! くそっ、その通りだ! お前がいっつもいっつもいっつも俺に引っ付いてくるから世の美女達が近寄って来れねーんだよ!」


「あたしが引っ付かなければ世の美女達が寄ってくるって思ってる時点でもう、ね」


「何言ってんだよ! ついこのあいだなんて、学年のマドンナから『もう去年のことだけど、彼女がずっと傍にいて入り込めないなって諦めちゃったんだよねー』ってサラっと言われて、その時の衝撃、暗澹たる思い、人生のどん底感、あーあーあーあーあーあーもおおおおおおおおおおおお!!」


「ぶはっ マドンナ趣味悪っ! ざまぁ」


「ざまぁじゃねぇっ! 趣味悪くねぇ! お前、俺の青春をなんだと思ってやがる!」


「俺の青春、ねぇ。暗黒かな? ぷぷっ」


「笑ってんじゃねえ! 暗黒とか酷すぎだろ!」


「まあ言っとくけど、あんたマドンナなんかと釣り合う訳ないじゃん」


「ぐ」


「もし付き合ったとしたら大変だよ? マドンナの今彼、めっちゃバイトしまくって貢ぎまくってるって噂じゃん。マドンナ超金持ちだから、どうしたってねー」


「おおぅ。確かにその噂は耳にした……」


「フィギュアなんか買ってる余裕なんて無くなるんだよ?」


「ぐぐ」


「俺の青春はお姫様に貢ぐことですーってか?」


「ぐぐぐ」


「だいたいね、フィギュア大好きーって野郎が女子にきゃーきゃー言われると思う?」


「言われるぞ!!」


「言われるわけ」


「悪い意味でだけど……」


「な…… あ、うん。よ、よくわかってんじゃない。あたしくらいなもんよ? あんたがフィギュア買おうが何しようが何にも言わないのは」


「そ、そうだな」


「あんたフィギュア好きなんでしょ?」


「おう」


「あんたの持ってるフィギュアってなんか形がすっごく良く出来てるわよね」


「わ、わかるのか!?」


「今あんたが持ってるのもそうだけど、前に見せてもらったのもカッコよかったわね」


「そ、そうだよな!?」


「あんたの趣味に理解があるのはあたしくらいなものよ? そんなあんたはね、あたしに青春を捧げてたらいいのよっ。そして堂々と好きにフィギュアを買えばいいのよ」


「お、おう? フィギュアを買ってもいいのか……?」


「あと、アニメの円盤も持ってたわよね? それもいいわよ?」


「え、円盤もいいのか」


「だーかーら、あんたの青春はあたしに捧げなさい。わかった?」


「ま、まぁそういうことなら…… え?」


「煮え切らないわねぇ。男子、しっかりしなさいよ」


「なんか騙されてるような気が……」


「人聞き悪いわね!! 騙してなんかないわよ! 壺なんか売りつけないわよ!」


「そ、そうか。すまん。じゃ、じゃあわかった」


「言ったわね? 言った言った。よろしい、わかったってことでOKね。確定したから。それじゃ明日はデートだからよろしく!」


「お、おう」


「そいじゃね」


「そいじゃ……」







 どうやら青春を捧げることになったようだ――――――

わりとあっさり捧げるんだな。

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