第81話「ラッキースケベはラッキーではない」
ラッキースケベ回です。
んじゃいいやって人は続きをお待ちください。
肌色成分も楽しみたいデスゾって人はこのままお読みください。
宮殿会議が終わった後、オレはここまで同行してくれた面子の様子を見に行っていた。
つまりはタウリカから馬車で来たファロイドのエアメル、タウリカ辺境伯の娘であるアティアと、その従者のシン。
そして、オレの保護者兼ダメ姉のような存在かつ女魔法使いのルールー・オー・サームと、女ドワーフのアイフェル。
ルールーは魔力規定量違反のお説教を受けているから、いないだろうと思ったが、宮殿の窓から外を見ればすでに日が落ちかかっていた。
しっかりとした身なりの男達が、広々とした庭園のあちこちにある外灯に、結構な長さの梯子を使って火を灯しているのが見える。
それは屋内も同じで、なぜかヴィクトリア朝メイドのような格好をした侍女たちが、手際よく屋内灯に火を灯していた。
おかしいな、中世ヨーロッパってなんだっけ、やっぱり転生者の趣味と情熱で変なもの輸出されてないか? と思いながらも、オレは足早に歩き始める。
前世と違ってみんな寝るのがとてつもなく早いし、朝起きるのだってとてつもなく早い世の中なので、さっさとしないと迷惑がられること間違いなし。
男に迷惑がられるのはどうだっていいが、女から迷惑がられるのはメンタルが削れるのでNGだ。
はてさて、まず最初に向かったのは女子勢の方からであった。
宮殿と言うだけあって部屋数も廊下の長さも、タウリカ辺境伯邸とは桁違いである。
カツカツと杖をつきながら、目的の部屋を見つけるまでオレはギシギシと鳴る間接の痛みに耐えながら長い廊下を歩き続けた。
途中、通りがかった侍女に何回も確認をして、やっぱり迷惑がられメンタルを削られながらながらも、オレはその部屋に辿り着く。
宮殿の西館の二階、その一室がタウリカ辺境伯名義の客人用として利用されている。扉は重厚な木で、ドアノブなどの金属は真鍮で彫り物がしてあった。
やっぱり王国の首都の王室関連の宮殿だもんな、と痛む膝をさすり、ぜえぜえと情けないほど荒れた呼吸を整え、オレはガチャリと扉を開けて中へと入り、
「お?」
「へ?」
「ん」
肌色大目な光景がオレの前に広がった。
やっちまったねぇ、と心の中の自分が言い、やべえなこれと心の中の自分が続けて言う。
寝巻きである。女性の寝巻き姿である。
それで肌色大目になっているのは、布面積が少ないことによる。
ルールーは今まで見たことがないレース付きのネグリジェを着ていて、それが慎ましい体つきによく映える。
黙っていれば黒髪ロングのスレンダー美人であることがよく分かるし、眼帯がアクセントになっていてとても素晴らしい。
すらっとした細い足は膝丈ほどの裾から足先まで優美なラインを描き、歩きなれていなさそうなその造詣は実用性皆無だろうが何はともあれ綺麗だ。
そんな状態でベッドに腰掛けて分厚い本を片手にこちらを見ているので、写本作業の続きでもやっていたか、あるいは読書中だったのだろうか。
なんにしても、日頃見ているルールーの寝巻きと言えばいつも着込んでいるローブの並みに丈のあるもので、素足なんてまったく見えなかったからとてもグッド。
そして我が教え子のアティアは、それはもうとんでもない破壊力をオレに見せ付けている。
ルールーの纏っているネグリジェが体を包み込んでそれを映えさせるためにあるとしたら、アティアのものは身体も衣服もドカンときている。
白いネグリジェはレースで彩られ、それがボリュームあるフリルで縁取りされ、それでいてくびれはきゅっと紐で縛り付けられている。
くびれの上には背丈に見合わぬ双丘がたわわになって揺れており、それが柔らかそうな白い布で覆われているのだ。
ルールーのものより短い丈のせいで、健康的な太股とそこから伸びる足も露になっており、そのラインは程度良く太く、それでいて整っている。
腕はあの身の丈程の大剣を振るっていたと考えれば細いが程よく肉がついていて、ルールーの身体に比べたらかなり肉感的でいろいろヤバイ。
「ぉ……ぉぉ……」
なんだ今の変な声は。
と思ったが答えは単純である。
謝るべきか褒めるべきかで思考回路が麻痺ったオレの呻き声だ。
そんな事はともかくとして、アイフェルはと言えば、寝巻きというより下着姿だった。
体系は完璧にツインテロリという非常にアブナイものだが、腕をよく見ると筋肉質なのが分かる。
他の二人より頭一つかそれ以上小柄なのだが、それを感じさせないしっかりとした身体。
それでも身体は女性のもので、慎ましいというよりもほとんどない胸を覆う下着から、お腹までのラインは極めてなだらか。
白の味気ない下着と肌色のコントラストは刺激がアブナイで、すでに危険粋に達していたオレのメンタルが別の意味で削れる。
男としてラッキースケベの当事者になることほど、理想と現実の差というものはないよなと思いながら、オレの頭はようやく動き出す。
ルールーの目が冷え切り、アイフェルの目に殺気が宿り、アティアがなぜか自慢げに胸を張って笑う。
たわわな胸を盛った―――ではなく、もった女の子が胸を張るのだから、当然としてその胸はぽよよんと物理法則に反したような動きを見せるのである。
なんだあの柔らかそうな動きは、物理エンジンどこにいったし、とポンコツ頭も驚きを隠せない。
「ノックもなしに女性の部屋に入り込んで、じっくりと観察するなんてコウは度胸がありますね?」
「あ、いえその、すいません思考が停止していて……」
どくり、と生唾を飲み込み、噴き出してきた冷や汗を拭いながらオレは退室すべく後ずさりする。
が、ルールーが本を置いて片手をオレに突き出し、アイフェルが手元にあった林檎をオレに投げつける方が早かった。
みっちりと水分たっぷり身がたっぷりの林檎が額に命中し砕け散り、開け放たれた扉から髭なしドワーフが文字通り吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる。
ごふっ、と肺の中の空気が叩きだされ、薄れゆく視界の中でアイフェルが憤慨しながら扉を無慈悲に閉めるのが見えた。
なんでいちっとは心配してくれたっていいじゃないか、というかアティアはなんであそこまで怒らないのだろうか、あの娘の器めっちゃ広くね? と思いながら。
オレはそのまま倒れ伏し、床の冷たさを味わいながら静かに暗闇に意識を手放したのであった。
いやあ、デバフかかってても、やっぱりドワーフって頑丈なんだなぁ。
―――
一方その頃、東館の一室では島国人の血筋であるシンと、その島国人から術を授かったファロイドの忍びの一人、エアメルが仲良く話し合っていた。
やれカタナと剣の扱いの違いだの、やれ遥か東の島国人らとはいったいどんな者達なのだの、やれ島国人の忍びは口から火を噴き水を歩き、空を飛んでは壁に同化するだの。
そんな話で盛り上がっていたため、二人はいつまで経っても三人目の男が部屋にやってこないことを気にも留めなかったし、なんなら探しもしなかったのであった。
とはいえ。
シンは違法奴隷船に乗せられた島国人の生き残りであり、エアメルも島国人が本来どのような者たちなのか知る術を持たない。
だからこそ、島国人という不思議な響きの者たちは、遥か東という未知の世界をもって、二人だけでなく、関わる人々それぞれに憧れをもたらすのであった。
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