《メモ》髭のないドワーフ著
メモ
統一辺歴二〇〇年八月
・十一日 ベルツァール・ロングライフル
全長およそ一五〇センチメートル
重さ未装填時およそ四キロから五キロほど 槊杖と同時に六個の弾を作れる鉄製の金型付き
口径は十八ミリ、弾は鉛を溶かした丸弾、黒色火薬、火種は火打石
動作機構はホイールロック式、部品強度のみならず錆に注意
使用木材はクルミで銃身とハンドガードは留め金、いわゆるバレルバンドが三つで固定、銃身中心あたりの二番留め金の下部に吊り革用の半円型金具付属
銃床は握りの部分がくびれて頬当てになるようになっている 台尻は鉄のプレートで補強されている
アイアンサイトは照星とV字照門の組み合わせでもちろん固定式で調整不可
・十二日 試射結果(試射十発)
ハンドガードが銃身のほとんどを覆っているため熱が籠ってる感じがする
アイアンサイトは思いのほか見やすいが照星を鉛白で白く塗った より見やすい
ホイールロック式にしたのはマイナーだからだったがマイナーな理由が分かる 不発時の巻き直しが面倒くさい
フリントロック式と比べて射撃時の操作が煩雑で機構も複雑 火縄を使うマッチロック式よりいいのは確か
予想以上に困難だったのが鉛弾をライフルに噛ませて装填するため時間も力もいること
紙薬莢方式は考えたが梱包に必要な物資が多いし適切な包み方も考え中 紙はある
銃身の熱はしかたがない
弾の問題は簡単にできる複雑ではない紙薬莢とやや小さい弾で解決するかもしれない
問題はそのやや小さい弾を作る金型を作るかという点 親方を頼る
古くて使わない火ばさみがあったからあれを使うのも良
・二十日 金型問題解決
親方が付属の金型を弄って少しばかり小さい弾を三発 今まで通りの弾を三発作れるようにした
火ばさみの方もうまくいったし、貯金を使って腰にぶら下げられるような小さいフライパンを買った 鉄だとこのサイズでも重い
紙薬莢はとりあえず獣油でコーティングしたものを試作 作業中にルールーから臭いと追い出された どこかに作業場が欲しい
火を使えて獣油を煮ても問題がないような屋根のある作業場 親方の仕事場でできないかと相談したらあの戦槌で殴られそうだ
九月
・十日 鉛仕入先
教え子で貴族のアイフェルの伝手で鉛の仕入先との繋がりを得た
驚いたのはベルツァール王国では鉛に毒性がある事が広く知られているという事
どうもこういった知的な事柄は転生者だけでなく、ここら一帯を支配したかつての魔法国家によるものらしい
ルールー曰く、研究にも労働にも使える魔法使い以外の種族はそれ以外で死ぬことがないようにと布告と取り締まりが行われたんだと
魔法使いはドワーフやエルフからも知識を蒐集したため、鉱物や植物などさまざまな分野で毒性と危険性があるものがリスト化されたと
まあそのおかげで照星に塗るくらいの鉛白が手に入ったわけだ なければ石灰で塗ってた
生徒数減ってるけどめげるなオレ
・十一日 冒険者
冒険者制度がいがいにもきっちりと制度制度してて驚く
むしろ公的機関の日雇い労働者確保政策制度って感じる
基本的な仕組みは「旅の仲間」たちの一人が確立してそれをあのガルバストロが弄ったらしい
陰謀係数高めな二人が時代を繋いで中央権力の手を広げているような気がしないでもない……
・十月
いろいろあり過ぎた こっからまた忙しい
・十一月
忙し過ぎる……