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208年秋下期 21日
歩けるようになり、自由になったせいなのか、日誌の存在を忘れてた。
最近はバリスに進められた本に没頭してる、一国の王子様と庶民の女性の恋の話で 読み始めると止まらなくなる
恋とか愛なんて他人事だと思ってたのに、バリスとこじろうを見てると何だか羨ましい
お互い恋愛感情はないみたいだけど、私から見たらお似合いだと思う。
バリスは本当にこじろうを友達だと思ってるのかしら?
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208年秋下期 29日
村に人間の男がやって来た
名前はローレル*ファンズ
首からニンニクをいくつもぶら下げ恐怖で顔を引き吊らせながら歩く姿は凄く笑えた。
それに村の奴等がニンニクのせいで男に近寄れずに苦しそうな顔をしてたのがまた笑えた。
ニンニク男がビクビクしてたのも最初だけで、奴等が近寄れないのが分かると別人の様に姿勢を正してた
何人かの女の顔をジロジロ見た後、私の存在に気づいたニンニク男は真っ直ぐ私の前まで歩いてきて「人間になりたくないか?」とバカな質問をしてきたので、ハッキリと断ってやったら「また来る」だけ言い残して帰って行った。
人間になりたい吸血鬼なんて要るわけないのにバカな人間。
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208年冬上期 3日
どうすればいいのか分からない
今日またニンニク男が村にきた。
まだ諦めて無かったみたい
私一人なら追い返していたけど、今日はバリスが居た。
バリスは人間と友達になりたい
人間の女の子のような生活に憧れている
だから、ニンニク男の発言にバリスが食いついてしまった。
だけどニンニク男はバリスに興味は無かったようで、軽くあしらっていた。
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208年冬上期 4日
「君が僕と来るなら、妹さんも人間にしてあげよう」
バリスが眠ったあとのニンニク男の言葉が頭から離れない。
可愛い妹を人間にするなんて考えられなかったが、人間の世界の話をするバリス、こじろうと友達以上にならないバリス、そして昨日泣きながらニンニク男に頭を下げるバリスを思い出すと、人間にしてあげた方がいいのかもしれないと思う。
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208年秋下期 8日
バリスはニンニク男が来るのを待っている
次、あいつが来たらきちんと話をしよう
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208年秋下期 11日
バリスが寝静まった頃、それを狙ったかのようにニンニク男が現れた。
私の返答を聞いた男は私に赤いピアスを渡して来た。
眠っているバリスをこじろうの家まで運びバリスの耳にピアスを着けた時、私は心底安堵した。
バリスの眼は赤から暗い茶色に、口の端から見えていた牙はみるみる小さくなり、蒼白かった肌は綺麗な白に変わった。
これで、バリスは幸せになれる。
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