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大男

作者: 美作為朝
掲載日:2016/02/17

下手っぴですが、よろしくお願いします。

 その男について俺が言えることは、とにかくでかかったってことだけだ。

   

 どうしても、仕事終わりには、宋人がやっている瑞宝に行ってしまう。足が勝手に向いてしまうからしょうがない。

 あれだけ広次の兄貴にこき使われちゃあ、誰だって、しょうがない。高山からこっちにある荘園を見回りだとかなんとか言って日が昇って日が暮れるまでぐるぐる回らされたらこうなっちゃうんだよ。親方は末法だ末法だって口煩く言うけど、俺には関係ない。どうせ暇な貴族の連中が広めているんだろう。俺たち下々には一切関係ない。都なんてどっちの方角かすら忘れてしまった。

 瑞宝は、相変わらずの賑わい。飯、酒、サイコロ、女、この九州のど田舎で全部安っぽいが揃ってる。人がいや輩がいるところに必要なものがきちっと金を巻き上げる形で揃っているから世の中怖い。


 その男は俺が馴染みの遊女を探している頃、瑞宝にやってきた。入り口に足が見えてからかがむようにして瑞宝に入ってきたから、ちょっと慌てた。だが瑞宝の中は変化なし。いかがわしい嬌声にサイコロの音、飯をかきこむ箸の音、下卑た笑い声。この大男とにかくでかい。今まで俺が生きてきた中で見た人間の中で一番でかい男だと言ってもいい。身の丈七尺はあるかという体躯。顔はここいらでは見かけない顔だから、どうやら旅人らしい。こんな片田舎にやってくるのだから、余っ程のモノ好きか、落ちぶれてやってきたに違いない。まぁ、ろくな宿屋なんてこの辺りにはないし宋人の営むこの瑞宝で女でも抱いて一晩過ごそうってことだろう。帯刀しておらず得物は弓だけ。マジで。物騒なこのど田舎でどうやって身を守るつもりやら、ずんずん瑞宝の中を歩いてなんと俺の横にどっかと座りやがった

 給仕兼、飯盛り兼、春も売っちゃう遊女がこの大男に寄ってきて肩にに手をかけると

「飯なん、酒なん」と、野太い声。で飯と酒が運ばれてくると、にゅーと杯をつかむため右手が伸びる。さらににゅーっと。

 あれ、俺酒が回ったのか、男の手がやけに長くいや、右手だけが長く見えるからどうもと思っていた頃。店の反対側の奥で遊女の叫び声がした。どうやら客と揉めたらしい。

「その方の体は、売り物にやありにけむ、我を拒まんとするや商いこそ続けられんとすべきや!!」

 髭面客の男の大音声が聞こえたかと思うと

「たれぞ助けばや」遊女の叫び声が響いた。館の反対側なのでよくわからなかったが髭面の男は、遊女の首根っこを押さえつけたまま腰の脇差しを抜こうとした。

「誰ぞ、誰ぞ」

遊女はあらんばかりの力で抗ったが、髭面の男は脇差しを遊女の頬にあてがわんとした。

「もうその方の商売も終わりなるべし」

その瞬間だ。

 一迅の風が吹いたかとおもいきや、巨大な物体が館の反対側まで一気に動いた、いや動いたというより飛んだ。

 あの大男だ。

 何歩かわからないが、最短距離で髭面の男までの廻いを詰めると髭面の男の襟首を恐ろしい膂力で圧した。将に圧したとしか言い様がない。

 そして、髭面の男よりはるかに大音声の野太い声で

「爾は遊女を人と思わざりしか」

大男との比較で髭面の男が赤子のように見える。

「かくありし、売女に情けとなん」

 髭面の男が鳴いた。

「再び、云わん、遊女を人と思わざりしか」

 大男威圧感たるや、半端じゃないのだが、髭面の男が返答するより早く、大男のあの長い右腕が唸りをあげた。

 俺は人が文字通り(と言っても読み書きはできないんだが)あんな速さで放り投げられるのを初めて見た。髭面の男はどのように打ちだされたのか、わからないまま館の反対側までそれこそ文字通り飛んだ。

 髭面の男は、壁ごと館を飛び出し、館から飛び出て行った。

 俺が思ったとおりだったのだが、この辺で大きな顔をしているのは、紀家の連中に違いない。髭面の朋輩が一斉に立ち上がった。

「我らをいずこの郎党と知りての行いたるや」

一人の髭面の朋輩が言うと。抜き身の大刀があちらこちらで音を立てて抜かれた。

大男は、小刀すら持ち合わせていない。

「知らぬ」

 もう双方成り行きというか、行方は決まったらしい。まず最初に館をきりもりする宋人が館の外へ一目散に逃げ出した。

「よそ者を侍らかしてならんや、者共かかれ」

 ここからは、何が起こったか、話すまでもない。大男は紀家の連中をちぎっては投げ、弾き飛ばし、蹴散らかし、殴り飛ばし、の大立ち回り。紀家の朋輩の断末魔、遊女の悲鳴。 俺に旨い言葉みつかるのなら、丁寧に話てもいいのだが、どうせ結末は同じだ。

 瑞宝は柱を残しあばら家になり、怯えるお白いを塗りたくった遊女だけが残った。大男は飯でも食い終わった後かのように、何事も無く、元、瑞宝を後にしようとしていた。

「暫く」

 俺はそれこそ遊女のように大男にすがった。

「我、爾の名こそ、知りたけれ」

 大男が振り向いた。相変わらずの無表情。それに威圧感。訊いたことが間違っだったと一瞬思ったが、、。


 「為朝なり」

 大男は答えた。

いろんなジャンルを書こうと思っていますが。なにぶん筆が遅いので、、。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白かったです! 源氏で一番強いのは為朝だと思っているのでその怪物ぶりや、破天荒な暴れん坊でありながら仁義にも厚い好漢ぶりが伝わってきてとても良かったです。 [気になる点] 贅沢を言わせ…
[良い点] 為朝がカッコよすぎです(笑 [一言] 水滸伝を読んでるみたいでした。面白いです。こういう世界観好きです。
2016/02/17 14:33 退会済み
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