砂漠の中で
砂漠の中に放り出された。
角の取れた小さなぬいぐるみを抱きかかえたまま。
背筋を伸ばした君と、手を繋いだマトリョーシカがこっちを向いて笑ってる。
「さあもう少しで辿り着けるんだ」と、右を向いたり左を向いたり。
もうそんな事は必要ないと分かっているのにどうしてだろう、この胸の高鳴りを止める事が出来ないんだ。
さよならが愛おしいムックの遠吠え。
さよならの先を想う、焼けるように熱いこの地球の高鳴り。
飛び抜けて性格の明るいガラスで出来たテーブルの玉。
飛び抜けて性格の暗い、頭が陽気な地平線。
手まねきをしてはイタズラっ子のような可愛い微笑みを見せて、回りくどい言い方でまた僕達を混乱させる。
さあ飛び出そう。
今だ、そう、飛び出そう。
良く出来た、昔海で拾ってきた貝殻で作ったペンダントを胸から下げて、ゆっくりと温度を上げるスペードのエースを物欲しそうに見つめていた。
「さよならだよ、今度こそ」
さあ今度こそ手を取り合って。
君の好きな色と、食べ物と、雪の色と、まったりするのが好きな僕の飼い犬も連れて。
見た目がかぼちゃのとってもみずみずしい、心の中の果実をそっとポケットに忍ばせて。
カチカチとお腹をすかせてこっちを見てる育ち盛りのドーナツを横目でみながら。
今目の前にいる君は、待ち遠しい太陽の中に希望だけをみてとても得意気のよう。
そんな君を見ていると、僕はずっと君に憧れていたことに気が付く。
「もう少しだけ、その焦げた先の未来に焦がれてみよう。」
そう思ったところだったんだ。