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明日で地下室の生活が終わる。

「今日のご飯だ。」

秋津怜斗は、ご飯を置いた。

「オマエ、明後日ここから出られるぞ」

私は目を丸くした。急にここから出られるからじゃなくて、明後日と言う単語に。

「明後日、オマエは違うところで飼われるんだ」

へぇー、そうなんだ。

そういえば私を成長させて、売るとか言ってたね。でも、明日出れるんだ。

「俺は明日忙しくて、ここに来ないからな。」

それは好都合です。

「次、飼われるとこが俺みたいな奴だと、いいな」

満面の笑みで秋津怜斗は笑った。

その笑みは10年以上前の秋津芳輝に似ていた、怖い笑みだった。

その笑みを見ることは、もうないだろう。

そして



──秋津怜斗の誕生日がやってきた。



夕方に西原が地下室にやってきた。

「メイクとかはここでやっても、よろしいでしょうか?」

「ええ、上に行って見つかったら困るからね。」

西原はピンクのドレス……と言ってもワンピースに近いものを持ってきた。

「これは生前、真由美様が着ていたものです。」

「お母さんが……?」

「はい、いつか愛花様に着て欲しいと話していました。物置にありましたがクリーニングにも出して綺麗にさせてもらいました。」

新品のように綺麗だった。

「パーティーは午後6時からです。それまでにはメイクも終わらせましょう。」

西原は綺麗に髪型を整えて、メイクもしてくれた。

執事って本当にすごいと改めて思った。

「今日は、怜斗様の誕生日でもありますが、正式に怜斗様が秋津財閥の跡取りに任命する大事なパーティーでもあります。」

「……そうなの。私には関係ないわ。私は取り返すだけよ。」

「かしこまりました。」



──午後6時30分。

「そろそろ、行くわよ。西原」

「かしこまりました。あ、愛花様!」

「どうしたの?」

「真由美様と同じ容姿を持ち、お美しいですよ」

「ふふ、今そんなこと言う?」

慣れないヒールをカツカツと鳴らしながら、上に上がっていく。

光が見えてきた。

──ザワザワ。

(いろんな光があって眩しい。それにすごい人…。)

ホールの一番目立つところに、10年前より小太りになった秋津芳輝と、その奥さんがいた。

楽しそうに話していた。私は近づいていった。

──カツカツ。

最初に私に気づいたのは秋津芳輝だ。

「お久しぶりでございます。秋津芳輝さん、私の事覚えていますか?」

「……覚えてますとも!あなたみたいなべっぴんさんの顔を覚えていないわけないじゃないですか!私の妻にはかないませんがな!」

「もう、あなたったら!」

二人は声を揃えて笑っていた。

「そうですか、およそ10年ぶりですもんね」

私は二人に聞こえない声で言った瞬間会場が暗くなった。

『本日はお忙しい中、秋津怜斗様の誕生日パーティーに起こしくださり、ありがとうございます。』

アナウンスが入った。声は西原だ。

『本日の主役である秋津怜斗様からご挨拶を頂く前に、百合川愛花様からご挨拶を頂きたいと思います。』

──ザワ。

「百合川愛花様!?もう亡くなったはずじゃ!」「まさか、生きてるの!?」「そんなデタラメを信じレン!」一人一人が自分の気持ちを口に出していた。

──カツカツ。

「本当に愛花様なのか?」「でも真由美様にそっくり」「偽物の可能性も!」

──カツン。

秋津芳輝とその奥さんは、なんでここにいるの!?という顔をしていた。

秋津怜斗は私は睨んでいた。



──さぁ、愛花。取り返しなさい。



もう一人の私が私に話しかけた。

『ただいま、ご紹介にあがりました百合川愛花です。お久しぶりの方も初めての方もいると思います。この度、光栄な場所にいられ、感謝しております……』

「に、偽者だ……偽者だ!!!!!!!!!!コイツは偽者だ!!!!!!!!!!」

秋津芳輝が叫んだ。

「百合川愛花は10年も前に亡くなってるんだ!!!!!!!!生きてる筈などない!!!!!!!!!!」

──ザワザワ。

(マズイな……)

みんな私を疑い始めた。

「待てぃ!!!!!!!!!!」

一人の老人が叫んだ。その瞬間に会場は一気に静かになった。

「愛花様が小さい時、私は一緒に遊んでおった!!愛花様には耳の裏にホクロがある!ハートみたいな形のがな!それを見て判断をしよう!」

一人の老人が私の元にきた。

そして、私の耳を見て、耳打ちをした。

「生きていたのですね、愛花様。」

(思い出した……この優しい声。)

私を本当の孫のように可愛がってくれた、みやじぃだ……。

みやじぃは宮島財閥の社長である。百合川財閥と仲が良く、昔たくさん遊んでもらった。

「この方は百合川愛花様だ!!!!!!!本物だ!!!」

みやじぃは叫んだ。

「う、嘘だ!!!嘘だ!!!ずっと地下室に閉じ込めていたから、ここにいる筈など!」

はっ!と秋津芳輝が言うのをやめたがもう遅かった。

『今の聞きましたか?私の父と母が居なくなった日から今日まで、ずっと地下室に閉じ込められてました。』

──ザワザワ。

「そんなことありえるの?」「でも生きてるってことは…」「なにかのドッキリ?」

『私はそこにいる、秋津芳輝に殺されたのです!私の父も!母も!そして私自身も!!!そして全部自分のモノにしたのです!!!!!!!!』

「そ、そいつを止めろぉぉぉぉ!!!!!!!!!!」

秋津芳輝が叫んだが、誰一人動かなかった。

秋津芳輝の奥さんは横で倒れていた。

『秋津芳輝、私は全て返してもらいます!!!自由も!!!!!!!!!!地位も!!!!!!!!!!』

「うるさい!!!!!!!!!!黙れ!!!!!!!!!!黙れ!!!!!!!!!!黙れ!!!!!!!!!!黙れ!!!!!!!!!!黙れぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!全部オレのもんだ!!!!!!!!!!」

『オマエは私から全てを奪ったんだ!!!!!!!!!!あの日から!!!!!!!!!!地下室に閉じ込められ、私は生きる希望を無くしていた!!!!!!!!!!なのに、オマエは私から奪ったもので幸せに暮らしていたんだ!!!!!!!!!!自分のした事が、どれほど罪深いか!!!!!!!!!!』



──シーン。



「アハハッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!!!!」

秋津怜斗が笑い始めた。腹を抑えて笑い始めた。







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