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……あれ?ここどこだろ?
私は辺りを見渡した。
(なんで私、お屋敷のホールにいるのかな?)
「愛花!」
懐かしい声が私を呼んだ。
「あ〜っ!お父さん!」
目の前で“私”がお父さんに向かって走って行った。
あれは小さい頃の私…まさか、ここは過去?
〈お父さんと会うの久しぶりだなー!〉
この声は?小さい頃の私の心の声?
「アナタ、愛花」
「あ!お母さん!」
〈3人揃うの久しぶりだなー♪〉
あ、そうか…。小さい頃からお母さんとお父さんが多忙で、あまり3人一緒に居られなかったんだっけ……。
〈明日の遊園地楽しみだなー♪〉
遊園地…?
「愛花も明日で7歳か、早いなー」
「えへへ!」
小さい頃の私はお父さんに頭を撫でられ、嬉しそうにしていた。
「そうだ!お母さん、お父さん!私ね、絵を書いたの!今持ってくるね!」
小さい頃の私は自分の部屋に向かい走り始めた。
私も小さい頃の私を追いかけた。
〈ん?秋津の部屋のドアちょっと開いてる…なにか話してる?〉
小さい頃の私は秋津の部屋を開いているドアの隙間から覗いた。私も同じように覗いた。
〈秋津と秋津の奥さんだ。〉
「細工?そう、上手くいくかしら?」
「ああ、大丈夫だ。」
〈細工?なんのことかな?まぁ、いっか♪〉
小さい頃の私は「早く絵を取りに行かなきゃ!」と小さい声でつぶやき、自分の部屋に向かい走って行った。
私は、もう少し詳しく聞けないかと思い。秋津の部屋のドアを少し触ってみた。
(通り抜けれる……!)
私は、ドアを通り抜け、秋津と秋津の奥さんに近寄った。
「ねぇ、あなた本当に上手くいくのかしら?」
「ああ、問題ない。車に細工して事故を起こしたら、あいつらは居なくなる!」
あいつらって、私たち家族のことか──。
「けど、百合川財閥の跡取りなんて、そう簡単に取れるの?」
「あいつらには親戚が居ないからな、秘書である俺が一番この財閥の事をわかっている。それに社長のことを一番理解しているからな。俺が一番なりやすいんだよ」
「そしたら、百合川財閥から秋津財閥に変わるのね」
「ああ!いい響きだ!」
頭狂ってるの?秋津の家族は!!!
「あなたもよく考えたわね、車に細工して事故を起こすなんて」
「ここが違うんだよ。」
秋津は自分の頭を指していた。
私は、あいつら…秋津達のせいで奪われた──!
──家族も!!!!!!!!!!
──自由も!!!!!!!!!!
──地位も!!!!!!!!!!
許せない…許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない!!!!!!!!!!
私の口の中は鉄の味に広がっていた。
「じゃあ、そろそろ仕事に戻る」
秋津が私の方に歩いてきた。
秋津が私の横を横切った同時に光が私を包んだ。
私が次にいた場所は、ある道だった。
大きな観覧車が見えた。
〈観覧車、大きいなー!〉
小さい頃の私の心の声が聞こえた。
この近くにいるの?
(そういえば明日の遊園地楽しみとか言ってた…)
じゃあ、この道、通るのかな?
そこに、一台の車が通った。
その車が電柱に──。
──ドオォォォン!!!!!!!!!!
──パリン!!!!!!!
車から黒い煙が充満していた。
けど、私は見た。
小さい頃の私は窓から近くの草むらに吹き飛ばされていた。
私は急いで小さい頃の私のほうに向かっていった。
「うっ…痛い…。」
小さい頃の私は意識があった。
「……!お母さん!!!お父さん!!! 」
「大丈夫ですか!?愛花様!」
そこに秋津が走ってきた。
(なんで秋津がいるの!?)
「秋津!助けて!お母さんとお父さんが!……むぐっ!?」
小さい頃の私は秋津が持っていた布を顔に当てられた。
〈甘い香り…〉
小さい頃の私は、そのままグッタリとして意識をなくした。
「まったく、オマエが居たら、何もかも台無しになるじゃないか。」
秋津は満面の笑みをしていた。
その笑みは、怖かった。