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019


 東雲の話によれば俺が鍵で、逢坂が扉だと言っていた。

 つまり、少なくともこの逢坂を仲間に引き入れ、東雲を探す必要があるということだろう。しかし、問題は逢坂をどう動かすか、だろう。だが、安心してくれ。今の俺はもうあの頃の俺では無い。伊達に数ヶ月間、逢坂の前の席に座り続けたわけじゃないというところを見せてやろうじゃないか。


「逢坂は、こんなところで何をやってるんだ?」


 当たり障りの会話から入る。


「何って、仕事の空き待ちしてるんじゃない。あんたの方こそ何を言ってるのよ。ギルドで仕事を待つこと以外に何があんのよ。私を納得させることが出来るだけの理由を述べてみなさいよ」


 あれ、ここ酒場じゃなかったのか。まあ、どっちにしろ逢坂に会えたのならどうでも良いことか。それに、ここは大きな分岐点だ。逢坂を納得出来るだけの――そして、逢坂を動かすことの出来るだけの動機が必要だ。


 しかし、俺は誤魔化そうだなんてことを考えもしなかった。。

 それは、もう既に今のこの現状が何よりも逢坂を動かす動機になり得るからだ。


「実は――」


 この状況をほとんど理解出来ていない俺が、どこまで逢坂に伝えられたのか分からないが、それでも拙い説明で、必死に御陽へと今自分がどのような状況に置かれているのかについて説明をした。


「あんた、それ本気で言ってるわけ?」


 流石の逢坂も眉をしかめている。


「ああ、逢坂が信じようが信じまいが百パーセント本気で、大真面目にこんな馬鹿下駄話をしているんだ」

「あんた、その話――」


 駄目だったか不安になるが、次の瞬間。


「最高に面白そうじゃないっ! こんな馬鹿な話ある? いいえ、間違いなく絶対に今後数百年は無いと言い切れるわ。この惑星にも、まだこんな変な奴がいたのね」


 俺は内心でほくそ笑み、勝利を確信していた。


 こうなった逢坂を誰にも止められないことを一番良く知っているからだ。


「で、どうすればこの世界は元に戻るのよ」

「いや、それは俺にも分からん。取り敢えず、東雲って奴を探さなきゃならん」

「東雲? あんた、まさか大賢者東雲を探してるの?」

「大賢者? なんだそれは?」

「魔術師の中で、世界最高であることを意味する称号よ。この世界の災厄を救った三人とされているわ。大賢者を知らないなんて、あんた本当に他所者みたいね」


 これは、間違い無く東雲だな。

 知らない間に、お前は世界の災厄を救った大賢者に大出世していたのか。まあ、確かにあれだけの能力があれば世界の一つや二つ守ることもその逆も然りだろうな。


「大賢者なのかどうかは知らんが、その東雲は恐らく俺の知り合いだ。東雲が今どこにいるか分かるのか?」

「まあ、案内くらいは出来るけど――」


 なぜか歯切れの悪い言い方をしてくるその理由は、直ぐに明らかになった。

 案内された場所は、賑やかな城下町の外れにある殺風景な岬だった。その岬の先端に一つだけ石碑が建てられていた。そこには、こう記されていた。


 大賢者、東雲・サーシャ。ここに眠る。

 嘘だろ……一体何が、この世界に変化して何が起こったんだ。


「東雲は、もう死んでる……のか?」


 狼狽えながら逢坂に聞く。


「だって、大賢者東雲は千年も前から伝わる神話の中の人物よ。本当に居たかどうかも定かでは無いような人物だし」


 逢坂は、居るかどうか分からないと言うが、俺には分かる。東雲は、確実にこの世界で生きていた。そして、存在していた痕跡をこうして残していてくれている。東雲がどこにいるのかという問題は、解決したとしておこう。


 だが、問題がまた一つ増えた。

 しかも、強大にして巨大な問題だ。


 東雲は、もうこの世にはいない。

 正直、何か起きたなら東雲に頼れば良いだろう、なんて甘いことを考えていた俺を殴り飛ばしたいところだ。これは、俺にとって唯一と言って良い頼りが無くなったということを意味しており、同時に自力でこの事態をどうにか収拾しなければならないということを意味している。


 そんな無茶な。


「そんなに会いたいの? 大賢者東雲に」

「まあな。と言うより、東雲に会わないとこの事態を収拾出来ないんだ」

「なら、会えば良いじゃない」


 死んだ人間相手に会いに行こうだなんて、むちゃくちゃも良いところだ。いくら、逢坂だからと言って時を超えるなんてそんな無謀なことが出来て堪るか。


「たった今、自分で千年も前に東雲はもう居ないって言ったろ」

「だったら、時を千年越えれば良いじゃない」


 逢坂は、俺の額に人差し指を突き付けそう言った。

 人を指で指すなと教えられなかったのか、と余裕のある発言でも出来れば良かったのだが、まるであの時のような感じが人差し指からほとばしっている気がしていた。


 あのタラリア事件の時の様に。


 しかし、まあ平然とそれを話しているが、そんなこと本当に可能なのだろうか。だが、この世界で右も左も分からない俺にとって逢坂という存在は非常に心強い。


 もしかしたら、出来るのかもしれないと思わされてしまうんだからな。


 しょうがない、やってやろうじゃないか。

 ついでに、世界の危機の一つや二つ救ってやるぐらいの寄り道は許せよ東雲。俺は、お前のことを千年も待たせているんだろ。なら、今更ちょっとの遅刻ぐらい大目に見てくれたって構わないよな、東雲。


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