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2.『実験の意義と目的』とされた事


 これもご存じとは思いますが、『監獄実験』は米海兵隊刑務所に於ける粗暴行為の改善を目的として始まりました。


 しかしながら、1961年のミルグラム実験の影響を廃する事は決して出来ないと思います。

 ミルグラム実験は、アーレントがアイヒマンの犯罪をドイツ人によるユダヤ人虐殺に矮小化させるのではなく、人類普遍の罪の問題として大きく考えようとした事に端を発したものであり、ハンナ・アーレントがアイヒマンの行動を『凡庸な悪』と定義した事についての検証を行う事にありました。

(『監獄実験』のように偶発的にそうなったものとは違いますね)


 確かに歴史的に見て、ユダヤ人虐殺が行われたのは別段ドイツに限りません。

 ポグロム〔ユダヤ人虐殺〕は歴史上何度となく行われており、例えば日露戦争の戦費を出したユダヤ人銀行家シフの場合、ロシアにおけるポグロムに対する怒りが日本の戦費国債購入を決定づけたのだ、とも言われています。


 アーレントはユダヤ人虐殺問題に限らず、原爆の投下、また敗北したドイツ人をソ連兵が陵辱・虐殺した事などを含め、全ての『人間の犯罪』の根幹にある『責任の曖昧さ』を糾弾した訳です。

 しかし、これは“普通の人々がほっかむりしていた『自分の罪』に正面から向き合わせる事となった”ため、多くの人々の怒りを買う事になったのだ、とヤスパースは喝破します。


 友人を殆ど失ったアーレントを最後まで擁護したヤスパースによる上記の考察は、実に正鵠を得たものであり、それこそが私の『人間の精神の自由』への考察に対するヒントともなりました。


 彼女の言葉は大戦経験者を怒り狂わせた反面、1970年代当時の大学生はベトナム戦争に対する厭戦気分からなのか、彼女の説を真っ先に受け入れています。

 これは彼等が未だ自分たちをInnocent(正しくはinnocenceでしょうか?:英語は苦手でしてスイマセン)だと信じていたからでしょうかね?

 時代はビートルズとジョン・レノンですからw


 さて、前置きが長くなりますが、アーレントは日本では右にも左にも人気があります。

 私も『難解な人だなぁ』と昔は思っていましたが、この年になって見えて来るものも少しはある様です。


 それは、この方の哲学の『依って立つ所』が実に“脆い”のではないのか、と思いつつある、と云う事です。

 だからといって、この方の哲学性に揺るぎはありません。

 面白い事に、この方の哲学はその“脆さ”故に多方面から読める気がします。

 これもヤスパースの言葉ですが、「彼女は“ナイーブ”である」とのことです。


 これは、フランス語の原意である“繊細さ”ではなく英訳の方の“世間知らずの(馬鹿)”という意味でしょうね。


 アーレントについて長くなりましたが、これは『監獄実験』とそこから導き出される結論を語る上でどうしても引き会いに出さなくてはならない事ですので、ご容赦下さい。


 と云っても、本文は大した内容でもないんですけどね~w 





本文中にある「正鵠を得る」とは支那古典の「大学」や「中庸」にある言葉です。

矢を放った結果、的の中心の黒丸を射貫いた事を示す言葉が、言論的に当を得た言葉であるときに使用されるようになりました。

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