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始まりの産声
「誰れそ彼は、慈しみの子
声を聴けや、最果ての」
薄暗い景色の片隅で、女が紡ぐ言の葉は水面の波が円を描くように消えていく。
落ちかけた夕日は血のように朱く、その日ひとつの産声が小さく泣いた。
「誰れそ彼は、慈しみの子
声を聴けや、最果ての」
「誰れそ彼は、永久に
紅き灯りや、永遠の灯火」
女の声は朗々と続き、美しい唄は産まれた子へ贈られる子守唄だった。
「誰れそ彼は、慈しみの子
声を聴けや、最果ての」
「誰れそ彼は、永久に
紅き灯りや、永遠の灯火」