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バレットレイン

銃声。木が寄り添うようにして身を寄せている森に乾いた銃声が響く。

立て続けに二つの低いうなり声が森を震わせる。

懐から空き缶サイズの筒を取り出してそれらを撃ち抜く。

と、森に閃光と耳を裂く程の轟音が轟く。

それによって出来た隙を逃さないように即座にスキル詠唱を行う。


「ダブルバレット」


両手に持つ双銃の先端が鈍く光りだし、薄い光が回って銃口に吸い込まれる。

その瞬間を待っていた俺はそれと同時に引き金を引く。

反動は先程よりは大きかったが、それと引き換えの高威力の弾丸が二体のモンスターを貫いて森の奥の丘へと突き刺さる。心臓部を撃ち抜かれたモンスターは薄いポリゴン片となって砕け散った。俺の目前には獲得経験値と獲得アイテム、獲得金が表示された。

それぞれ

「637EXP / ・ウッドゴーレムの左腕・ライフドリンク / 278L」

と表示される。腕を左右に振る手慣れた動作でウィンドウを消す。

そのまま何一つ変わらない空を見上げてため息をつく。

この世界に囚われて凡そ二週間。残された9382人は数人でパーティーを組んで行動している。だが俺のように一人で狩りを行うプレイヤーたちが居る。いわゆるソロという集団だ。

自分だけで攻略していく事は経験値効率的にもいいが、その分死の危険が伴う。

俺は神無月信也と言う。βテストに当選したときはそれこそ喜んだものだが、

今となっては喜んでいる場合などではなかった。ゲーム上のネームで付けた【ムツキ】という名前が唯一俺を証明する手掛かりになる。神無月、無いをムと呼んで【ムツキ】としている。自分では気に入っているので何の抵抗や考えもせずにその名に決めた。

この世界には数種類の職業があった。

近接重視の行動をする片手剣士、強靭な筋力と体力を誇る特殊大剣士、中距離からの援護攻撃を主とする双銃士、魔法を主体とした遠距離エンハンスにエフェンスを備えた魔法士、魔法と近接を備えた魔法剣士がある。種類は5種類と少なめだが、サブスキルが豊富なのでそこを補っていると言えるのだ。サブスキルは、全職業に共通するサポート的なスキルである。

例えば、刺突武器(投げナイフや刺突ピック)を用いた中距離支援戦闘力の向上など。

しかもスキルレベルを上昇させればナイフなどに麻痺毒、神経毒、睡眠毒などの数種類の毒を塗って投げて使う事も出来る。

このようにさまざまな使い方が出来るサブスキルはソロプレイヤーにとっては重要なスキル派生だった。

だが、それに伴ってわずかな落とし穴にはまり命を落としたプレイヤーも少なくなかった。

現在、残っているプレイヤーは凡そ8000人。開始二週間で凡そ1300人が死んだ。

俺はいつもの通りなじみの狩場で一通りの狩りをこなして町に戻っていた。

【始まりの町グリニッジ】

この町は全てが本当に始まった元凶である。その町を闊歩するプレイヤー達は少ない。

殆どが4層上の階層を目指して日々Lv上げを行っている最中である。

この世界での通貨はLay(レイ)で表される。つまり先程入手した通貨は278Layという事だ。

流石に4層のフリーダンジョンで取れる量なので左程多くはない。

フリーダンジョンとは、普通のストーリーなどとは別のLv上げや宝探しのためにある。

いわゆるサブダンジョンという部類に属する場所と考えていい。

その為、戦闘中でなければいつでも離脱することが出来るのだ。

俺はそれを多用している。いつものように声を張り上げてその言葉を口にする。


「タウン転送、第四層グロム」


そういうと俺の体を包むようにして淡い光が回りだす。

やがてそれが視界を完全に遮り、白い光に目を瞑りたくなるのを耐えた。

光が消えた時、俺は第四層の町【大理石の街グロム】に転送されていた。

軽く肩を振って付近にある宿屋を探す。

昨日からほとんど寝ていないので正直精神的にきつくなっている。

付近にあった宿屋の店主に宿代の200Lを手渡して二階に昇る。

木でできたこの宿屋は独特の自然の香りがして気持ちいい。

階段一段を昇るごとにその香りが段々と香ってくる。

その香りに癒されつつ個室のベッドに飛び込む。若干質感は固いが寝るのには事足りる。

段々と眠気が襲ってくるのに対して抵抗せず、あと少しで寝れるというところで、

ドアがノックされる。嫌々しながらも重々しげに体を持ち上げるとノブを引く。


「はいはい、どちらさん……?」


「突然すいません、【朱の零騎士団】団長のコトと言います」


「はい?」


突然の来訪に驚くのも無理はない。驚かずにはいられない。

【朱の零騎士団】は前線で活動をしている中小ギルドの中でもトップクラスのクラン。

故にその団長に対する支持が絶大なものを誇っていると言うのは誰もが知っている事だ。

だがそれがこんな少女だとは気付くわけはなかった。現に今会うまでは知りもしなかった。

そんな彼女の突然の来訪である。しかも大勢いるプレイヤーの中の俺に。


「【朱の零騎士団】に入る気はないか?」


「はい?」


これが後々に重大な後悔を生むことになる出会いだとは誰も思いもしなかっただろう。


クリスマス前後、怠けてましたすいません

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