飴玉
初恋。あなた。飴見つける。
1月。寒さが残っている成人式。中学時代から馬鹿をしていた友人と一緒に来た。正直、市長の話だけ聞いてこいつらと馬鹿話をしながら飲みたかった。
そう思ってた矢先に、初恋の人を見つけた。見間違えるはずもない、彼女だ。中学時代の面影を残しつつ、時間の流れで尚一層綺麗に美しくなっていた。僕の中に淡い妄想が駈けめぐった。彼女と昔話をして、そんなんで付き合うことが出来れば。そんな期待を銀色の輪が潰した。彼女の左手の薬指で光っていた。
成人式が終わった後の中学の奴等が主催した飲み会。彼女に出会えると思い、当日に急に行くことにした。話を、せめて話だけでもしたかった。
中学の担任や部活の友人との挨拶も適当に済ます。僕の目的は違う。タバコとアルコールの臭いで充満していた部屋の中を掻き分けて、なんとか隣の席を確保した。だが、何を話していいのか分からなかった。中学の時だって実際ちゃんと話をしたのは数えるほどしかなかったのに、今になって話が出来る訳がない。
彼女が口元にテッシュを当て離す。そして無造作に僕の前に置いた。ビールを持って彼女は違う席へと行った。テッシュの合間から赤く光る飴玉が見えた。彼女が途中で舐めるのを辞めたみたいだ。
何を思ったのか、目の前の飴を拾う。テッシュを剥がすと白と赤の妙なコントラストになっている。
辞めろ。それをしたら俺は変態に成り下がる。そんな理性が行動を抑えることは出来なかった。他の奴にばれないよう素早くを口の中に放り込む。テッシュが口の中について、よく分からない味になっていた。だが、確かに彼女の唾液を感じた。噛み砕かないように慎重に口の中で転がす。削れないように、無くならないように、歯に当たらないように堪能する。彼女の口の中にあった飴。それだけで、僕は興奮する。消えないで、消えないで、ずっとこのまま舐めていたい。
そんな長い時間舐めていられるわけもなく。ものの数分で飴は無くなった。吸って吸って吸い尽くした。飴に染み付いた彼女を全て舐めた。二度と味わえないだろうモノ。
話も出来ず、これしか出来ない僕は不純で愚か過ぎるのだろうか。