098 五回目の配信も波乱万丈な件
配信用のマイクとカメラのセッティングを終え、私は深く息を吐き出す。SNSの告知もしっかりしたし、コンディションも良い。サーバーも問題なし。
ボイスチェンジャーとアバターの同期状態は良好。画面の向こうに広がる巨大な世界へと向けて、私は静かに配信開始のスイッチに手を掛け――ようとして、ふと時計に目をやった。
時間をしっかり再確認する。よし!まだ20時にはなっていない。
それでも私の唇には、自ずと笑みが浮かんだ。
配信予定時刻である20時まで、あとちょうど1時間。時計の針はまだ19時を回ったばかりだ。だが、もちろん手違いなどではない。
前回の配信で味をしめたというか、またもや試してみたい演出の一つだったりする。私は迷うことなく、配信開始のボタンを押し込んだ。
目の前のメインモニターを確認する。カメラの起動を示すランプが緑色に点灯し、お手伝いのサーバーちゃんが自動的に接続をオープンにしていく。
つまり――この瞬間から、待機画面を覗きに来ていた視聴者たちの画面には、私の姿と背景がバッチリ映り込んでいるわけだ。
ただ、今回の背景は前回の豪華な作業部屋とは一味違う。
重厚な金属フレーム、壁際に整然と並ぶ巨大な油圧アーム、そして何より部屋の中央に鎮座する、あの漆黒と深紅の無骨な二足歩行兵器――『強襲型カラドボルグ』。
そう、今回の配信待機画面は、VRゲーム『DHIB』内に存在するシミュレーターの方の私専用の格納庫からダイレクトに中継されていた。
私はそれっぽい作業着を羽織り、手に大きなスパナを持ちながら、カラドボルグの脚部関節のボルトをカチカチと締め直していた。
こういう演出って大事だよね!
――その頃、コメント欄の様子はというと。
『……あれ?』
『入れる?』
『待って、まだ19時だよな?』
『またか!』
『ちょっとwww』
『またはいれるしwww』
『またフライングwww』
『何してるーフィン様ー?』
『カラドボルグいじってらっしゃるwww』
『えー、どうみてもDHIBの格納庫です本当にありがとうございました』
『また、細かい事してるwww』
『配信画面に格納庫もってきたのかwww』
『手が込んでるwww』
『だから芸が細かいってフィン様www』
『フィン様ー!?』
『待機画面がガチのメカ整備現場なの草』
『背景の鉄のリアル感どうなってんだよwww』
『スパナ握ってる作業着のフィン様尊すぎない???』
『動いてる……油に塗れてる……神々しい……』
『刺激が強過ぎますフィン様ー!』
『もう、何でもありだなフィン様www』
19時ちょうど、何気なくチャンネルを覗いた視聴者たちが、まさかの「ガチの整備風景」を目撃して一斉にコメント欄で大騒ぎを始める。
私はコメント欄の騒ぎをチラリと確認しつつ、準備しておいたあるアイテムを取り出した。
カラドボルグの足元、巨大な足首の金属フレームのすぐ横に、木製のしっかりとした立て札をスポッと設置する。
そこには、達筆な手書きの文字でこう書かれていた。
『配信は20時からです!』
カメラに向かって、私はスパナを軽く掲げながら微笑んでみせた。
『立て札立てたwww』
『出たwww』
『やっぱりそれするんだwww』
『足元に「配信は20時からです!」www』
『直置き看板たすかるwww』
『あざとい!あざといぞフィン様!!』
『「です!」の勢いが好きすぎるwww』
『はーい!』
『はーい!任せてください!』
『お利口さんに正座して整備見守りまーす!』
『ふにゃふにゃになっちゃうwww』
『幼児化防止作戦失敗ですふにゃぁ』
コメント欄が早くも幼稚園化し始めるのを横目に、私は黙々と作業を再開した。
音声はまだミュートにしている。だが、無言のまま私がカラドボルグの武装をいじくり回す様子が、最新鋭の解像度でそのままリアルタイムで配信されている。
まずは肩部の固定機銃を取り外し、クレーンで引っ張り出してきた巨大な多連装回転銃へとカチリと換装してみる。
重厚な砲身が鈍い光を放ち、カラドボルグのシルエットが一気に過激さを増す。
『ちょっと!?ガトリングつんだ!?』
『ゴツくなりすぎて草』
『フィン様それ何を目指してるんですかww』
『重装甲ロマン仕様キターー!』
『火力は正義。でも燃費がwww』
『カラドボルグにあわないっすフィン様www』
続いて、背部のスラスターユニットを取り外し、予備の大型ブースターを二基、強引に増設してみる。もはや二足歩行ロボットというよりは、飛んでいくミサイルみたいなアンバランスさだ。
『ブースター増設www』
『推力過多で絶対制御不能になるやつwww』
『ロマンの塊すぎるwww』
『メカニックフィン様の手つきが手慣れすぎてて耐えられない』
『絶対運用できない仕様www』
『これは鳥になれるwww』
一通りゴツく改造し終えた私は、腕を組んでうーんと首を傾げた。
……うん、やっぱりなんか違うな。カラドボルグの洗練されたシルエットが台無しだ。
私は手際よくガトリングガンを取り外し、元の固定機銃へと戻し、増設ブースターも取り外して元のスマートなスラスターへと戻していった。
ものの数十分で、完璧に元の姿へと戻るカラドボルグ。
『もどすんかーい!』
『ずっこけたわwww』
『結局もどすんかーい!!www』
『試行錯誤の1時間なんだったのwww』
『でも楽しそうだったからヨシ!』
『元に戻す手際の良さ草』
『このゲーム凄いな!クオリティが頭おかしいwww』
『格納庫シミュレーターの方だねこれ。実際にやるとめっちゃ時間かかりますwww』
コメント欄が一斉に突っ込みで大はしゃぎする中、システムの時報が静かに響いた。視界の端で、サーバーちゃんたちが「20:00」と書かれた可愛いフリップを掲げて教えてくれる。
「おや、もう時間だね」
私はスパナを作業台に置き、作業着の裾を払って軽く手を叩く。
その瞬間、システムのエフェクトと共に視界がふわりと切り替わり――無骨な格納庫の背景から、いつもの見慣れた豪華な作業部屋へとダイナミックにスライドする。
それに合わせて、私の服装もオーバーオールの作業着から、ピシリと仕立てられた漆黒の執事服へと一瞬で華麗に衣替えを完了した。
マイクのミュートを解除し、私はカメラに向かって改めて正面から向き直る。そして、胸元に静かに手を当て、柔らかな微笑みをたたえて口を開いた。
「皆さん、こんばんは。執事のフィンです。本当に長かったね。いろいろありすぎて、長らくお待たせして申し訳ありませんでした。これより、第5回目の生配信を始めさせていただきます」
言葉が乗った瞬間、画面を埋め尽くす怒涛の弾幕。
『きたああああああ!!!』
『フィン様ー!』
『こんばんはーーー!!』
『こんふにゃーーー!!』
『待ってた!待ってたよフィン様!!』
『整備お疲れ様でしたー!www』
『こんばんは!!』
『こんばはーー!!』
『早着替えすげえ!』
『一瞬で変身っぽくて良い!』
「ふふ、みんな、今日も元気があって良いね。……まあ、僕の方はなんか、色々ありすぎて、本当に目まぐるしかったかな。石を積んだりするゲームにはまったり、DHIBにのめりこんだり、なんかコラボになっちゃったり、動画撮影したり、もうてんてこまい!」
私は少しあさっての方向を見上げながら、困り顔で苦笑いを浮かべた。
すると、待ってましたと言わんばかりにコメント欄が凄まじい速度で流れていく。
『石を積んだりするゲームwww』
『知らないゲームしてる!』
『また変な事してるwww』
『DHIBにのめりこんだフィン様は動画で見ましたwww』
『地下レースで無双してた執事は誰ですかねぇ!?』
『動画のクオリティが高すぎて大騒ぎになってますよ!』
『公式コラボになってるのホント草』
『どうしてそうなったのか詳しく教えてフィン様ー!』
『生贄ちゃんがまた血吐いて倒れてそうww』
『生贄ちゃん大変www』
『社長の胃に穴が空いちゃうww』
「あはは、みんな生贄ちゃん……あ、社長の心配をしてくれてありがとう。でも大丈夫だよ?僕としてはね、DHIBがすごく面白かったから『これ面白いですねー』って社長に言ったら、なんか気がついたら公式コラボになっちゃってたんだよね。いやぁ、話が早くて助かるよねぇ」
私がさも「良いことでしょう?」と言わんばかりの清々しい笑顔で言うと、ツッコミの嵐が巻き起こった。
『助かるよねぇ、じゃないんだよwww』
『社長とヴィジョンアドベンチャーが超特急で裏回しした成果だよ!!www』
『DHIBもPlan_Bの社長も絶対大変だったよ!www』
『「面白かったから言ったらそうなった」の恐怖www』
『社長の苦労を爽やかにスルーするスタイル大好きwww』
『生贄ちゃん不憫すぎるwww』
『生贄ちゃん大変www』
『でもおかげで神ゲーがさらに神ゲーになったから感謝!!』
温かい大爆笑に包まれるコメント欄を見ながら、私は手元の質問ピックアップモニターに目を通す。そこにはファンからの気になる質問がいくつか上がっていた。
「コメント欄で『集まれVチューバーのイベントに妄想先生が参加するって本当ですか!?』とか『次回のジャンルにフィン様がいるんですけど知ってますか!?』っていう質問がたくさん来てるね?」
『そうそれ!!』
『知ってるんですかフィン様ー!?』
『妄想先生やる気満々ですよ!!』
『V系のイベントにまさかの男性ジャンル参戦で界隈が大揺れですwww』
『フィン様は知ってたのー!?』
「実はVチューバーのイベントについては、前回の4回目の配信コメントを見て初めて知ったところだったんだよね。妄想先生、やる気十分らしいねぇ。社長から聞いたけど、かなり気合が入ってるみたいだよ」
『やっぱりコメントで知ったのかwww』
『これ絶対、裏でフィン様がイベントって何って聞いてると思うんだよなwww』
『妄想先生のやる気が画面越しに伝わってくるwww』
『これ、何気なくコメントした人伝説になるでしょwww』
『二次創作についてはどう思ってるんですか!?』
『イベント運営とフィン様の公式で二次創作ガイドラインが出たのビックリしました!』
「二次創作について、かぁ。あれはね――僕よりも……そう、なんて言えばいいんだろ。妄想先生がすごく興味をもってたよ。『フィン様の魅力を広めるためには、表現と創作の自由が必要です!』って熱弁されてさ。だから、完全自由にすると混乱するから『許可制・申請制にしたら良いのかな』って言ってみたんだけど。その提案から社長と妄想先生が話し合って決めたみたいだよ。僕に権利があるかって?うーん……なんていうんだろう。面白そうだったから良いんじゃない? みんなが楽しければそれで良いと思うしね」
私のそのあまりにもあっけらかんとした爆弾発言に、コメント欄が一瞬フリーズし、直後に大爆発を起こした。
『面白そうだったから良いんじゃないwww』
『やっぱりフィン様はフィン様なんだなwww』
『やっぱりフィン様の一言で動いたのか!』
『実質フィン様の提案で草』
『思考が底抜けに寛容すぎるwww』
『やっぱりフィン様だった!ふわっふわな意見ありがとうございます!』
『駄目だあんまり理解してないwww』
『本人が一番ふんわり理解で草』
『男性作品が出ることがすごいことなんですよフィン様!』
『歴史的快挙なんですよ!?』
『規約読みましたよフィン様ー!』
『申請制だけど審査がめちゃくちゃしっかりしてて感動しました!』
『審査にはフィン様も作品みてくれるんですか!』
「ん?『審査にはフィン様も作品見てくれるんですか?』だって?」
私はフッと首を傾げ、ごく当たり前のことを聞かれたかのように笑顔で返した。
「あー、それは勿論見るよ?え?逆に僕が見ない世界線あるのそれ?」
その瞬間、コメント欄は「歓喜」と「恐怖」が入り交じった完全な阿鼻叫喚へと叩き落とされた。
『ぐああああまじかー!』
『本人が見る!!!www』
『ご本人降臨審査wwww』
『そうだよねー!そうなるよねー!』
『これはwww耐えられるのかクリエイターの淑女の皆様!』
『それはそうかwww』
『変なもの書けないじゃん!』
『フィン様も公認ってこと!?』
『やべえもんかけないねwww』
『推しに見られる二次創作とか正気の沙汰じゃないwww』
『光栄すぎて死ぬwww』
『推しに推しを見せるチャンスだけど、怖いよwww』
画面の向こうでファンたちが頭を抱えてのたうち回っているのが目に浮かぶようだ。
だが、私としては前世の記憶もあるし、創作物というものに対して変な偏見や拒絶感は一切ない。むしろ、みんなが情熱を持って作ってくれるなら、それは素晴らしいことだと思っている。
「みんな何をそんなに焦ってるの?別に僕、何でも読むよ?ああ、勿論、公序良俗に反しない『読めるもの』にしてね? 僕自身、作品に対する嫌悪感とかあんまりないからさ」
『まじかあああああ!』
『なんでもっていまなんでもって!!』
『落ち着け!落ち着くんだみんな!』
『フィン様ノンジャンルなのか……』
『フィン様の懐が深すぎて宇宙』
『全肯定の神様かな?』
『フィン様とフィン様の本もいけるのかそれ?』
『待って、カプ論争まで網羅する気か!?』
コメント欄の過熱ぶりに、私はふふっと楽しそうに息を漏らした。
「え?だってそういう作品だって世の中にはあるんじゃない?たまたま今まで男性作品で無かったっていうだけでさ。勿論、運営も会社もしっかり審査するけど、僕のイメージが大きく崩れなくて、作品として面白かったら全然いけるんじゃないかな? 勿論、僕もワクワクしながら読むよ?」
『うぎゃあああああああ!!!』
『ご本人がノリノリすぎるwww』
『フィン様が「僕の本」を認識している世界線www』
『思考が先進的すぎてついていけないwww』
『全人類、気合入れて原稿書けーーーっ!!』
『フィン様に「面白かったよ」って言われたら爆死する自信がある』
『生贄ちゃんが裏で「そこまで言わなくていいです!」って顔してそうww』
『神配信すぎるwww』
自分の発言で視聴者たちが爆発したり悶絶したりしている様子を眺めながら、私はいつものように満足そうに紅茶のカップへと手を伸ばすのだった――。
「今回も色々と情報の配信だらけになっちゃっててごめんね。なんか色々頑張ってはいるんだけど、予想以上にVチューバーって大変なんだねぇ」
私が紅茶を一口含んでから、少し申し訳なさそうに眉を下げて呟くと、コメント欄が一斉に全力のツッコミで埋め尽くされた。
『それはフィン様だけです!!www』
『お前が言うなああああああっ!!』
『他のVチューバーはそんな巻き込み方しないからwww』
『原因のほとんどがフィン様にあるの草』
『フィン様があっちこっちで歩いてるからです!』
『神出鬼没すぎてどこにでもフィン様いそうに思えてきました!』
『散歩感覚で大事件起こすのやめてもらっていいですかwww』
「えー?そんなことないよー。ねぇ?」
私が心底不思議そうに首を傾げると、コメント欄の呆れ顔が目に浮かぶようなレスポンスが高速で流れていく。
『どの口がwww』
『説得力ゼロで草』
『毎回やらかしてるじゃん!』
『気がつくと、すぐに違うことしてそうで草』
『目を離したら宇宙行ってそうwww』
『もう誰もフィン様のおとなしくしますを信用してない件』
『でもそれがフィン様だから!』
『そのままの暴走特急で突き進んで欲しいwww』
『どこまでもついて行きますフィン様!!』
「そうかなー……」
私は腕を組んで、うーんと真剣に考え込んでみた。
自分では至って静かに、執事として誠心誠意みんなを楽しませようと過ごしているつもりなのだが、どうにも世間の評価とはズレがあるらしい。不思議なこともあるものだ。
「あ、そうだ!」
ポンと手を叩き、私はカメラに向かってパッと顔を輝かせた。
「そういえば、DHIB勢の人はコラボ案件のことは楽しみに待っていてほしいな!あんまり詳しく話しちゃいけないのかもしれないけど……この前、ちょっとした収録を頑張ってきたからね!」
その瞬間、コメント欄が「待ってました!」と言わんばかりに跳ね上がった。
『コラボの件キターーー!』
『収録!?収録おわったのね!?』
『DHIBのアップデートの告知には書いてあるよ!』
『公式にイベント告知書いてあるからみんな見てくると良いよ!』
『これDHIBでASMRある!?』
『ゲーム内でフィン様のお声が聴ける!』
『イベント限定のやつだ!しっかり収録できてえらい!』
『ちょっと!DHIB勢しか体験できないのか!?』
『DHIBいいなぁ。私も買うか?』
『やっぱりVRゲーム機材買うしかないのか……推しの声は聞きたいっ!』
『一応スマホでも出来るよ!発熱注意ね!』
『スマホ版はデータも大きいから注意!』
『簡略化モードでスマホで参加だ!戦闘は無理だけど!』
『VR機材売り切れまくってて泣いてる』
『初心者でもDHIBって出来ますか?』
「あー、DHIBはね、最近のアップデートで結構変わったから、初心者でも遊べることは遊べると思うよ。スマホ版は試したことないけど、街中歩くくらいなら出来るって聞いたかな。多分イベントも参加できると思う。コラボに関してはまだもうちょっと先だけど、本当にちょっとした些細な収録だから、みんなそこまで気にしなくても良いかも?」
私が「大したことじゃないよ」という風に柔らかく微笑むと、ファンたちは案の定、阿鼻叫喚の嵐となった。
『気になるー!』
『絶対に気になるー!』
『フィン様の「些細な」は絶対些細じゃないんだよなぁ!!』
『DHIB勢の私、絶対にコラボは参加する!!』
『機材買ってでもログインします!!』
『質問です!KANOKEについて教えて下さい!』
『なんでアレ初心者に配ってるのですか!www』
『そうだよKANOKEだよ!!』
『あの鉄の棺桶についてフィン様の解釈を教えてくれ!!』
怒涛のように押し寄せる「KANOKE」の文字。
その単語を目にした瞬間、私の表情からふっと温度が消え、目がスッと静かな深淵のような光を宿した。
「KANOKEね……。……あれは何だろうね。僕も分からない」
私が悟りを開いたような真顔で呟くと、画面の向こうのリスナーたちが大爆笑で崩れ落ちた。
『やっぱりあれ謎じゃん!www』
『フィン様でも分からないの草www』
『あたまおかしいよねアレwww』
『目が死んでて耐えられないwww』
『作ってる運営すら分かってなさそうww』
『分からない人はDHIBのKANOKEで検索してね!』
『検索したらまんま「棺桶」って出てきて駄目だったwww』
「ふふ、でも限定機体なんだよね、あれ。カスタマイズはほぼ皆無だけどさ、固定砲台としてなら結構いい運用ができるんじゃないかな?」
『淑女たちがKANOKEで敵陣に突撃する地獄絵図www』
『初心者にはKANOKEは駄目っすwww』
『売り払ってノーマル機体買おう?』
『あとフィン様なら空飛ぶ戦車とか好きそうwww』
『絶対好きでしょ!!ロマン詰まってるもん!!』
「空飛ぶ戦車?あぁ、いいねぇ。重装甲で空を飛ぶなんて、ロマンがあってすごく素敵だと思うよ。女の子だってそういうのワクワクするでしょう?」
『わかるーーーー!!』
『KANOKEもロマン機体だからな!!』
『曲がれないけどな!!www』
『あれは曲がれない改造しすぎただけだよ!KANOKEのwww』
そこからは、なんだかんだとDHIBのマニアックな機体カスタマイズや、操縦のコツ、変態的な操作性の話でリスナーたちと大盛り上がりし、すっかり熱く語り合ってしまった。なるべくピンと来ていないリスナーのために、公式の参考動画を画面端に流しながら説明したりと、実質DHIBの公式PRコーナーになってしまったけれど、まあ良いよね?
ふと、視界の端でサーバーちゃんたちが「終演のお時間です!」と書かれた可愛い看板を持ってパタパタと跳ねているのが目に入った。
「あ、時間だ。時間って早いねぇ……もう終わりみたいだ」
私が名残り惜しそうに画面を見つめると、コメント欄には一斉に寂しがる声が溢れ出す。
『えええええええもう!?』
『早い!!早すぎる!!』
『時間が溶けたんだが!?』
『まだあと5時間くらい整備見せてもらっていいですか!?』
『終わらないでフィン様ーーー!!』
『最高の配信をありがとう……っ!』
「みんな、今日も付き合ってくれて本当にありがとうね。……あ、次の配信はちゃんと近々やるから安心してね?今度は何かゲームでもしようと思っているから、是非見に来てほしいかな」
『全員見に行くから平気です!!!』
『絶対にリアタイします!!』
『なんなら1時間前から待機してます!!』
『またフライング整備配信待ってますwww』
『何するのかな!?楽しみすぎる!!』
『フィン様お疲れ様でしたー!!』
『おつふにゃーーー!!』
『最高だったよーーー!!』
「ふふ、ありがとう。それじゃあ、また近いうちにお会いしましょう。お相手は、執事のフィンでした。良い夢を――」
カメラに向かって深々と一礼を捧げ、配信を終了する。
怒涛の情報量と、リスナーの熱気、そして私の相変わらずのマイペースな暴走によって、第5回目の生配信はこうして大盛況のうちに幕を閉じたのであった。




