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ガチャガチャ

作者: 百足丸
掲載日:2026/07/10

小説を最近になって読み始め、活字の世界にどっぷりハマってしまい、私のPCからオススメでこちらのサイトが出てきましたので興味本位で投稿しております。楽しんでいただけますと幸いです。

人生を蛇足で生きていて、気づいたら年齢も40半ばになっていた。


中年にもなると昔の記憶が懐かしく感じ、当時あの頃の子供だった時の記憶は本当に自分の人生だったんだろうかと達観視してしまうほどだ。


すでに子供の頃の記憶は靄のような思い出ばかりだが、あの夜の「無い音」が聞こえた経験は今でも鮮明にハッキリと思い出す事ができる。


実際に経験した、そんな夜の思い出話をしたいと思う。


当時の私は小学3年生~4年生ぐらいで、学校から帰ると14インチのブラウン管テレビを付けて、夕方のアニメに熱中し、観終わったら「ファミリーコンピューター」というドット絵で表現されるゲーム機器で現代の言い方ではレトロゲームに勤しむことが毎日の日課だった。


両親は共働きで帰りも遅く、母親は19時頃の帰宅で父親は22時頃の帰宅の家庭だった。その為、通称「ファミコン」も夜遅くまでプレイできたし、帰宅した母親の手料理はスーパーの惣菜を皿に移し替えただけのものを口に運んで夜ご飯を簡単に済ませ、終わったらゲームの続きをしたり分厚いコミック本を読んだり、スーパーや駄菓子屋にある「ガチャガチャ」で集めたキャラクター消しゴムで遊んだり自分の世界に没頭するような小学生だった。


家は戸建ての一軒家で、普段は2階の自分の部屋で寝るのが当たり前だったが、その夜を迎える前はゲームの進行が楽しすぎて止めるタイミングを見失い、自分の部屋にはテレビもゲームもなく、当時ゲームができる場所は六畳一間の和室で父親が寝るだけの部屋だった。


父親も私が操作しているゲームを見る事が好きで、夜遅くまでプレイしていてもお咎めは無かったが、その夜は父親から注意喚起として「遅くまで起きてるとお化けがでるぞ」と言われ、小学生の私はそれを聞いただけでも背筋に冷たい感覚を感じ、その日だけは父親と一緒に寝ることを懇願した。


和室は玄関から入って右手にあり、入口にはふすまで仕切ることができ、和室入口右手は全て窓になっており、外ガラス窓の手前は障子という造りだった。父親は日々の仕事の疲れからか、すぐに寝息が聞こえたが私に限ってはゲームのやり過ぎでアドレナリンが出ていたせいか、目を瞑っても暗闇が広がるだけで、なかなか眠りに付けない。


やっと眠りに入れた時間は夜0時に近くだったと思う。


ふと目が覚めて、その目覚め方も眠りから覚めたというよりも覚醒して起きたという感じだった。目を開けて、「チッチッ」という目覚まし時計の微かな秒針の音と父親の寝息だけが広がっており、天井を見つめ「起きちゃった」というだけの感想だった。その時の時刻は深夜2時~3時ぐらいだったと思う。


時間が未確認なのは、この後に聞こえる不可解な音から始まる。


ぼーっと天井を眺めて5分くらい経過してからの事だった。寝ている和室近く玄関のドアノブから「ガチャガチャ」と右へ左へ忙しくドアノブを回す異音が聞こえてきた。

その瞬間、緊張が最高潮に達して頭の中で「泥棒!!」と認識した。寝ている頭上の障子を開ければ、窓から外の玄関を確認することができると思い、起き上がる動作を考え、動くことを脳に指令した時には何故か全身が鉄で固定されているかと思うほど動かない。


その状況化の中で焦る私は、口から「泥棒!」「助けて!」「あー!」といった言葉を発しようと試みたが、「あ゛ッ」と小声で他者からも聞き取れないぐらいの擬音を喉からしか発することができない事に気付いた。今、身体で使える可能な場所を探し、分かったのは目だけを動かすことができるようだった。


視覚と聴覚が使える中、私ができる状況は泥棒の音を聞く事だけだ。


ドアノブを回す音はとても激しく、初めて聞いた時の音から何度も何度も「ガチャガチャガチャガチャ」と時折、「ドスッ」とカギが掛かっている状況の中でドアが前後に動かしている音も聞こえてくる。


体感で5分ぐらい経過しただろうか。ふと音が聞こえなくなり安堵してからだった。

自宅には玄関から見て左側に10坪ほどの庭がある、普段は洗濯物を干したり物置が置いてあるスペースで地面には直径30cmほどの川で拾ってきた大きく平たいまばらな石を連なるように配置し母親の趣味で石畳を作っている庭だった。


ドアノブから音が聞こえなくなって数秒後、下駄で石畳を歩いているような音が耳に飛び込んだ。

「カラン、カラン」「ベコンッ!」私は耳から聞こえてくる情報に更に混乱し、下駄を履いている泥棒というイメージはできたが、下駄の音とは別に下駄の音の近くで、もうひとつの歩いている音が聞こえていた。その足音は靴なのか、スニーカーなのかもしくは裸足なのかも分からない音だったが泥棒の人数は2人と認識できた。


私は目だけを動かしながら背中と額は、暑い時に出る汗ではない粘膜質のような汗で濡れて戦慄していた。


理由は先ほどの「ベコンッ!」である。プラスチック性のバケツを蹴った時に出る音のイメージだったが、元々バケツ類などは庭や敷地内のどこにも見当たらないのは長年住んでいたから知っていた。


下駄ではない「ヒタ、ヒタ」と聞こえる足音がバケツを蹴っている。下駄と裸足のような音は庭から遠ざかり、足音が聞こえる方角から馴染み深い私の家の裏口へ廻っていることが分かる。裏手には台所横にアルミ製扉の勝手口がある。そのアルミ製ドアから「ガチャガチャガチャガチャ」とまたしても、今すぐにでも家に入りたいという力で回す音が聞こえてくる。


開かない事が分かると、下駄の足音は玄関へ舞い戻り「ガチャガチャドンッドン!」裏手には裸足の足音で「ガッチャガチャドスドスッ!」この音で恐怖は最高潮に仕上がり、眠りについたというか失神して意識を失ったという方が正しいかもしれない。

眠りから覚めたのは明け方5時過ぎぐらいで台所から「トントントン」と一定のリズムで、聞きなじみある、まな板で食材を切っている朝の音だった。


起きた時には体も言う事を効くようになっており、早朝から朝食を準備してくれている母親の足元へ起きてすぐに走り寄った。家には動かすとガラガラと音が出る門や、草木の塀があるのに急に玄関や勝手口からドアノブを開けようとする音、あるはずの無い物質を蹴るバケツの音を聞いた経験や体が動かない体験をしたなど焦りながら必死に全て説明した。


その全容を全て聞いた母親は振り返る事無く、まな板と包丁を真っすぐ見ながら、


「気を付けないとねー。次からは戸締りしっかりしないとねー」


と間延びした感想を言われ、怖がってもいないしどこか他人事のような感想だった。

母親が寝ていた場所は応接間で玄関と勝手口に一番近い場所で聞こえていたはずだとは思ったが、その乾いた反応と「次からは・・?」と疑問に感じて私は何も言えなくなり、庭にバケツやドアノブ、足跡なども確認しに行ったが何事ない普段通りの家だったのであの音については胸にしまう事が自分自身への防衛策だった。


あれは本当に自分が経験した事なのか、それとも人間なのか、得たいの知れない何かなのか、果たして夢を見ていたのか、小さな頃の記憶は不鮮明になりつつ、誰かに出来事の記録を植え付けられたのかも分からなくなり、記憶に蓋をすることで解決した。


当時のテレビでは「あなたの知らない世界」や巷では「ノストラダムスの大予言」などオカルト心霊ブームで元々、興味はあったが、本当に世の中には不思議な出来事が溢れて知的好奇心がくすぐられる話ばかりに深く興味を持ったのもこれが自分のルーツかもしれません。初めて文体を投稿し、読みづらい部分もあったかと思いますが、ここまでお読みくださり誠ににありがとうございます。感謝です。

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