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常冬の国に春を呼ぶ大聖女~無実の罪で婚約破棄された私が出会ったのは、『絶氷の魔術師』と呼ばれる美丈夫でした~  作者: 夏芽空


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【18話】最悪な再会


 ブロディア邸の庭園で、私はアルシウス様と一緒にお茶を楽しんでいた。

 

 外でゆったりお茶を楽しむなんて、常冬だった頃には考えられなかったことだ。

 でも今は外気温が上がったおかげで、こういった幸せな時間を過ごすことができる。

 

 春が来て、本当に良かったわ。


 ヒヒーン!!

 馬の鳴き声が響いてきたと同時に、入り口の門の前に大きな馬車が止まった。


 テーブルに座っていた私たちは立ち上がり、いっせいにその方向を見る。


「すっごく大きな馬車……。アルシウス様のお客様でしょうか?」

「……どうだろうな」


 アルシウス様の表情が険しくなる。

 なにかよくないものを感じ取ったのかもしれない。

 

 そしてそれは、大正解だった。


 馬車を降り、こちらへ向かってくる数人の兵士たち。

 先頭で率いている人物を見て、私は顔をひきつらせた。

 

「ハテオン王国の第一王子で私の元婚約者――ニコライ様です……!」

「やつがか……!」


 アルシウス様の眼光が鋭くなる。

 青い瞳に映るのは、激しい怒りの炎だ。

 

 しかしニコライ様は、それを気にもかけない。

 私たちと少し距離を置いたところで足を止めるなり、ニヤリと口角を上げた。

 

「やぁエレイン、久しぶりだね。元気だったかい?」

「なんの用ですか……!」

「怖い顔をしてるね。どうやら歓迎されていないみたいだ」

「あなたにされたことを考えれば当然です! 私の息の根を止めに来たのですか……!」

「嫌だなぁ、そんな物騒なことをしに来たんじゃない。お前に話があるんだ」

「私にはありません!」

「そう早まるなよ。少し見ない間にずいぶんとせっかちになったみたいだね」


 両肩をすくめたニコライ様は、わざとらしくため息を吐いてみせた。

 いちいち人の神経を逆なでするこういう部分は、昔からまったく変わっていない。

 

「お前は大聖女じゃない――あれはすべてメアリの作り話。真っ赤な嘘だったんだ。つまりは僕も、お前と同じ。彼女に騙された被害者なのさ」


 ……あぁ、ダメだわ。

 この人がなにを言っているのか、ぜんぜん分からない。

 

 確かにニコライ様も、メアリの嘘に騙された被害者なのかもしれない。

 でも最終的な決断を下したのは、ニコライ様だ。


 私はやっていないと言った。

 それを信じずに国外追放したのは誰か――ニコライ様だ。

 

 それなのにこの人は、自分も私と被害者だと――無罪だと言い張っている。

 

 ふざけないでよ……!

 そんなので納得できるわけないでしょ!!

 

 ニコライ様はすべての罪をメアリに被せ、自分だけは逃げようとしている。

 

 人を馬鹿にしているにもほどがある。

 絶対に許さない。


「ここからが本題さ。お前がいなくなったせいで、ハテオン王国は今大変なことになっていてね。でもお前が戻ってくれば、それだけで全部解決するかもしれない。……もう僕が言いたいことは分かるだろ? 戻ってこいエレイン。大聖女としての責任を果たすんだ。ま、お前の答えなら聞かなくたって分かっているけど――」

「お断りします」

「…………は?」


 ポカンと口を開いたニコライ様は、目を白黒させた。

 唖然としている。

 

 まさか断られるとは思ってもいなかった。

 顔にはそう書いてあった。

 

 そう思うのも無理はないわね。

 

 ハテオン王国にいたときの私は、命令に忠実に従うだけの人形。

 反抗なんてほとんどしてこなかった。

 

 けれど、もう違う。

 私はあの日、決めたのだ。

 

 これからは自分のために生きると。

 

「おいおいおい……お前今、なんて言ったよ?」

「ですから、お断りします。ハテオン王国には戻りません」

「ざっけんな! それでも大聖女か!!」

「もちろん違いますよ。『お前の力は平凡。そう、ただの聖女にしか過ぎない』――私にそう言ったのは、他でもないあなたではないですか。忘れたなんて言わせません」

「このっ、生意気な……! こうなったら力づくでも連れて帰ってやる!!」


 ニコライ様が睨みつけてくる。

 

 でも私は一歩だって引かない。引いちゃいけない。

 ここはきっと、そういう場面だ。

 

 そんな状況の中、


「彼女は答えを出した。今すぐ俺の屋敷から消えろ」


 私の隣にいるアルシウス様が静かに、けれども鋭い声を上げた。

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