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常冬の国に春を呼ぶ大聖女~無実の罪で婚約破棄された私が出会ったのは、『絶氷の魔術師』と呼ばれる美丈夫でした~  作者: 夏芽空


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【12話】リベンジ


 魔力暴走により意識を失ってから、数日後。

 リベンジを果たすために、私はまた枯れた巨木のところへ来ていた。

 

 もちろん、アルシウス様も一緒だ。

 体内の魔力が安定するようにと、すぐ隣で私に魔法をかけてくれている。


「……いきます」


 アルシウス様にそう言ってから、緊張で震えている両手のひらを幹に当てる。

 

 今度こそ絶対に成功させるわ……!

 

 心の中で呟いてから、深呼吸。

 わずかばかりの間を置いてから、魔法を使った。

 

 目がくらむほどの輝かしい金色の光が、広範囲に広がっていく。

 

「ぐっ……っ!!」

 

 体が熱い。

 足に力が入らなくなって、踏ん張りが効かない。体がぐらついていしまう。

 

 前回と同じ――魔力暴走だ。

 

 体内で暴れ回る大量の魔力に翻弄され、コントロールが効かない。

 強大な力にのみ込まれて、今にも倒れそうになる。

 

 なんでよ!

 どうしてできないの!

 

 悔しい。

 自分の未熟さ不甲斐なさが悔しくて、涙が出そうになる。

 

 けれど。

 

「諦めるな! キミならできる! 自分を強く持つんだ!!」

 

 熱の灯った声を上げたアルシウス様が、上から手を重ねてくれた。

 

 一人じゃないという、大きな安心感。

 温かい気持ちが全身に広がっていく。

 

 ……大丈夫。

 私ならできる、絶対にやれるわ!!

 

 アルシウス様の言葉を自分に言い聞かせる。

 

 折れかけていた心に再び火がついた。

 成功する未来だけを頭に思い浮かべ、魔力のコントロールを試みる。

 

 ――そうして、変化が起こる。

 

 むやみやたらと広がっていた光は、みるみるうちに縮小。

 巨木だけを包むような形となった。

 

「おぉ……!」

 

 アルシウス様が感嘆の声を上げる。

 

 役目を失っていたはずの巨木の枝が、緑の葉をつけた。

 そしてそれは、一か所だけではない。全体がそうなっている。

 

「やったわ!!」

 

 ついに私は、やり遂げた。

 体内に宿す大量の魔力をコントロールし、枯れていた巨木の命をよみがえらせることに成功した。

 

「すごい……すごいぞ! 大成功だ! 素晴らしいぞエレイン!!」

「はい! アルシウス様のおかげです!!」


 満面の笑みを浮かべた私は、重ねられているアルシウス様の手を見つめた。

 

「この手です。アルシウス様が手を重ねてくれたおかげで、私は魔力をコントロールすることができました。本当にありがとうございます!」


 私一人ではたぶん、失敗していた。

 体内で荒れ狂う大量の魔力にのまれ、魔力暴走を起こしていただろう。

 

 こうしてうまくいったのは、アルシウス様がいたからこそ。

 あのとき手を重ねてくれたからこそ、この成功がある。

 

 だから私は心をこめてお礼を言った――のだけど、


「す、すまない!!」


 アルシウス様はとっても慌てた様子で、手を離してしまった。

 

「つい勢いでこんなことをしてしまった。……急にこんなことされて、嫌だったよな」

「いいえ。ずっと握っていてほしいくらいです」


 本心を口にすると、

 

「そ、そうか」

 

 恥ずかしそうにアルシウス様はうつむいてしまった。

 かと思えば今度は、

 

「おおっ!」


 興奮気味に声を上げた。

 

 感情の起伏が激しい。

 あまり感情を表に出さないアルシウス様のこんな姿は、とってもレアな気がするわね。

 

「根元を見てみろ!!」


 巨木の根元には、先ほどまでなかった草の芽が生えていた。

 他にも、キノコが生えているのも確認できる。


「これも私の魔法の影響なのでしょうか?」

「詳しいことは調べてみないと分からないが、おそらくはそうだろう。これはものすごいことだぞ……! 大進歩だ!」


 アルシウス様の口ぶりからしてなにかすごいことが起きているんだろうけど、私にはいまいち実感がない。

 

 でも、いいかな。

 

 今のアルシウス様はハイテンションで、とっても楽しそう。

 小さな子どもみたいだ。

 

 それを見られただけでも私としては満足。

 だったらもう、細かいことはあんまり気にしない。

読んでいただきありがとうございます!


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