【10話】衝撃の事実
……なによ、それ。
小さい頃から肌身離さずつけていたものは、実は良くない効果を持つ魔道具だった。
いきなりそんなことを言われたって、すぐに受け止めることなんてできるはずがない。
けれどアルシウス様は、いたって真剣だ。
冗談や嘘を言っているとは、とても思えなかった。
「でもどうして神殿は、そのような恐ろしい魔道具を私に……」
「おそらくだが、権力者たちは大聖女の力を恐れていたのだと思う。もしキミが体制側に反旗を翻しても対処できるよう、あらかじめ力を削いでおいたんだ。大聖女の証、などともっともらしい嘘をつき、キミに悟られないようにしてな」
「……そんな! それでは私は、ずっと信用されていなかったということですか!?」
ひどい……!
ひどすぎるわよ!!
私は幼い頃からずっと、大聖女としての役目を果たしてきた。
辛いことも苦しいことも泣いてしまった夜もいくつもあったけど、それでも必死に耐えて頑張ってきた。
それらはすべて、ハテオン王国のためだ。
でも王国は私のことを、最初から信じていなかった。
飼いならすために、常にバンクルと言う名の首輪をつけていたのだ。
怒り、悔しさ、悲しさ。
あらゆる感情が溢れて止まらない。
大粒の涙がこぼれ落ちていく。
過去一番に、最低で最悪な気分だ。
なにもかもめちゃくちゃに壊してしまいたくなる。
でもそんな私にもたったひとつだけ、救いがあった。
「ゲスな連中だ。反吐が出る」
アルシウス様が、私のためにこうして本気で怒ってくれる。
それが嬉しい。
おかげで私は、自暴自棄になる一歩手前で止まることができた。
私の味方と言ってくれたこの人のために頑張りたいと、素直にそう思うことができる。
「もう一度やります」
バンクルを外した私は巨木に両手をかざし、再び魔法を使う。
これまでとは比べ物にならないくらいの輝かしい光が、広範囲に広がっていく。
体の感覚も、いつもとはまるで違っていた。
全身が燃えるように熱い。高熱にうなされている時のようだ。
「これが魔道具による影響を受けていない、キミ本来の力だ」
「すごい……! ぜんぜん違います――え、あれ?」
ガクン。
片方の足に、急に力が入らなくなった。
バランスが崩れてしまい、体がぐらついてしまう。
こんなこと今までなかったのに……。
とにかく体を戻さなきゃ。
しかし体勢を戻そうとしたら、今度は目の前が暗くなってしまった。
そして、倒れてしまう。
なにが起こったのかまったく分からないまま、私は意識を失った。




