歯医者に行きたいだけなのに
ある日、目が覚めると歯が痛かった。
早速、歯医者さんに予約を入れることにした。
「もしもし、歯が痛いので、今日中に診てもらいたいんですけど」
すると、受付と思われる女性の声がした。
『申し訳ありません。あいにく予約でいっぱいでして』
「凄く痛いんです。どうしても今日中に診てもらいたいんですけど」
『少々、お持ちください』
何分か待った。先生とかなり交渉してくれているらしい。
しばらくして、また女性の声が戻ってきた。
『お待たせして申し訳ありませんでした。すいません、やはり無理とのことです。今日は大きな手術をする患者さんがおられまして、そちらで手がいっぱいなんです』
「痛いんです。どうしても無理ですか」
『本当にすいません。かなり大きな手術なんで、そちらの患者さんが大変なんで、とても余裕がなくて無理なんです』
かなり大きな手術らしい。
仕方なく、翌日の朝一に診てもらうことになった。
その日の夕方、妹がいつものように帰ってきた。
「ただいまー」
「おかえりー」
「ちょっと聞いてー。もう、さいてー。今日、歯医者さんでめっちゃ大きい手術してん」
お前やったんかい。
読んでくださって、ありがとうございました。
ノンフィクションです。
この話をすると、妹が「よその患者に個人情報を漏らすなんて、ひどない?」と言うので、「名前を出してないからひどないよ」とちゃんと注意しておきました。