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最後の1日は

作者: ry

大人のカードの使い過ぎで寿命が後少しになってしまった先生とノアのお話

静かなシャーレのオフィス、その静寂は「ガチャ」という音で掻き消された

ノア「先生、急に私に会いたいなんてどうかなされたんですか?」

私はさっきモモトークでノアに「来てほしい」と送ったのだが、まさかこんな早くに来てくれるとは思いもしなかった

私「あぁ、ごめんねノア、こんな時間に呼び出して」

今は既に深夜の2時を上回っていた、こんな夜中に呼び出したのには訳がある

(数時間前)

セリナ「先生の体調が少し優れないと言う事で来られた訳ですが…診断の結果、非常に言いにくい事なのですが……先生の容態はかなり酷く……持って5時間と言った所です…」

なんとなく察しは付いていた、最近はいつにもまして様々な用途で大人のカードを酷使していた代償が来たのだろう

それにしてもこれじゃあ皆に顔が立たないな…仕事もまだ終わっていないし生徒との約束もまだ果たせていない……

私「数日だけでも時間を延ばせたりしないかな」

セリナ「もし1日でも早く来ていただければまだ対処は可能だったのですが…残念ながら…」

私「そっか…ありがとうセリナ」

セリナ「お気に為さらず……先生…お疲れ様でした」

私はセリナの顔を見なかった…いや見れなかった、何故なら「 あまりにも酷すぎる」 と言わんばかりにセリナの顔が絶望の一色に染まっていたからだ

私はそんなセリナに何の言葉もかけられずに扉を開けて、セリナを背にシャーレのオフィスに戻った

私はオフィスに戻ってから考えた、一番私が隣で死んでも迷惑にならない人は誰だろう…と、考えながら私はスマホのモモトークを見ていた

自分1人で死ぬと言う事も考えたが私の死体を最初に見つけた生徒が可哀想だと思ったからだ、それにそんな責任放棄に死ぬなんて許され無い事だと思ったし、何より寂しかったから…いやこれが本音だったのかもしれない…そんな事を考えながらふと目が止まった

私「ノア…」

思えば色んな時に助けてもらったな、それにノアなら……そう思ってノアに連絡したのだ

(現在)

私「ごめんねノア、こんな時間に呼び出したりして」

ノア「別に構いませんよ、それより先生ちゃんと寝てますか?」

私「ね、寝てるよ」

ノア「寝てるなら良いですけどそれで死なれたりしたら困りますからね?先生?」

私「あ、それに関してなんだけど…」

私は事の顛末を話した

ノア「なるほど、だから私を……」

私「ごめんよ、迷惑だったよね」

ノア「そんな事無いですよ?私を信頼しての事でしょうから」

やっぱりノアは優しいなと率直にそう思った、そしてノアを選んで良かったと感じた

ノア「それで最期は何かなさるんですか?」

私「あ」

そう、何を隠そう私はノアを呼び出したは良いもののその後何をするのか考えるのを忘れていたのだ

ノア「先生は相変わらずですね」

ノアは少し意地悪そうな笑顔を浮かべて私を見ていた

ノア「ん〜…最期にするのもあれですが耳掻きでもしますか?」

私「いいの?ノア」

ノア「勿論です」

ノアからしたらただのちょっとした提案だったのかもしれないが、普段耳掻きをする暇なんて無いから久しぶりの耳掻きに私は密かに心を躍らせていた

ノア「じゃあここに頭置いてください」

私はノアに言われるままノアの膝枕に頭を置いた

久しぶりの膝枕、久しぶりの耳掻き、

膝はまるで雲のように心地よく、耳掻きも気持ちいい

ノアからはいい匂いがして、気持ちが落ち着いて凄く眠たくなる

私はこの瞬間にこれ以上無い幸せを感じていた

ノア「気持ちいいですか?痛かったら言ってくださいね」

私「ありがとうノア」

私の目は閉じかけていた、あまりにも心地良かったからだ、睡眠不足や残り時間が少ないのもあるのだろう

ノア「もう眠っちゃいそうですか?」

私は返事する事すら出来ず、小さく頷いた

ノア「じゃあ眠っちゃっても大丈夫ですよ、先生」 

その言葉を最期に私は目を閉じた、「目、綺麗だったな」と考えながら

ノア「おやすみなさい……先生…」

(ノア視点)

私は目に涙を浮かべていた、先生の前では泣いていなかっただろうか、少し心配になるがすぐにその心配は払拭された

何故なら私の膝にはまるで安らかに眠る子供のような顔をした先生が居たからだ

私「先生…………もっと一緒に居たかった…………」

私は泣きながら先生の頭を撫でていた、ただひたすらに頭を撫でていた、これが先生を癒やす為だったのか、はたまた私自身が気持ちを落ち着かせる為だったのか定かではない

私「先生……大好きです…」

私は静寂に包まれたオフィスの中で先生の顔にキスをした

ノアはこれからも先生を忘れないだろうね

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