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魔術会社サークルのオカルト怪奇譚  作者: 人鳥迂回
深く混じって"愛"対して

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更新はお忘れなくep4

 今僕たちがいる所は地下鉄へと向かうエレベーター。

 西和瀬田駅にしわせだ。ここは地下鉄へと向かう駅なのだが地下鉄に用事があるわけではない。用があるのはこのエレベーターだ。


「ほう。お前たちはここから入るのか」


「ここだけじゃないけどね。入る場所は沢山あるけど比較的近いからここを使っているだけ」


 魔術管理局への入り口は複数個ある。僕も全部を把握しているわけではないが、利用する場所は魔術師ごと大体決まっている。市井の人にバレないよう毎回違う入り口を使う人もいるが、面倒事を嫌う魔術師は最低限のカモフラージュだけをすることが多い。


「ここの難点は使う人がまあまあいるから人がいないタイミングを図らなきゃならないことかな」


「この場所だし人がいなくなる事あるのか?」


 備え付けられている大きな時計で時刻を確認する。今の時間が14時半を過ぎたところ。学生も社会人もそれぞれの活動に勤しんでいるため、地下鉄へ向かうエレベーターには空きができる。


「この時間帯はね。そうじゃなくても数時間に1回だけ"ズレ"を引き起こしてるんだよ」


「ズレっていうと裏世界と現世界のズレってことか?」


「そうだよ。魔術管理局は裏世界にあるっちゃあるじゃん?」


 現世界から直接行けるが、魔術管理局があるのは裏世界だ。厳密には魔術管理局が作り出している裏世界なのだが、表裏一体として存在している裏世界に施設を作り上げたのが魔術管理局だ。


「そこへ向かうエレベーターのために、裏世界へ繋がるエレベーターにする方法があるのさ」


 エレベーターに乗る人をつぶさに観察している2人。隣にゲティがいればエレベーターを見つめている異常者にはならないだろう。こういう点で見た目が幼い人が近くにいるとカモフラージュとして有用である。本人には言えない。


「丁度、無人になったな。これに乗るのか?」


「うん」


 エレベーターの前で待っているのが僕たちだけになった。周りには此方を見向きもせず通り過ぎる人達ばかりである。僕たちのいる空間だけが、この世界から浮き出て、それを一般の人達が避けるように動いていく。

 チンッという音と共に、僕たちを迎え入れるようにエレベーターの開かれた。特に気にすることもなく僕たちはエレベーターに乗り込む。一緒に乗り込んでくる人はおらず、世界から切り離されるように扉が閉まった。


「これは、あれか。現世界の人達が無意識に避けてしまうような魔術が使われているな。何となくという言葉で片付けられるほどの無意識下に作用する魔術だ」


「正解。その御蔭でこのエレベーターの存在を見えているのに忘れているという状態に近くなるらしいよ。詳しいことは知らないけどね」


「魔術の種類もわからんな」


「掃除のおばちゃんとかが掛けてるらしいけど」


「それが本当なら世も末だろ」


 清掃職員に扮した魔術師がチェックしていると言う話を聞いたことがある。扮する以上、ちゃんと職務を全うしているらしいが一般市民に紛れて活動をする魔術師のため誰が魔術師か魔力で判断するしか無い。それをする理由もないので敢えて追求をしたことはなかった。


「それで乗ったは良いがどうするんだ?今居る階層と改札階、地下鉄の階層しか無いが」


 エレベーターには地上階と書かれたボタンと改札階と書かれたボタンしか無かった。この駅に存在する別のエレベーターにはこれ以外のボタンが存在するが、何故かこちら側からしか入れないらしい。


「このボタンが魔術の起動式になってる」


 僕は徐ろに階層のボタンを押す。魔力を身体に通してから上のボタンを6回、下のボタンを6回、上のボタンを6回、等間隔で押していく。魔力に反応したのか、ボタンを押した直後にはエレベーターは動かない。

 最後に開くというボタンを押すことでエレベーターは自分の役割を思い出したかのように起動した。


「なんだそりゃ」


「面白いよね。秘密箱みたいな仕掛け。特定の手順を踏まなきゃ」


 秘密箱とは箱根の方で職人によって作られている木の箱だ。寄せ木細工で作られており、特定の手順を踏まないと箱があかない仕組みになっている。その手順は様々で、箱を決められた回数動かしたり、引き出しのようになっている木の板を出したり戻したりと複雑な工程を踏まなければならない。

 都市伝説でもリンフォンという地獄の門が開くと言われるパズルがあるらしい。それも特定の場所を推したり引いたりすることで形が変わっていき、徐々に完成していくらしい。極小サイズの地獄と言われているが、ガムテープでぐるぐる巻きにして捨ててしまえば何も起こらなくなるという都市伝説に出てくる魔道具にしてはあとを引かない物として有名なようだ。


「これは何処に向かうんだ?結局どの階層に向かうでもなく動き出したが」


「今日のゲティは質問が多いね」


「私だって魔術師の端くれだ。気になることがあれば探求したくもなる」


 分からないことが恐怖となる。だからこそ気になることは理解したい。それが魔術師だ。


「ま、もうそろそろ止まると思うよ」


 僕の発言から間もなくしてエレベーターはチンッと音を立ててから止まり、僕たちを追い出そうと言わんばかりに扉が開いた。目の前に広がるのは真っ暗な空間。ライトなども取り付けられていないため、先が見えなくなっている。僕が先に降りるとゲティはその後を付いてくる。


「ここは通過階って言われていてね。一般の人は立ち入ることがない階層なんだ」


「ずいぶんとお誂え向きだな。通過階ってことは外から見えるんだろ?」


「一応職員とかが点検などをするために作られた場所らしいけどね。一般人が入ってこないのならそこを利用するしか無いでしょ」


 この西和瀬田駅には通過階というものが存在している。僕たちが乗ってきたエレベーターとは別の物に乗ると、止まることがない通過階のボタンがある。押しても何も起こらないが、特定の手順を踏むことで止まるようになる。

 一般の人が入ることが出来ない空間に、魔術を使った仕掛けを施すことで裏世界への道としているのだ。


「因みに今日って何のぬいぐるみ持ってきてるの?」


 ゲティが背負っているのは少し大きめのリュック。僕たちからしたら小さいのだが、小柄なゲティが持つと大きく見える。ゲティが使う魔術の媒介となるのがぬいぐるみだ。魔術管理局に向かうため何かしらの準備はしているのだろう。


「今日持ってきたのはヘビのぬいぐるみだな。攻撃的な悪魔を持ってきたほうが良いと思って」


「ヘビって言うと?」


「アイムだな。26の軍団を指揮する序列23番目の地獄の大公爵」


 悪魔の種類には詳しくないがゲティが使役している悪魔の中でも攻撃性能が高いことは分かる。前にストレス発散場にあった心霊写真を燃やしたフラウロスでさえ攻撃的に思えていたのだが別の種類を持ってきたということはそれ以上なのかもしれない。


「フラウロスじゃないんだね」


「あいつは連れて歩くには向いていない。魔法陣がないと歯向かってくるからな。それに対してアイムは賢い悪魔だ。攻撃性能は高いが人々を賢くする悪魔だ」


 人を賢くする悪魔というのは多々存在している。悪魔とは代償を差し出して契約をすることで恩恵を受ける存在。悪魔が害を及ぼすことと、契約をして利益をもたらすことが同時に起こり得る。

 古の賢人たちがこぞって悪魔と契約を図り失敗した話も、自分が相手よりも優位に立ちたいという傲慢の表れなのだ。


「なんだよ。じっと見て」


「人を賢くする悪魔、ねえ」


 ゲティは僕から見ても賢い。僕が見えない視点から物事を分析することができるし、持っている知識量も多い。亀の甲より年の功とはよく言ったものだ。魔術師の数年は経験する異常の多さにもよるが埋められない年月がある。


「バカにしてんのか?」


「そんなことはないよ。先に進もうか」


「何考えてるか分からないが口に出したら殺すぞ」


 知識は年月では埋められないがその分、発育は止まってしまったらしい。多分成長に関係する悪魔とは契約できなかったのだろう。


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