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魔術会社サークルのオカルト怪奇譚  作者: 人鳥迂回
深く混じって"愛"対して

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82/128

更新はお忘れなくep1

 なんでも屋サークル。そういう名前の事務所を構えているが実際に舞い込むのは現世で生きるものとは程遠い世界での依頼が多い。

 例えば魔術。例えば妖怪。最近では都市伝説などの依頼も解決することがある。超常的なものに対して、こちらも超常的な物を持って解決するなんでも屋。

 表向きはなんでも屋サークルを名乗っているが業界では魔術会社サークルと呼ばれている。


 この事務所には複数の魔術師が在籍している。

 まずは僕。この事務所の社長である僕はルーン魔術を使う。元々は自分の運命を導くための魔術だったのだが、今では魔力があるものに対して運命を導けるように進化している。僕たちが住んでいる街は大きな龍脈の上に成り立っており、神聖な力が湧き出ていることから魔術の形質が変化したものと思われる。


 2人目の社員はゲティ。本名は呼ばないでほしいと言われているため割愛。見た目は中学生ほどの金髪童女だが僕よりも年上である。今風に言うのならロリババアとなるが口に出したが最後、朝日を拝むことは出来なくなるだろう。

 そんな彼女が使う魔術は召喚魔術。正しくは喚起魔術らしいが割愛。レメゲトンという悪魔の書に書かれているソロモン72柱を召喚できるらしいが全てと契約しているわけではないらしい。悪魔との契約はそれ相応の対価が必要なようで簡単ではないようだ。


 3人目の社員は魔術師ではない伏草調。調さんは魔術師ではないがこの会社に在籍している。知識量は現場に赴く僕たちよりも多く、アドバイスを求めることが多い。それと技術職としての側面もあり、電子機器の調整や後に紹介する社員のメンテナンスも行っていた。

 普段は何をしているのかよく分からないがプライベートなことには触れないことにしている。


 4人目は魔術師と言うには語弊があるが呪物師である酸塊八重。彼女は呪いを身体に溜め込んでしまう体質から普通の生活を送ることが出来なかった。自分を導く僕のルーン魔術と相性が良かったため、僕が酸塊さんを引き取った形になる。人が触れることで他人に呪いが影響してしまうため、常に肌を出さない格好をしている。

 数年前、呪いの強さを見誤った結果、死ぬ程の呪いを受けてしまい、命を守るために両足にその呪いを封じ込めて切断した。現在は義足で生活している。


 5人目と6人目は同時に紹介する。鏑木空穂ちゃんと来栖愛美さんだ。2人とも女子高生でうちの事務所でバイトをしてもらっている。

 空穂ちゃんは殺人事件の被害者で幽霊になっているところを僕が拾ってアルバイトにした。現在はただの幽霊ではなく来栖さんの守護霊になっているようだ。

 来栖さんは魔術師とはまた違う特殊な能力の持ち主になってしまった女の子。元々は普通の女子高生だったのだが、ひょんなことから神の目を左目に宿してしまった。その目は八咫烏の目で誰かを導く神聖な力を持っている。普段は僕のルーン魔術をかけた眼帯で力を抑えているが神の力を抑えきれるはずもなく、少しだけ導きの力が使えているようだ。


 7人目?7匹目?よく分からないが最近加わったのがフクロウのぬいぐるみのフーちゃん。空穂ちゃんの部屋にあった呪いの人形。それを回収してきて僕とゲティの魔術によって生命を吹き込んだ。

 元々空穂ちゃんを守るという呪いを掛けられていたので、今でも第一に空穂ちゃんを守ることを優先しており、来栖さんを守る空穂ちゃんを守るフーちゃんという図が出来上がっている。来栖さんはいつもリュックにフーちゃんを入れて持ち運んでいるらしい。


 社員の説明はこんなものだろう。

 社長である僕を筆頭に、依頼に対して適切な対応をすることが出来る魔術師を派遣している。それぞれの専門家のようなものなのでイレギュラーが起こった場合は相談をすることもあり、依頼の成功率は高いといえるだろう。


 今、僕が陥っている問題に比べれば依頼の達成率など些細な問題だ。

 魔術師として活動するためには秘密裏に作り上げられている魔術管理局という場所が発行している魔術師資格証明書というマイナンバーカードのようなものを所有している必要がある。これがない場合、問題を起こしたときに完全な自己責任となり損害賠償などがとんでもないこととなる。組織の管轄に入ることにより、動きの制限はされるがデメリットに対して大きなメリットが存在するため魔術師は基本的に加入している。

 勿論、有効期限があり更新をする必要がある。車の免許証と同じだ。


 更新を忘れていた。その一言に過ぎる。期限切れの状態で魔術を行使することは無免許で運転をするようなもの。法律ではなく魔術管理局からの罰則を受けてしまう。そうなってしまえば会社を運営するどころの話ではなくなってしまうため早急に魔術資格証の更新を行わなければならない。


 目の前で僕よりも身長が低いのに、鬼のような形相で僕を見下ろすゲティからの無言の圧を受けながらそんな事を考えていた。数日間はバレなかったのに僕の様子を察してゲティに詰められた。圧に負けてあっさりと吐いてしまった結果、僕は正座をしてゲティからのお小言を頂戴している。天を見るより明らかな程、僕が悪いため自分から足を折って正座の体制に入った。そろそろ足がしびれてきたので解放してほしいのだが、ゲティからの説教はまだまだ続きそうだ。


「お前はこの社会で魔術資格証無しで魔術を履行することの危険性が分かっていないのか?単純に今後、魔術師として活動することが出来なくなるんだぞ。一応会社の社長としてだな――」


「ゲティ、その話4回目だよ」


「何度も言わせるほうが悪い。それだけ言ってもお前は理解しているか怪しいだろうが」


 女子高生2人の前で社長が正座をさせられて怒られている姿など威厳も何もありはしない。来栖さんは何度かこちらを心配そうに見てくるが、空穂ちゃんに関しては完全に興味を失ってしまったらしく酸塊さんとお喋りをしている。

 僕のことを大好きなはずの酸塊さんですら否は完全に僕にあると判断して助け舟は出してくれなさそうだ。僕の事を好きと言ってくれて入るけれど全肯定では無くなってしまった。昔を知っていると成長は嬉しいが今は一刻も早く助けてほしい。


「なあ、ゲティ。そろそろそいつ解放してやれよ」


「調。お前はコイツに甘すぎる」


「甘いとかじゃなくてさ、急いだほうが良いんだろ?怒るのはいつでも出来るが更新はすぐにしたほうが良い。明日にでも行かせるほうが先決じゃねーの?」


 一番期待していなかった調さんからの助け舟に感激してしまった。この事務所に唯一存在している僕以外の男性社員。やはり持つべきは同性の友だ。

 ゲティも大きなため息を吐いてから、僕を睨みつけると「とりあえず立て」と命令してくる。曲がりにも僕が社長なのにと思いながら立ち上がろうとするも足がしびれており、立ち上がることも出来ずに転倒してしまった。土下座のような大勢になり情けなくて涙が出てくる。女子高生2人もそうだけど、こんな姿を舞さんや妹弟子にも見られたくはない。


「土下座はもういい」


「足が痺れて立てないんだよ」


「それじゃそのままの体勢で話を聞け」


 誰も手を貸してはくれない。


「明日だ」


「明日?」


「明日魔術管理局に行って魔術資格証の更新をしに行くぞ。お前のことは信用ならないから私も付いていく」


「1人で行けるけど?」


「1人では更新を忘れるような奴を信用なんで出来ないからな」


 自分の落ち度だったとしても掘り返されて指摘されるのはいい気分ではない。反論しようにもこの場に僕の味方は1人もおらず、逆にゲティに言い包められそうな人達しか居ないので争うだけ無駄だ。唯一の味方だった調さんも言いたいことは言ってスッキリしたのか僕の方へは一瞥もくれない。


「それじゃよろしくお願いします……」


「忘れるなよ」


 資格証更新を忘れてしまった僕は全く信用されていなかった。

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