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魔術会社サークルのオカルト怪奇譚  作者: 人鳥迂回
神と少女と魔術師と

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親しき中にも呪いありep1

 私はゲティ。みんなからはそう呼ばれているし、私がそう呼ばせている。名前なんてただの相手を指すものだが、名前には契約に必要な意味を持つ。名は体を表すのだ。人が生まれてから死ぬまで残り続ける、親から受けた祝福であり呪い。それが名前だ。


 私はこの名のもとに悪魔たちと契約をしている。私の契約のルールはゴエティアに書かれている悪魔以外とは契約をしないというもの。当然だがゴエティアに書かれている悪魔すべてと契約しているわけではない。相手は悪魔だ。契約には代償がいる。死んだ後の魂であったり、身体の成長であったり様々だ。72体もの悪魔、すべてと契約したら私は確実に死んでしまう。


 そもそもゴエティアとは72体の悪魔を記した魔導書である。この悪魔はソロモンの霊とも言われ、日本ではソロモンの72柱等と呼ばれることが多い。


 その悪魔たちと契約をし、私は日々依頼を解決しているのだ。一応、変な会社に所属しているが本業は占い師。今日も占い師としての業務を始めるとする。私自身は恋愛等に興味はないが、うら若き女子たちには恋愛が生きる活力の源になっているものも多い。そのような女子を占い、結果を伝えることで私は生活しているのだ。



「いらっしゃい」


 営業時間ギリギリに入店してきたのは女子高生。髪にアイロンをかけて薄くメイクもしている。今どきのかわいい女の子という感じだ。

 うちの会社にも女子高生が二人、いや正確には一人は女子高生で一人は幽霊がいる。その二人とも雰囲気が違いギャルっぽい客が来た。


「私は新田由美といいます。高校二年です。恋愛相談なんですけど、いいですか」


「いいぞ」


 自己紹介をされても覚えられないので無駄だが律儀にしてくれる。女子高生の悩み相談として一番多い恋愛相談。人それぞれだと思うが占いに来ることと言えば『好きな人と上手くいくか占って欲しい』か『好きな人に想い人がいるか占って欲しい』の大体二つに分けることが出来る。

 占うより自分で聞け、と思わなくもないが仕事なのでちゃんと占う。

 今日も私は机の上にワニのぬいぐるみを置いて、それを媒体にして『ウァサゴ』を召喚する。


『また恋愛相談ですね』


 今風に言うと恋バナ大好き悪魔だ。女性の愛を導く悪魔として一部で知られているがれっきとした悪魔である。愛や恋は人間の抑えの効かない情欲の一つであり、それにより人生が変化すると言っても過言ではない。そのような人の変化を見て楽しんでいるのがこの悪魔だ。そのためには努力を惜しまないという人間から見れば善の悪魔とも言える。


「私好きな人がいるんです。でもその人には好きな人が居て、それは私の友達なんです」


 これもよくある話だ。友達も大事。どうすればいいですかという質問。それは占いとかではなく自分の決断を相手に委ねる行為だ。相性などは占えるが行動を左右する占いは良い方向か悪い方向かを伝えることしかできない。


「それで私も数日前から色々とやってるんです。それで、えっと」


 時計を見ると営業時間が終わりそうだ。正直恋愛相談は面倒くさい。占いだって言っているのに自分の言いたいことだけを言って満足して帰っていく客も多い。ニコニコしながら、内心では飽き飽きしていた。


「どうやったら友達から奪えますか?」


「は?」


「だから、どうやったら好きな人を友達から奪えますか?友達やめてもいいので」


 こいつはヤバい。よく見たら目も座っている。好きな人を奪うために友達関係を崩壊させてまで何かをしたいと考えている女。ヤンデレのような雰囲気を感じる。

 見るからに高校生。そんな事をしたら女子のグループで悪評が立ち、仮に想い人と上手く言ったとしても学校生活はまともに送れなくなるだろう。想い人も高校生であり、周りの評価を気にする。絶対上手くいくわけがない。


『面白い女性だ。自分の愛のために友達を売る。ああ、なんて素晴らしい』


「流石に友達は大事にしたほうがいい」


「そうですか」


 占うまでもなく、私は一般論を伝える。それに対する反応は何も感情が籠もっていない声色だった。一応、占うという体でウァサゴとコンタクトをとる。


「(この女、一体どうしたらいい?諦めるように言うべきか、肯定するべきか)」


『この女性。誰かを呪っていますよ。恐らく想い人の想い人である女性のことを』


「は?マジで?」


「どうかされたんですか?」


 ウァサゴからの声に驚き、つい口から声が出てしまった。


「あ、すまん。占いの結果が予想外のものでな」


 流石に呪っているというのは予想外だった。呪いとは悪意を持って相手に不幸が降りかかることを願うことだ。可愛らしい顔をしていて内面はどす黒い女だ。


「話しながら結果を伝える。まずその友達のことは大切か?」


「当たり前です。高校に入ってから初めての友達でずっと仲良くて」


『これ嘘です。死んでほしいと思ってますよ』


 怖すぎるぞこの女。なにが『ずっと仲良くて』だ。内心では死んでほしいと思っているほどの憎悪に満ちているというのに。


「次の質問。人を呪ってやろうとか思うことはあるか?」


「呪いですか?なんか怖いですね……。人を呪わば穴2つともいいますし、そういうのは思ったことないですね」


『これも嘘ですよ。思ったことないどころか、今現在やっています』


 平然と嘘を付く。占い師相手に嘘を付いてもどうにもならないと言うことを分かっていないのだろうか。

 私にはウァサゴとの会話ですべてわかっているが、そもそも嘘というものがよくない。嘘とはそれをつくたびに自分以外の人間にとっては真実になっていく。その真実は信用ともいえ、その真実が崩壊した時、信用も共に崩壊する。


 それが分かっているからこそ『嘘はつかないけど本当の事も言わない』なんて言うバカがうちの会社の社長をやっている。今は出張に行っているため会うこともないが、飄々とした顔を思い出すとイライラしてくる。


「そうか、占いでは『今のままでは不幸が起こる。別の手段を取るべき』と出ている。信じるか信じないかはそちらの勝手だが少し考えてみてほしい」


 遠回しにだが今やっていることをやめろと伝える。呪いっていうのが何か分からないが、素人がやっていいものではないだろう。うちの社員に詳しい人がいるが連絡がつかない。そいつとこの客なら話が合いそうな気がしないでもない。


「分かりました。ありがとうございました」


 本日最後の客はそう言って店から出ていった。最後まで女の心が分からなかった。占いをすると、こちらの質問への回答から分かることがある。答える内容ではなく、言い淀む時やスラスラ話す時等、話し方がその人の心情を示す。


 嘘を言う時は一瞬だが身体が強張ったり、顔の筋肉が動いたりする。声のトーンが変化することもある。しかし今の客は日常会話のように嘘をついていた。それが何よりも怖かったのだ。


「今の客、結構ヤバイ奴だよな。参ったな……」


『そうですか?愛とは人を狂わせるのです。狂った人間としては正常ですよ。懐かしさも覚えます』


「狂ってんじゃねーか」


 ウァサゴと軽口を叩きながら閉店準備をする。最後に来た客は引っかかったが、概ねいつも通りの営業が終わった。

 私は入り口に施錠をしにいく。金品などは置いてないが、この店の奥には私の魔術の道具がある。それを持ち出されたとしても私の魔力がないと何もできないが、私が困るのだ。


 私の魔術は分類上、喚起魔術に分類される。喚起魔術は読んで字のごとく、媒体を使い別の世界から何かをこちらの世界へ呼び寄せるものだ。私は私の身体とその媒体――ぬいぐるみの両方に魔術式を掘っている。私がその二つの魔術式に魔力を通すことで召喚を行っている。分かりやすく言うと糸電話のようなものだろう。魔法陣がコップ、糸が私の魔力だ。他の人に伝わりにくいので召喚魔術と言っているが少し違うものである。


「んじゃ閉めるぞ」


 入り口の扉を一回開けて、外に出してある看板を回収する。外に出ると先程の女子高生が誰かと話していた。少し気になった私は扉から外に出て聞き耳を立てる。


「こんなところでどうしたの?」


「占い受けてたの」


「そうなんだ。私は帰り道ー。ここって恋愛相談のとこ?由美ちゃん好きな人出来たの?誰誰?」


「内緒ー。うまくいったら一番最初に教えるね!香織は私の親友だもん」


「約束だよ」


 話を聞くに、先程言っていた友達ってこの相手のことだろうか。ずいぶん仲良さそうに喋っている。しかも死んでほしいとまで思っている相手に親友とか言っている。本当のことが分かっている私からしたらただの嘘つきにしか見えない。


 一応恨まれている相手の事も確認する。


「っ。なんだよあれ……」


 驚いた拍子に大きな声が出そうだったのを必死に抑える。私はまだウァサゴを裏世界に帰していないため、裏世界との繋がりがある状態だった。それが幸いしたのか、その逆か。相談に来た由美と呼ばれる女の友達をみてしまった。


 そこには。


 両手足に大きな釘が刺さっていた。



――――――――――――――――――――――

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 作者です。読んでいただきありがとうございました。

 次の話もお楽しみに!

 

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