↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔術会社のオカルト怪奇譚  作者: 人鳥迂回
魔術師が依頼受け付けます

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/208

強い言葉ep1

「さて、依頼を達成しにいこうかな」


 『祖父の遺した物が何かわからない。それを探してほしい』という依頼を受け、朝早くから空き地へ向かう僕。

 依頼人から指定された場所は人が来ないような場所。草木が生い茂り、先が見えにくい場所。街から少し離れた場所にあるここはとある魔術師が住んでいたとされる邸宅。外見だけ見ると、子供たちが肝試しなどで使う廃虚のようなものにしか見えない。廃虚探索YouTuberなどには格好の的になりそうな建物だ。

 しかし、ここには人の出入りがあったよな形跡はない。それもそのはず。建物自体に魔術がかけられており、魔力の持たない人の侵入を防いでいる。魔力のない人間にはこの場所は認識すらできないだろう。生い茂る草。辺りには木の葉の擦れる音や小川のせせらぎの音などが聞こえてくる。自然に囲まれた場所で建物を守るような魔術。


「精霊魔術かな」


 日本には八百万の神がいるとされているがそれよりも多いのが精霊である。精霊は万物の根源に宿るものであり、生物、無生物問わず存在している。海外の精霊と言われると火、水、風、土の四大精霊が有名だろう。サラマンダーやウンディーネ、シルフにノーム。昨今の創作物では擬人化されていたりするがこれも元素に宿った精霊である。

 周辺にある自然に守られてこの屋敷は今もなお魔術として機能しているのだ。


「よし、早速取り掛かろう」


 僕は持ってきたバックからルーンの刻まれた石を取り出す。それを持ち、屋敷の周辺を回りながら一つづつ置いていく。屋敷を正面とし、一周回り円形に石を置いてきた。

 今回使うのは『ᛟ (オサラ)』のルーン文字が刻まれたもの。この文字には遺産、世襲などの意味がある。このルーン文字で建物を囲うことによって、その場所にある依頼者の祖父が遺した物を見つける。依頼者に連絡をして、実際にあって依頼のすり合わせをした。その時に本人から髪を数本貰い、それを石に結びつけている。そうすることにより、誰の血統の遺産を見つけるかを明確にすることができる。


「準備完了。魔力を流そう」


 ルーンの石へ魔力を流す。魔力は一つ一つと石を通してつながっていき、建物の回りを囲んでいた石全体に魔力が行き渡った。その状態で待つこと数分。屋敷の裏手に反応がある。僕は魔力を流したまま反応のあった場所へ向かう。

 その場所は石を置く時に通ったところで、石をおいている時には気付かなかったところだった。その場所だけ地面の形が違う。掘られたあとに埋め直したような形状をしていた。

 

 僕は元の場所へ戻り、持ってきたスコップを手に取り、再度反応のあったところへ向かう。何度見ても反応のあるところは明らかに変だった。石を置く時に違和感があってもいいと思うが、恐らく精霊が隠していたのだろう。その場所へ近づき、僕はスコップを土に入れる。何かがあると思っていたが、すんなりとスコップは入っていった。


「あれ?」


 タイムカプセルを掘るように何か箱のような物にぶつかると思っていた僕は拍子抜けしてしまった。土に刺したスコップで土を掬い、後ろに捨て、さらに深く掘ろうとする。そこには反応がなくなっていた。僕は振り返る。すると捨てた土のところから反応が出ていた。僕は捨てた土へと近づき、手でその土の中を漁る。土いじりは小さい時はやらなかったが先生のところへ行ってからは色々やらされた。自然を大切にするのが先生の魔術だったからである。先生は僕のルーン魔術の師であるが先生はこの魔術を完全に使えるわけではない。先生の魔術は自然信仰、その中でも樹木信仰をするものだった。

 土を漁っていると手に何か、棒状の物が触れる。僕はそれを手に取り、ついていた土を払う。小さい試験管のような瓶の中に赤い液体が入っている。


「なんだこれ」


 依頼者には見つけた時に調べてもいいか聞いてある。ただ、何か封がしてあったら開けないようにとも言われた。この瓶には蓋で封がしてある。つまり開けて調べないでこのまま依頼者に渡すべきである。水とも違う、よく見れば少し酸化しているのか赤黒い見えるその液体は恐らく血液だろう。

 「血液」というのは日本の精霊魔術に置いて重要視されている。野の精霊を『ノヅチ』、水の精霊を『ミズチ』、雷の精霊を『イカヅチ』と呼ぶ様に最後には『チ』が付く。まず、精霊魔術は人間の力は血液に宿ると考えられる。そのため、自然信仰とともに生きると言う意味から『チ』、つまり『血』を名前につけた。

 依頼者の祖父は血統としての血液を後継者へ授けることで精霊魔術の継承をしようとしているのかもしれない。あくまで僕の予想である。そこまでは依頼の範疇ではない。



・


 依頼の品を解決したので僕は片付けをする。

 掘った土は元の場所へ帰し、並べた石を回収する。もう一周、屋敷の回りを歩くのは運動不足の僕には厳しかったが、他人の土地を荒らして帰るわけにはいかない。来た時と同じようにして片付けは完了した。


「そこの人、なに?」


 後ろから声をかけられる。

 この場所は精霊のおかげか、魔力の持たない存在には認識できないはず。つまり、この空き地に見える場所にいる僕にただ声を掛けていているだけなのか。はたまた、魔力を持っており、この場所で何かをしていた僕に声をかけたのか。一瞬で様々な考えが頭を回る。

 兎にも角にも、声をかけていた正体をみないことには始まらない。僕は声のした方へゆっくりと振り向いた。

 

 そこにいたのは小学生の男子。いや、中学生かもしれない。声を掛けられた時は男女どちらか分からなかったから声変わりがまだなのかもしれない。


「僕は土地調査仕事してるんだよ。君はどうしてここにいるの?」


 魔術師とバレないよう、予め用意しておいた言い訳を使う。こんな空き地にいる男など小学生ですら怪しいと思うだろう。警察に通報されたら困る。僕も困るが警察も困るだろう。なんだかんだ僕の知り合いが警察をやっているので『またお前か』みたいな顔をされる。それが嫌だから警察への通報は勘弁してほしい。


「散歩」


 一言そう答えた少年僕の後ろの建物を指差す。咄嗟に僕は後ろを見る。


「そこの家、見る。あるよね、建造物」


 彼には後ろの建物が見えているらしい。彼は魔力を持っているということ。魔力を持っていると言うことが必ずしも魔術師や魔法使いとは限らないが警戒をするに越したことはない。今回の依頼を達成するに当たって、僕は自分を守るための守護のルーンしか持ってきていない。危険性は全くない依頼だと踏んでいたからだ。しかし、依頼と関係ないアクシデントがあることを考えていなかった。備えが足りなかった。


「君の名前は?ここは危ないから早く街に戻ろう」


 とりあえずこの場から離れたほうがいいと判断した僕は少年をつれて、一緒に去ろうとする。子供を置いていくのは流石に危険かもしれないからだ。精霊が守っていた建物だ。そこに何かをしようというのなら、この少年が傷つく結果になるかもしれない。

 そんな僕の考えは少年には届かないらしい。その場から一歩も動こうとはしない少年。そればかりか会話を続けようとしてくる。


「秘密。それよりも、さっき、何やってたの」

 

 少年は一音一音確りと伝えてくる。話す言葉を考えてから発言しているようだ。大人と話す時に緊張する子どもがいるがこの子もそうだろう。こんな空き地で怪しい大人と会話をする、僕が子供の頃なら走って逃げていたかもしれない。


「調査だよ」

「光ったの見た。黒いストーンの図形が」


 この子供どこから見ていたんだ。僕がルーン文字に魔力を通す時、うっすらと光る。しかしこれも魔力がないと見えないもの。発動した時にはもう見ていたということ。これが何か分からないということは魔術師ではない可能性が高い。魔術師なら魔術を使う時に起こる魔力の流れを知らないわけがない。この子供が隠しているだけかもしれないが。


「見間違いじゃないかな」

「そう」


 僕は何とかごまかそうとする。すると意外にも少年は納得したかのように首を上下にゆっくりと振った。そのまま下を向いたかと思い、僕はその場を逃げるように立ち去ろうとする。少年の横を通り過ぎようとした時、少年の呟いている言葉が耳に入ってきた。


「気になるな……。奇妙な事が発生。気になる」

「気になる。気になる。気になる。気になる。気になる。」


 呪詛のようにつぶやく少年。さながらホラー映画のように見える。ほぼ話し方も単語を話すだけだった。そういうところもホラー映画に出てくる怨念に感じる。

 もしかして悪霊かもしれないという考えが頭に浮かぶがそれはないと一蹴。この場所は精霊の住まう土地。自然の多いこの場所には悪しき者は立ち入れない。なら目の前の不気味な存在は何だ。

 少年からは少しずつ、ほんの少しずつだが魔力が漏れ出している。何かをしようとしているのだろうか。防御のルーンで何とかできるのか、焦りから疑問だけが頭に浮かぶ。


「話せ。何を行った?」


 少年は顔を上げ、僕の目を見て言葉を発した。


「話せないよ。秘密ってやつ」


 僕は少年から逃げる算段を立てる。走って逃げれば何も問題ないだろう。ただあの少年の正体が分からない。このままここに放置して置いて良いものなのか。人間だとは思うが魔術師かどうかも分からない。

 少年は両手で頭を掻きながら『あーーーー!』と声を上げる。僕はびっくりして一歩後ずさった。『面倒だな』と一言つぶやく少年。


「問いをする。会話っとは何往復からだと思う?」


 急に此方に話しかけてくる。怖いとかではない、ただ話し方や話す内容、仕草までも不気味なのだ。


「(この質問は何だ。何を答えればいい?何が正解だ。そもそも僕の何を知りたいんだこの少年は)」

「さあ。二往復くらいじゃない?」


 僕は素直に少年の問いに答える。会話は二往復もすれば成立するだろう。一往復でも成立はするが挨拶とも言うことができる。少年の問へは答えた。その後の反応を見る。何か行動を起こすのならばこちらも対処をしなければならない。


「だよね。僕は、貴方の、怪奇を分かりたい。だからさ」


 少年は語りだす。一言一句、ゆっくりと。こちらに聞かせるように、自分に言い聞かせるように。


「僕に『教えて』よ」


 少年の言葉には力が籠もっていた。それは立派な魔術だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。