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魔術会社サークルのオカルト怪奇譚  作者: 人鳥迂回
深く混じって"愛"対して

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疑わしきは罰わせずep5

 口を半開きにして怪訝な顔でこちらを見てくる来栖さん。


「仕事じゃないってどういうことですか?」


「そのままの意味。僕たちの個人的な行動って言えば良いのかな」


 相良さんといろはが気になっているから調査をするだけの話。誰かからの依頼ではなく個人的な問題だ。今までも何度かそういう事はあったわけで別段驚くことでもないはずだ。


「ゲティさんがいつもより真剣だったのでてっきり依頼かと思ってました。社長なら興味本位で依頼以外でもやりそうですけどゲティさんは真面目ですし……」


 僕の評価は置いておいてゲティの方を見ると腕を組んで何回も頷いていた。味方を得たゲティが調子に乗っているように見えて腹立たしい。

 確かにゲティが個人的に首を突っ込むことは少ない。何かあったとしても依頼として請け負ってから行動をしている。今回の件は知り合いがかかわっているレアケースだから例外なのだ。


「そのへんも含めて説明しないと」


「そうだよー。脱線はしてないけど本筋のこと話してもらえてないから何が何だか分かんなーい」


 前方のフーちゃん、後方の空穂ちゃんに挟まれている来栖さん。

 元々説明をするつもりだったが、言いたい内容が飛び飛びになり本筋から逸れていた。まずは今回の出来事の起こりから話さないと。


「ふたりは賢者の石って知ってる?」


「名前くらいは知ってます。小説のタイトルになったりアニメの中に出てきたりする何でも出来る石ですよね」


「んー。まあ大まかにはそんな感じ」


 何でも出来る石ではなく生命に関して理を捻じ曲げることの出来る物質なのだが大事なのは賢者の石の内容ではない。話の内容を逸らさないように話を続ける。


「賢者の石は研究することすら禁止されてるんだけど、その研究をしている疑惑の人がいるんだ。それが僕とゲティの知り合いでね」


 僕が説明をしている最中、ゲティは席を立ち珈琲を淹れるためのお湯を沸かしに行った。女子高生に対して説明をしているためゲティがこの場にとどまる必要はないのだが、説明中に席を立たれるのは違うだろう。

 話から離脱する気はないようで電気ケトルのスイッチを入れたあと、元の位置に戻っていた。


「その人たちの所在が分からない。どこにいるのかもね」


「それって東京以外の可能性もあるってことですか?」


「その可能性は低いと思う」


 僕たちが魔術管理局から帰る時間的に考えても遠くから来ているとは思えない。そもそも地方には魔術管理局の地方局があり、そこでも魔術許可証の更新もできる。東京にある魔術管理局に来ている時点で遠く離れていない場所にいるはずなのだ。


「その人を見つけるためにフーちゃん、もといストラスの力が必要なんだ」


「社長の魔術では探せないんですか?」


「魔術にも相性があるんだ。僕の魔術は基本的に自分が中心になって行うものだから今回の件には向いてない」


「社長の説明で大体の概要は伝わったはずだ。来栖たちを呼んだのはフーちゃんを貸してもらうため、その理由もわかってもらえたか?」


「あ、はい。分かりました。えっと、フーちゃんを貸すのはイイんですけどちゃんと返してもらえれば……」


 おずおずと目の前に座るゲティにフーちゃんを差し出す来栖さん。それを優しく受け取るゲティ。


「ちゃんと返すよ。このお礼は――」


「普段から色々と教えてもらってるので貰わなくても大丈夫です。フーちゃんも頑張ってね」


『うむ。ただ儂が何をするのか分からないがな』


 僕は説明係に徹しただけで残りは僕を除け者に話が進んでいた。口を挟むタイミングがなかった。同じく発言していない空穂ちゃんは来栖さんの近くにいるため、「同じ気持ちです」とでもいいたげな表情をしていた。

 社長用の机は皆が座っているソファからは少しだけ離れているためどうしても疎外感が生まれてしまう。格好つけないで皆と話す時はソファに座ったほうがいいかもしれない。


「えっと、話は纏まったかな?」


 僕の存在を示すようにいつもよりも大きな声で皆に声をかけた。


「フーちゃんを貸してもらう形で纏まった」


 僕もこの場にいたのだからそれくらいは分かっている。今後どうするのかを聞いたのだが。


「来栖さんの守護は空穂ちゃんだけになるけど大丈夫そう?」


「そうそう危険な目には合いませんよ」


「私に任せてー」


「フーちゃんを借りると言っても数日程度だ。相良たちの居場所が分かり次第来栖たちに返すさ」


 この街にいる以上何が起こってもおかしくない。フーちゃんと出会うまでは空穂ちゃんと来栖さんで行動していたため、大丈夫だと思うが少しだけ心配をしてしまう。

 来栖さんの眼があれば危険なことには巻き込まれないはずだが、何かの導きによって来栖さんか空穂ちゃんに何かが起こってしまうかもしれない。それくらい来栖さんの眼に関しては未知数なのだ。

 八咫烏の眼は神の眼。実際に夢の中とは言え神様に会った僕だから分かるが、神様というものは力がない状態でも上位の存在というのが分かった。つまりは僕たち人間では理解できない、理の外にいるのだ。来栖さんの眼も理の外であり何が起こるかわからない。


「危険なことはしないでね」


「しませんよ。明日も普通に学校ありますし」


「そもそも危険なことって何ー?私たちが自分から首を突っ込むことはしないよー。私は愛美を危険に晒したくないし、愛美も私のことを危険な目には合わせたくないって言ってたし」


 空穂ちゃんの発言は初耳だった。間違いなく事務所内で言っていたことではなくふたりのプライベートの話だろう。その証拠に来栖さんの耳が熟したトマトのように赤くなっている。恥ずかしがっている来栖さんを隠すように空穂ちゃんが後ろから抱きしめているが、隠しきれていなかった。


「うーん。この街だと明らかに変な場所に近寄らないでってことと変な者には気付かないふりをしたほうがいいってことだね」


「それならいつも通りですね。いつも通っているのにその日だけ変な雰囲気の路地とか明らかに人じゃない者が道を歩いていても無視してますし」


「え、本当にそんなのがいるの?」


「いつもじゃないですよ。たまにです。たまーに」


 何か事件が起こらなければそれでいいが、龍脈の上に成り立っているこの街は力が強い。怪異たちが集まってくる。それらが問題を起こさない保証はなく、僕たちも気をつけるしかないのだ。

 裏世界の存在である怪異は魔力を持つものにしか見えない。元々魔力を持っていなかった来栖さんは神の眼を持つことで魔力体質になってしまった。たまにでも裏世界の者をみてしまうのは大変だろう。


「そういう時にフーちゃんがいたら心強いよねー」


「フーちゃんは知識が多いからね。直接何かができるわけじゃないって言ってたけど知識は役に立ってますよ。何かヤバそうな者がいた時にはアドバイスをしてくれたり、正体を教えてくれたりしますし」

 

『あまり褒めるな。照れてしまう』


 フーちゃんは器用に羽を使って自分の顔を隠した。人間みたいな仕草をしているがフクロウのぬいぐるみである。

 西洋ではフクロウは森の賢人と呼ばれていることからフーちゃん自身も賢人として知識を蓄えているのだろう。どこでその知識を得たのかは分からないが来栖さんたちの役に立っているのなら重畳だ。


「それならフーちゃんを早めに解放してあげないとね」


「そうだな。態々来てもらった立場で言うのも変だが、とりあえず暗くなるから来栖たちは家に帰れ」


「そうですね。フーちゃんがいない時に暗くなると今は不安かもしれません」


「えー。私がいるのにー?」


「空穂ちゃんも一緒だから不安になるの」


 来栖さんの発言に空穂ちゃんは感動して抱きついているが今の発言は空穂ちゃんが大事な時以外は役に立たないと言っているのではないだろうか。

 挨拶も程々に、ふたりは帰宅していった。


「さて、早速だが」


 ゲティは事務所の棚から『東京ガイドマップ』を持ってきた。地図があったほうが良いと思って買ったものだが棚に入れっぱなしになっていたものだ。よく見ると年号が3年前になっている。


「相良たちの居場所に見当を付けていこうか」


 来栖さん達が帰ったことで今日は解散をして明日から動くものだと思っていた。この場にいるのは僕とゲティ、そしてフクロウのぬいぐるみであるフーちゃん。ゲティは1階に住んでいるし、フーちゃんはぬいぐるみなので睡眠を必要としない。僕だけがここから早く帰りたいと思っているのに、残業が確定した瞬間だった。


日常系のお話

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