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冬の童話祭

鉄と羊(よみがなつき)

こちらは既に投稿されている『鉄と羊』という作品によみがなが振られたものです。

読みづらいと思った方はよろしければそちらの方で読んでいただけたら嬉しいです。


いま、あなたはどこにいますか?


どこかへかう途中とちゅう電車でんしゃなか


だれかが運転うんてんしているとなり


それとも、、、そう、いえでゆったりとソファーにすわっていたり。

もしそうだとすればちかくにはテーブルがあって、そこにはあたたかな湯気ゆげがたつココアがそそがれたカップ。


それとクッションがひとふたつ、みっつ!


かれらはそっとあなたのそばにいてあなたが快適かいてきごせるようにと、あるべき場所ばしょでやるべき仕事しごとをしているのです。


それから当然とうぜんですが、かれらはよるになってあなたがねむりについたらうごします。


やかんやクッションもからっぽになったカップも、ライトがえたらもぞもぞとからだをゆすっておしゃべりをはじめるのです。

(もちろん、ライトも!)

ぬいぐるみたち例外れいがいではありません。

よるになったらみんなうでばして「ふわぁ」とあくびのようなこえをあげるととなりのぬいぐるみに


「やあ、いいよるだね」

「そうだね、つきじつにキレイだ」


とあいさつします。

けど、ひつじのぬいぐるみプーシはぷいとそっぽをいて洋服ようふくタンスのうえからぴょいとりると、トコトコと子供部屋こどもべやってしまいました。


プーシはそのまま階段かいだんくだって一階いっかいへ。


リビングにかうくら廊下ろうかをふわふわの4本足ほんあしでとことこ、とことこ。

書斎しょさいにいたアーノルドがあるいているプーシをかけてあわててそのあといました

どうやら、家政婦かせいふのミチェルが書斎しょさいとびらわすれたみたい。


「ねえ、プーシ!

こんなキレイなよるに1人でどこへくの?」


アーノルドはプーシにいました。

そんなアーノルドにプーシはぶっきらぼうに

「やあ、アン。ぼくはもううんざりなんだよ」


なにがうんざりなんだい?」

「そりゃひつじのぬいぐるみでいるのがさ」

今日のプーシはいつにもまして不思議ふしぎこといます。

アンとばれたアーノルドはくびをこてんとさせました。


「なんでイヤなんだ?きみは特別とくべつにふわふわでトムはきみのことが大好だいすきでぎゅってきしめられたり面白おもしろほんかせてくれたりするじゃないか」


「ぼくが特別とくべつにふわふわだからゆううつなんだよ」

「どういうこと?」

「いいかい?あそこにはぼくの仲間なかまがいない」

なにうんだ!クマのブラウンにコアラのビッツ、それに可愛かわいらしいねこのムースリーもいるじゃないか」

ところが、プーシはくびよこります。

ちがうよ、だれひつじのぬいぐるみじゃない」

「そりゃそうだけど」

「それにだれもぼくみたいにふわふわなからだをしていない。

みんなどこからどこまでがからだがしっかりとわかっていて、ぼくのようにからだみぎによったり、ひだりによったりしないじゃないか」 


そう言ってプーシはふわふわとしたひつじをふるふるとらしました。


「ぼくは仲間なかまつけたいんだよ」

ひつじのぬいぐるみもいいとおもうけどなあ」

アンがぽつりとこぼした言葉ことばにプーシはふんとはならしました。

「きみにぼくの気持きもちがわかるもんか。

きみには仲間なかまがたくさんいるじゃないか。おなじかたからだあざやかないろのブリキの仲間達なかまたちが」


そうわれてしまえばアーノルドもなにえません。


アーノルドにはおなじブリキのおもちゃの仲間なかまがたくさんいます。トムのおとうさんがブリキのおもちゃコレクターだから。

でも、アーノルドからしてみれば、プーシをうらやましいなぁとおもっていました。

だって、アーノルドはあたたかい子供こどもでられたり、あたたかい毛布もうふをかけてもらって子守唄こもりうたうたってもらったことがないから。

勿論もちろん、トムのおとうさんのこと大好だいすきだけどね?


「でも、どうやって仲間なかまつけるつもり?」

「それは、長老ちょうろうくんだよ

長老ちょうろうならなんでもっているだろ?」

「ああ、それは名案めいあんだね」

「ところで、アン

きみも一緒いっしょるのかい?」

「ああ、ついていっていいかな?」

「まあ、かまわないよ」


長老ちょうろう物知ものしりでたよりにされているひと。おじいさんやおばあさんなことがおおい。もちろん例外れいがいもある)


そうしてプーシとアーノルドはくら廊下ろうかをとことこ、がちゃがちゃあるいてきました。

アーノルドはじつはプーシのこと心配しんぱいなのです。

プーシはふわふわしたからだおなじように気分屋きぶんやでそれで、ちょっとあぶなっかしいのです。

アーノルドが「どうしよう、やってみようかな?、でもあぶないかも」とまよっていることよこでひょいとやってしまうのです。

アーノルドはそんなプーシをすごいなぁとおもうと同時どうじにいつか怪我けがをしてしまうんじゃないかと心配しんぱいしていました。

それで、仲間なかまさがしにくとったプーシと一緒いっしょにいることにしたのです。

なんてったってブリキのからだひつじよりは丈夫じょうぶでしょうから。


2人がリビングにいたとき長老ちょうろう丁度ちょうど日課にっか体操たいそうえたところでした。

「おや。プーシにアーノルド、こんなところでどうしたんだい?」

長老ちょうろうは2人を見下みおろしました。

長老ちょうろう!ぼく、仲間なかまつけたいんだ」

仲間なかま

どうして?きみにはヘビのジャックにウサギのジョン・マーケニーもいるじゃないか」

長老ちょうろう言葉ことばにプーシはじれったそうにからだをよじりました。

「だめだめ!

ジャックにはぼくとおなじような4ほんあしがない。

ジョンはあんなにおおきなみみをしているし、あと気取きどだ」

アーノルドはこころなかでこっそり「きみもたようなもんじゃないか」とつぶやきました。


「そうか、じゃあ

洗濯せんたくブラシのナターシャは?」

彼女かのじょかたっぽうにしかがない」

「じゃあ、たわしのポニー」

「ねぇ、あいつのかた丈夫じょうぶとぼくのふわふわのおなじだってうの?」


たしかにトムがポニーをぎゅっときしめたらいたくて「うわっ」とこえをあげてしまうでしょう。


長老ちょうろうはそうわれて「うーん」「うーーーん」となやみました。そして、ぽんっ!とことはできないのでわりに片足かたあしで、とどんっ!とリズミカルにゆかたたきました。


「わかった、わかったぞ

これならきっと間違まちがいない」

長老ちょうろうおもわせぶりな雰囲気ふんいきにプーシとそして、アーノルドもおもわずひきこまれます。

「それはふわふわで」

「「ふわふわで」」

しろくて」

「「しろくて」」

「そしてなにより、おまえさんのようにまぐれでからだかたちがゆらゆらとかわる」

「ねえ!それってだれなの!!」

プーシがさけびます。

長老ちょうろうはプーシの様子ようすてにんまりすると、秘密ひみつはなしをするようにそっといました。


「それは、くもだよ」


プーシのふわふわのからだがびびびと電撃でんげきはしったかのようにゆれました。ふゆそとつめたいみずゆびれたときみたいでもありました。

「くも」

そっとくちしてみます。

「そう、くもだよ」

「くも、くも」

まるで発音はつおんたしかめるようにプーシはかえします。 

「そうじゃ、くも

ふわふわでしろくて、まるでおまえさんみたいだよ」

プーシのくろがぱっちりとひらいてキラキラかがやき、こころなかはそうですね、、まえ大好物だいこうぶつがあるとき想像そうぞうしてください「はやく!はやく!」ーーそう、そんなかんじ。

「ねぇ!くもはどこにいるの?」

プーシは長老ちょうろう立派りっぱあしにしがみついてきました。

「くもがどこにいるって?

そりゃすぐにわかるよ、ほらおいで」

そう言って長老ちょうろうはプーシを窓際まどぎわくよういました。

まどはおっちょこちょいのミチェルがカーテンをわすれたので月明つきあかりがほそくリビングにんでいます。


「ほら、ここをのぞいてごらん」


長老ちょうろうはプーシにカーテンの隙間すきま隙間すきまるようにいました。

プーシはおそるおそるまどちかづき、それから長老ちょうろうが「うえあげてごらん」とうのでそっとうえました。

そこにはそらがあって、つき今日きょうもやさしくほほえんでいます。


「くもは?くもはどこ?」

「ほら、あれじゃ」


プーシのにはなんだかぼんやりとした灰色はいいろのものしかえません。

「ぜんぜん、しろくない」


プーシはふてくされていました。


くもよるしろくない。

太陽たいようがいるあいだそらあおあいだだけしろいんじゃ」


長老ちょうろう言葉ことばをプーシはだまってきながら、はじっとそら灰色はいいろのぼんやりをていました。



「ぼくは明日あしたそとる」

それまでむっつりとだまっていたプーシは突然とつぜん決意けついかためたようにいました。

「それも、昼間ひるまにだ」

それをいて、アーノルドはびっくり!

ブリキのからだおどろきのあまりぎしきしときしみます。


きしむ……ふるいえあるいているとゆかからみしみしとおとこえる。それからベットでねたりんだりしているとぎしぎし、、、ものものがこすれてそんなおとすこと。

じつ例外れいがいもある。)


「ねえ!なにをばかなことっているんだ!!

そとにだなんて、それも太陽たいようがいるあいだにだなんて!

うそだとってくれ!」

うそなんかじゃない。

ぼくがうそをついたことがあったか」

たしかにないなとアーノルド。

こと本当ほんとうにプーシは昼間ひるまいえそとようとおもっているのです。

アーノルドはあわててプーシのかんがえをえさせようとします。


そとがどんなに危険きけんっているだろう」

「いーや、らないね

そと記憶きおくなんてずっとむかしのことだからおぼえてないよ」

くるまがビュンビュンはしっていてぶつかりでもしたらぼくらはポーンとばされてしまうんだ」

「ぼくのからだならばされたって大丈夫だいじょうぶ

このとおり、どこにぶつかってもいたくない」

「それに、それにそとにはとりがいる!!

きみのふわふわのねらってつっついてくるかもしれんぞ」


アーノルドの言葉ことばにプーシはプライドをきずつけられたように「とりなんぞにけるものか」といました。

やつらは鳥籠とりかごそとからられないのだし、やれることとったらうつくしい音色ねいろうたうたうだけ。たしかに歌声うたごえ素晴すばらしいですが、だからとってきれいな歌声うたごえでプーシをきずつけられるはずがありません。


でもね、くるまよりもとりよりも、アーノルドには心配しんぱいことがあるのです。


アーノルドはっているのです。


くも水滴すいてきかたまりで、ひつじのぬいぐるみの仲間なかまじゃないことに。

でも、仲間なかまえるとわくわくしているプーシにそのことえません。

だって、それじゃ、プーシには仲間なかまがいないことになってしまうから。

きっとそれをったらプーシはすごく、すごくかなしい気持きもちになってしまうから。

でも、アーノルドがなんとおうとプーシは決心けっしんえませんでした。アーノルドもどうしようもありません。


「わかった。じゃあぼくも行く」


「え!きみが?」


今度こんどはプーシがびっくりしました。

アーノルドはいいやつだけど臆病おくびょうみずこわいからこれまでお風呂ふろはいったことさえないのです。


「ああ、いいだろ?ぼくのからだはこのとおり丈夫じょうぶなんだからふわふわなきみがへっちゃらだとうならぼくだってへっちゃらさ」


こわがりのアーノルドにそうわれたらプーシも

「やれるもんならやってみろ!きっとやっぱり関節かんせつきしむからとかってやめるにまってる」

こころなかつぶやきました。

でも、プーシとながいのアーノルドにはくちされなくても、ちゃんとプーシがなにをかんがえてるかなんてわかっていたんですけどね。


だからね、つぎのおひるをちょっとぎた、人間にんげんう3ごろ。

トムの昼寝ひるね時間じかんにそっと子供部屋こどもべやしたプーシはアーノルドが廊下ろうかにいるのをてびっくり。


「アン、きみ、本当ほんとうるつもりなのか?」


アーノルドはこわくてこわくて仕方しかたがなかったのですが、プーシがびっくりしているのを得意とくい気持きもちになりました。


「もちろんさ、ぼくもくって昨日きのうったじゃないか」

「ふ、ふーん。まあ、いいけど途中とちゅうでやっぱり無理むりだってったってぼくはらないからな」

「そんなことうもんか!

ぼくだってブリキのはしくれ、弱音よわねなんかきやしない」


プーシとアーノルドはやいやいいながらしずかな廊下ろうかから玄関げんかんへ。

それから犬用いぬようちいさなドアをちからわせてなんとかげていえそとへとます。


犬用いぬようのドアって言うのは、人間にんげんのように使つかってドアをけることができないいぬため使つかわなくてもけられるドアのこと。

トムのいえにある犬用いぬようのドアは人間にんげんようのドアのよこにあってとびらあたまげてひらくことができる。

人間にんげんようのドアとちがってよこじゃなくてうえひらく。

それにかぎもない)


なにうんだ、アン。

ぼくはおぼえてるぞ、きみは最初さいしょ自分じぶんのいるたなからりることさえこわがっていたじゃないか」

「それをうならきみだって掃除機そうじきおとくとふるえてしまうらしいな」

「ちぇっ、だれからいたんだ!

いや、わかったぞ。おしゃべりペンギンのヤンだな、、、おい、待ってくれ、なにか動物どうぶつうなごえがしないか」


プーシとアーノルドはぎょっとしてかたまりました。


だっていかにもおおきくていかにもおそろしげなうなごえ道路どうろのむこうからこれまたおそろしいスピードでこちらにかってくるのがこえるのです!


「まずい!きっとオオカミだ!!」


プーシはさけびました。


「いや、オオカミなはずがない。

オオカミがまちなかにいるはずがない」

「じゃあ、なんだってうんだ!」


プーシがふるえるこえした途端とたんに2人のまえをそのおおきなうなごえぬしがものすごいスピードでびゅん!!

プーシとアーノルドはおたがいのからだきしめあってガクガクぶるぶる。


「い、いまのは一体いったい

「プーシ、あれがくるまだよ」

くるま!?いまおおきなものが???」


だってんでもらったほんにはあか四角しかくくろまるが2つーーなんだかつみきみたいな可愛かわいらしい姿すがたをしていたのに。

でも、プーシはアーノルドが物知ものしりなことっていたのでかれがそうったのならきっとそうなのだとおもいました。

「だからっただろ?

あんなのにぶつかられたらどうなってしまうことか」

アーノルドはプーシがかえすとってくれないかな、とそうおもいました。

そうすれば、プーシはくも仲間なかまじゃことらないでむし、それにやっぱりアーノルドはそとこわいのです。


でも、プーシはただのひつじのぬいぐるみではありません。

プーシはとても勇気ゆうきのあるひつじのぬいぐるみなのです。


さっき『くるま』がとおぎた地面じめんをじっとていたプーシは覚悟かくごめたようにぐっとうえ見上みあげました。

プーシのくろにはたっぷりとしたコバルトブルーのきのばしたうつくしいそら。そして、


「ねえ!アン!!

てくれ!!くもだよ!くも!!

ねえ!もっとよくて!ふわふわでしろくて、ふよふよとれていて、ぼくにそっくりじゃないか!!」


プーシはおおはしゃぎです。


だって、まさか、こんなにているとはおもっていなかったから。

昨日きのう灰色はいいろからだだったのに!きっといい石鹸せっけん使つかったにちがいありません。


アーノルドはプーシがよろこんでるのをうれしいようなかなしいような。

だって、プーシはきっとつぎは「くもにいたい」とうにまってます。それからそのつぎには「くもとはなしがしたい」。

でも、アーノルドはそれができないことっているんです。


だってくもみずなんですもの。


でもやっぱりアーノルドのこころなからないプーシはいました。


「ねえ、アン!

くもにいにこう!!」


プーシはふわふわのからだらしながらあのおそろしい『道路どうろ』をあるしました。

プーシは本当ほんとう勇気ゆうきがあるんですね。

アーノルドもプーシを1人にはしておけなくてブリキのからだでかちゃかちゃとおとてながらそっと『道路どうろ』に右足みぎあし左足ひだりあし

「ねえ、アン。

くもにいにくにはどうすればいいかな?」

「え、っと

、、、ねえ、プーシ、くもはとおいところにいるからきっといにくのは無理むりだよ」

無理むりなもんあるか!だって姿すがたえてるじゃないか」

「そうだけど」

「それに、止まっているみたいにゆっくりにしかうごけてない。だから、絶対ぜったいいつけるよ。

よかった。くもがくるまみたいにみじかやつじゃなくて」

アーノルドは『くるま』とわれてさっきのおそろしい姿すがたおもしてがちゃりとふるえました。


それから、うしろをちらちら。


プーシはとうと仲間なかま姿すがたことうれしくて鼻歌はなうたじりにみちをふんふんとあるいています。


「ねえ、プーシ。

ところで、きみはどうやってくものいるところまでくつもりなんだ?」

「え!しまった!それはかんがえてなかった。どうしよう。どっちのみちがくものいるとこにつながってるだろう」


プーシはふたつにかれたみちまえなやはじめました。

さいわい、アーノルドはそらみち余程よほどのことがないかぎりつながっていないことっていたのでプーシにそのことおしえてあげました。


「え、じゃあ、みちさきそらがないとしたら、どうやったらそらけるんだ?」


それはアーノルドもりませんでした。


「ねえ、プーシ?

そらくのはあきらめようよ。仲間なかまがいるのがかっただけいいじゃないか」

「いや、せっかくこので1人じゃないとったのだからわないわけにはいかない、、、そうだ!ねえ!あれはどうかな?」


プーシは道路どうろこうにえるこんもりとしたおかとそこにえたおおきないました。。

これがまたとてもおおきなで、青々(あおあお)としたあたまのてっぺんのそばをくも横切よこぎっているのがえます。


「あのにおねがいして、ちょっとあたまうえせてもらうんだ。

いや、これは名案めいあんだぞ

そうとまったら、いそいでかなきゃ!

トムがきるまえかえってこないとけないからね」


プーシはやわらかい4ほんあしで『道路どうろ』をかけだしました。

あわててアーノルドはプーシをいかけます。けど、あせるアーノルドのブリキのからだあせがたらり。するとあおそら気持きもちよく昼寝ひるねをしていたおさまのひかりがアーノルドのつるりとしてツヤツヤとひかるからだ反射はんしゃしてキラキラ

ねえ!だれかが2人にかってくるよ!!


「あ!アンっ!!」プーシがさけびました


「え、うわあっ!」


アーノルドはあわててうしろをいてびっくり。全身ぜんしんくろおおきなクチバシをったとりがアーノルドめがけてんできました!とり名前なまえはトイ。まだ2さいわかいカラスです。トイはキラキラひかるアーノルドをて「うわ!いいな!!」って大興奮だいこうふん

トイはひかるものがきなのです。

そしてトムのおとうさんがブリキのおもちゃのコレクターであるように、トイもきらきらしたもののコレクターなのです。

トイもきらきらひかるアーノルドに自分じぶんのコレクションに仲間入なかまいりしてもらおうとおもったのです。

それでトイはアーノルドのおなかをがっしりと両足りょうあしつかみました

プーシはアーノルドをたすけようとトイのあしびつきました。

でも、プーシはふわふわのひつじのぬいぐるみですよ?

ふわふわかるくてトイはプーシにつかまれていることにすらづいていません。


「アン!大丈夫だいじょうぶ?」

「ぼ、ぼくは大丈夫さ、で、でも、どうなっちゃうんだろ、だって、こんな、こんな、地面じめんからとおいだなんて!!」

「ねえ、でもて!!

いま、ぼくら、すごくたかいところにいるよ!

ねえ、このままけば、くもにえるんじゃない??」


アーノルドはそんな場合ばあいじゃありません。

だってこんなたかいところからもしも、とされてしまったらどうなってしまうんでしょう?ーーいや、ダメです!そんなことかんがえただけでからだがガチャガチャ


トイはどんどんうえうえ


アーノルドはますますガチャガチャガチャガチャ


あんまりにもふるえるもんだから、まだわかいトイはうっかり右羽みぎはねすこななめにしぎました。トイのまえながなが煙突えんとつが!!

トイはあせをかきながらぐっとからだひねってなんとかそれをけました。


でも、ああ、どうしましょう。

あわてたトイはアーノルドをちゅうはなしてしまって、アーノルドはそのまま自分じぶんよりもかたくて頑丈がんじょうそうな煙突えんとつへ!!!


『ああ、もうダメだっ』


アーノルドはぎゅっとつむってぎゅっとうでちからをいれました。

でもね、アーノルド。

きみがだれ一緒いっしょにいるかわすれちゃいけないよ?


世界一せかいいち勇敢ゆうかんひつじのぬいぐるみプーシはアーノルドの危機ききにぱっとトイのあしからはなれるとそのままアーノルドと煙突えんとつとのあいだはいってクッションのわりになったのです。


「プーシ!!」

「アン!!」


ふたりはおたがいの無事ぶじたしかめてよろこびました。

でも、それから途方とほうれました。


途方とほうれる……どうしようもなくてこまってしまうこと)


だって、こんなたかいところからどうやってりればいいんでしょう?

2人のからだ煙突えんとつからくぎのようなものにっかかって身動みうごきがれません。

そのおかげでちないんですけどね?


2人にはつばさもプロペラもないのにどうしましょう。


「アン、、、」

プーシのかなしげなこえにアーノルドはあわてました。

大丈夫だいじょうぶだよ、プーシ!なんとかなるさ」

アーノルドの言葉ことばにプーシはくびります。

ちがうよ、アン。ぼくらはこんなに地面じめんからはなれていてたかいところにいるんだ」


アーノルドはちらっとしたからだがぎしりとらしました。

そんなアーノルドてプーシはいました。


「いや、ちがうんだ。

つまりうえるんだ」


「え、うえ?」


「ああ、そうだ。うえてくれ」


アーノルドはそろりそろりとうえ見上みあげました。

うえには煙突えんとつさきしかなくてそれ以外いがい青空あおぞら


「あっ」

「そうさ、ぼくらこんなにたかいところまでたのに、くもってやつはまだまだあんなうえにいるよ。

ぼくらが地面じめんにいたときくらべてちっとも近付ちかづいてないじゃないか」


こんなときなのにプーシはむすっとしてそんなこといます。

その様子ようすがおかしくてアーノルドはついついこんなときなのにくすくすとわらってしまいました。

「あ、わらったな」

わらってないよ。からだきしんでいるだけさ」

「うそつき!絶対ぜったいわらってたよ」

こんなときなのに2人は「わらった」「わらってない」で喧嘩けんかをしました。

こんなときなのにいつものように喧嘩けんかをしていることがおかしくて2人ともわらしました。

2人がわらっているそんなとき

煙突えんとつしたほうからだれかがよいしょ、よいしょ。


こんなたか煙突えんとつのぼひとだれでしょう?

そう、トムのおとうさんです!!


「え、なんでこんなところに」

トムのおとうさんはトムのぬいぐるみと自分じぶんのコレクションが工場こうじょう煙突えんとつっかかってるのをてびっくり

もちろん、プーシとアーノルドもびっくりです。まさかこんなところでおとうさんにえるなんて。

でも、いたくなかったわけじゃないのです。

むしろ、とんでもなくえてうれしいのです。

トムのおとうさんは2人をかかえてもっていたふくろれました。

アーノルドはほっとしてプーシをてにやり

ね?なんとかなるもんさ。



トムのおとうさんにれられてプーシとアーノルドは無事ぶじいえかえってくることができました。

ふたりはくたくた。

トムのおとうさんが玄関げんかんとびらけるとそこにはけてしまいそうなほど大泣おおなきをしているトムの姿すがたが!!

「ねえ!プーシが!プーシがいないの!!」


あわてておとうさんがふくろからプーシをトムにわたします。

するとトムのなみだもぴたり。プーシのふわふわなからだきしめました。


「ねえ、ぼくがこんなにさがしてつけられなかったのにプーシはどこにいたの?」

煙突えんとつうえさ」

煙突えんとつうえ!なんで??」


トムにそうわれておとうさんはこまりました。

とうさんにもからないことはあるからです。

でも、「さあね」とはいたくはありませんでした。

とうさんが子供こどもとき、おとうさんのおとうさんはどんなにむずかしいことかれても「さあね」とはわなかったからです。


「そうだねもしかしたら、、、ほらトム、ここをごらん」


「?」


とうさんはアーノルドのブリキのあしうら指差ゆびさしました。

そこにはアルファベットで


『    Nebutal(ネブタール)     』


「あ!これ!プーシにもあるよ!!」

大発見だいはっけんづいたトムはおとうさんにプーシのしっぽのちかくについているちいさなかみはしのようなものを指差ゆびさしました。


(プーシについていたちいさなかみはしいたるところにある。

タオルや帽子ぼうしやズボンにもついているからためしにさがしてみてもいいかもしれない。

そしたらいままでらなかったことをれるかもしれない)


「そうだよ、これはかれらがまれたくに名前なまえなんだ

このくに羊毛ようもうのぬいぐるみとブリキのおもちゃが有名ゆうめいでね、

それともうひと有名ゆうめいなものがあるーーロケットさ」


「ロケット!!」


トムはロケットがきなので「ロケット」の言葉ことばをなんどもかえしました。

「そうさ、だからもしかしたら2人もロケットのようにたかいところにきたかったのかもしれない」

「それか自分じぶんくにのロケットがんでいくのをたかったのかもね

ぼくだったらちかくでたいもの!」

「おやおや、あんまりちかづいちゃダメだよ

あぶないからね」

トムのおとうさんはトムのプーシをかかえてないほうをとると書斎しょさいへとかいました。アーノルドもいつもの場所ばしょかえりたいでしょうからね。


そのよる、アーノルドが「ふわぁ」と、いつもよりしあわせそうに「ふわぁ」とあくびのようなこえをあげると(だって、あんなにあったんです。当然とうぜんいつもよりしあわせな「ふわぁ」になります)プーシが家政婦かせいふのミチェルがわすれた書斎しょさいのドアからこちらにやってくるところでした。

さっきまでくたくただったはずのプーシは元気げんきよくアーノルドにいました。


「ねえ、いた?

ぼくたち、おなくにまれたんだ!!

ことはぼくらは仲間なかまなんだよ!!!

やった!ぼくにはちゃんと仲間なかまがいたんだ!!


それもこんなちかくに!!!」


それから、プーシはうれしくてうれしくてアーノルドのあしうらようとひょいとげるもんだからアーノルドもたまったもんじゃありません。

みなさんもやってみてください。

ちながら片足かたあしだけあしうらえるようにあしまえすのはなかなか大変たいへんですよ?ああ、無理むりはしないで。


「プーシ!ああ、もうだめだめ。

今日きょうはクタクタだからやすませてくれ」

そうってアーノルドはすわんでしまいました。


そこでプーシは仲間なかまができたこと自慢じまんしようと長老ちょうろうのもとへうきうきわくわくはしっていきました。


長老ちょうろう長老ちょうろう!!」


「おお、プーシ、いたぞ?

おまえさんいえそとたらしいな

ダメじゃないか、そんなあぶないことをして」


長老ちょうろうのお小言こごとにプーシはじれったそう。そんなことよりはやいてほしいから。


「ねえ、長老ちょうろう!ぼくに仲間なかまができたよ!!」


長老ちょうろうはほう?とからだをぐりんとひねりました。まだ日課にっか体操たいそう途中とちゅうだったのです。


「あのね!いて!!

アーノルドはぼくとおなくにまれたんだって!!

ぼくらおなくに名前なまえからだいてあるんだよ!

ぼくのは背中せなかにあるからぼくにはえないんだけど、あと、アーノルドのはあしうらに!!」


「ほおそうじゃったか、そうじゃったか」


「ねえ、びっくりだよね!こんなちかくに仲間なかまがいたなんてぼくうれしくてうれしくてたまらないや!」


プーシはそうってふわふわのからだをふわふわとゆすりました。


「ところで、プーシ。

アーノルドのからだはおまえさんみたいにふわふわしてないぞ」

「そんなことたいさなことさ」

「アーノルドのからだしろくない」

いろあざやかでいいじゃないか」

「それにアーノルドのからだはぬいぐるみよりもどこまでがからだでどこまでがからだじゃないかきっちりかっちりしておる。とてもなめらかにな」


「ぜんぶ、ぜんぶどうでもいいことさっ!

なんたってぼくらはおなくにまれたんだ!!」


そんなプーシを長老ちょうろうはにこりとほほえみました。


「でも、もし、それがアーノルドでなくてべつのブリキのおもちゃだったらどうかな?

おなじように仲間なかまだなんておもえたかな?

いまほどうれしかっただろうか?

それからおまえさんがこわがっているあの掃除機そうじきのビリヤード。

かれおなくにまれたとったらいまおなじくらいにうれしいとおもえるかな?

プーシ、わしがいたいのはな、いつも一緒いっしょにいたアーノルドだったからおまえさんはそんなにうれしいんじゃないのかな?」


長老ちょうろうにそうわれて、プーシはなにえずにだまんでしまいました。

なにかえしたいけど、なにかえせないんですもの。


ていることだけが仲間なかまなんじゃない。

それは仲間なかまひとつで。

まれた場所ばしょおなじことだけが仲間なかまじゃない。

それは仲間なかまひとつ。

仲間なかまというのは、おまえさんがなにかをしたいときおもったとき一緒いっしょにいる相手あいてや、ふとしたときおもしてなつかしくおもったり

そういう相手あいてだって仲間なかまなんじゃよ。

たとえ、がぜんぜんちがっても、かんがかた性格せいかくちがっても」


プーシはそのあたらしいかんがえにうんうんとなやみながらそれからひとつだけきました。


「なんで、ぼくとアンがいつも一緒いっしょにいるってかったの?

長老ちょうろうおおきなからだじゃリビングのそとにはれないでしょ?」


その言葉ことば長老ちょうろうおおきな革張かわばりのおなかをゆらしてわらいました。

「わしをだれじゃとおもっておる。

ソファーじゃぞ?みんながすわっておしゃべりをするソファーじゃ。

らないことなんてないのじゃよ」

そうってくすくすとわらうと、それからひとつだけプーシにヒントをくれました。

「おまえさんたちがおたがおなくにまれたことらなかったからじゃよ」


プーシはくびをこてんとさせてかんがえました。

でも、さっぱりです。

「ぼくをからかってるんだな!」


プーシはむくれてリビングをってしまいました。

そんなプーシの様子ようす長老ちょうろうはまたくすくす。


リビングをたプーシはすぐさま書斎しょさいのアーノルドのもとへきました。

アーノルドはまだすわっていましたが、もうつかれてはなさそう。

無事ぶじかえってこれたし、それにプーシがかなしいおもいをしないですんだのでうれしかったのです。

そんなアーノルドのとなりにプーシはプンスカしながらすわりました。


「ねえ、いてくれよ!アン!

長老ちょうろうがぼくをからかってさ!!」

あんな大冒険だいぼうけんあとなのにいつもとわらないプーシにアーノルドもくすくすわらいました。


ブリキの人形にんぎょうひつじのぬいぐるみは今日きょう仲良なかよとなりならんであそんでいます。




ところで、なんでトムのおとうさんは煙突えんとつなんかをのぼっていたのでしょうか?

長老ちょうろういたらわかるかもしれませんね。


「そりゃ、からだがなまったらこまるじゃろ?

トレーニングじゃよ、トレーニング。

つぎふゆるまでのあいだ準備じゅんびはしておかんとな」


だ、そうです!


さいごまでよんでくれてありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] 再読しました! ルビ振りお疲れ様です♪
2023/01/11 16:59 退会済み
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