4 記憶の手がかり
「テレポート」
そう呟くと、北にあるらしい国に着いた。
ちなみに僕の容姿は、人間と同じよう。
普通の魔族は、角やら羽やら生えているが、僕には一切ない。
だから、人間の中に潜り込んでもバレないという訳だ。
……そういえば金がない。
弱ったな。門の様子を見ると、商人や旅人が、銅貨を渡して中に入っている。
そういえば、魔石や魔物の素材を買い取ってくれるっけ。
とにかく、さっさと倒すか。
天脳。近くに魔物はいるか?
「おっ、ガキじゃねぇか…」
振り向くと、大男がそこに居た。なんとも下品な顔をしている。
「ふん」
腹パンを食らわせ、さっと銀貨5枚を盗んだ。
「よかった。カモが現れて」
とりあえずは平気かな。銀貨の価値は未だによく分からないが。
僕は男から離れ、門の列に並んだ。
…5分程経った後。
ようやく僕の番になった。
「通行料は銅貨10枚です。ギルドカードがあるなら出してください」
「はい」
僕は銀貨1枚を出した。
「はい。銅貨90枚です」
銅貨100枚=銀貨1枚か。
僕は金を受け取ったあと、街に入った。
何やら街の中はお祭り騒ぎだった。
楽しそうだ。
「ねえ。なんかお祭りでもあるの?」
僕は近くにいた男に話しかけた。
「あら、可愛らしいお嬢ちゃんだな。今日はね。勇者様がパレードをやってくれるんだ。」
「へ〜………なるほどね。ありがと!」
「あ、勇者様が来るよ」
男が指さした方向から、勇者…と呼ばれる男が現れた。
あれは……制服?
「着たかったなぁ……あれ?」
気がついたら、僕は涙を流していた。
お祭り騒ぎの中、僕の事なんて誰も気にしてない様子だったから、良かった。
「なん………で……」
涙が止まらない。ふと、勇者と呼ばれた連中と目が合った。
パレードは順調に終わった。勇者は、魔王は必ず倒す的な事を言っていた。
そんな事はどうでもいい。まずは、涙を拭いて、ギルドに向かうとするか。
ギルドカードがあれば、街の通行料もかからなかったはずだ。
「それに、記憶も……」
色々やることがある。
まず僕は、街の中でもかなり大きい建物に入った。
「なんだぁ?…ガキじゃねぇか。おいガキ。あんたはここにいるべきじゃない…」
僕の横に居る男がそう言った。
「忠告どうも。でも、僕にはやらなきゃ行けないことがある。」
「分かった。あんたの意思は本物のようだ。なら、あの男には近付くなよ」
男はそう言って、ギルドの奥にいる男を指さした
「気を付けるよ」
僕はそれだけいい、受付へ向かった。
夕方だからか、受付に並んでいる人は少ない。
「失礼。登録をお願いしたい」
「それでは、この紙に指示通りに記入してください」
「はい」
名前。得意武器。戦闘経験。それと……試験について?
そんなめんどくさい事をしなきゃいけないのか。
「はい。試験って?」
「…試験は今日から1週間の内、何時かを選べます」
「じゃあ今日で。今すぐで」
「は、はい。試験には銀貨1枚が必要です」
「あ、どうぞ」
僕は銀貨を渡した。
「試験会場はあちらになります」
言われた方を向くと、闘技場と書かれている。
大丈夫か?あれ。
とりあえず、疑っても仕方ないから、闘技場へ向かった。
「へへへ…俺が試験監督だ。よろしく頼むぜ」
闘技場は、広い空間で破壊耐性の魔法がかかってるんだな〜って思った。
目の前には、監督と名乗るさっき危険人物だと忠告された人がいた。
下品な笑いを浮かべている。
「早く始めましょう」
「手加減は要らねぇぜ……」
「は、はい。それじゃあ、試験開始!」
開始した瞬間、男はこちらに向かいながら魔法を放ってきた。
魔法の方は魔王眼で無効化。
攻撃は楽に避けられる
男はバランスを崩し、倒れそうになっている。
「アイスグローブ」
手に氷を纏い、男の顔をぶん殴った。
素手では触りたくないからね。
殴るのと同時に、肘で男の首を打った。
「手加減はしないのが僕のスタイルなんだ」
僕は倒れた男にそう言った。
「で、試験監督倒れたけど誰が評価するの?」
僕は近くにいた、受付の人に話した。
ていうか試験監督自身が戦うとかおかしくないか?
「え、ええと……とりあえず、相談してきます〜」
受付の女性はそう言って、どこかへ行ってしまった。
……一応回復魔法かけとくか。
「リカバリー」
…うん。魔力が消費された。
さて、待ち時間が暇だな……
「………あ、そうだ。」
僕は周りに誰も居ないことを確認して、男から銀貨をいくらか抜き取った。
よしよし。
いいカモだぜ。
5分後
「待たせてしまったね。ほ、ほんとに倒したんだ」
横から、30代くらいの男が現れた
「あなたは?」
「ああ。私はこのギルドの責任者。ギルド長のライザキ・ハルトだ」
「私はアイラ・ライン。で、試験の結果はどうなります?」
「ああ。合格なのは見て間違いないだろう。問題なのは…うーん」
何か問題でもあるのか?
「そうだな。ひとまずCランクからの開始という事にしよう。ギルドカードの発行にもう少し時間がかかるから待っててくれ」
「はーい」
また待つのか…
………それから再び4分後
「はい。これが君のギルドカードだ」
ギルド長にギルドカードを渡された。
銅貨みたいな色してる
「ありがとうございます」
「いやいや、気にするな。」
ギルド長はそう言って、行こうとしていた。
が、僕はギルド長を止めた。
「ハルトさん」
「ん?」
「今、忙しいですか?」
「いいや、暇だよ」
「少し、話したいんですけどいいですか?」
「ああ。構わないよ。あそこで話そうか」
ギルド長は、空いている席を指して、僕達はそこに座った。
闘技場の席だ。ちなみに防御結界は貼ってある様だけど、すぐ壊れるなこれ。
「ギルド長は、どこの国から来たんですか?」
「…うーん。そうだね〜」
ギルド長は困ったような顔をしていた。
「ニホンって言う、遠くの遠くの国さ」
日本という言葉を聞いた瞬間頭に激痛が走る。
「ど、どうしたの?」
「いやあ…多分僕もそこ生まれです」
記憶を思い出す事は出来ないが、少しづつ僕の身元が明らかになってきた。
「本当かい!?」
ギルド長は物凄く驚いていた。
「でも、昔の記憶がなくて……」
「そうなのか…それは大変だね」
今の時点で覚えている事と言えば、日本から来た。
火に関して何らかのトラウマがある。
国を1つ滅ぼしてから、魔王に捕まった。って事かな。
そうだ。
「ここ最近で消滅した国とかあるか?!」
そこに行けば、何か思い出すかもしれない。
「あ、ああ。そうだな。半年ほど前に、突如消えた国がある。ここから馬車で2週間ぐらいかな」
「なるほど…国の名前は?」
「ああ。アルノスって名前だ」
「ありがとう」
僕はそう言って、席を立った。
「行くのかい?」
「うん。もしかしたら何か、思い出すかもしれないからね」
「そうか。思い出せることを祈ってるよ」
「ありがとう」
私は闘技場から去った。
というかギルドから去った。
「さて、とりあえず今日のところは寝るか。」
1人でそう呟いたが、現在は夕方。
宿の部屋空いてるかな?
「とりあえず、ご飯でも食べるか」
僕は近くの飯屋に入った。
飯屋の中は綺麗で、カウンター席と、テーブル席がある感じ。
酒場っぽい雰囲気だが、僕は見た目年齢的に酒を飲めない。
やはりというか、メニューを見ると酒が色々と載っていた。
「すいません。串焼きとシチューを」
「マッシュの串焼きと、ポライトシチューですね」
聞きなれない名前で少し怖くもあるが、楽しみでもある。
10分ほど待つと、串焼きの方が先に出てきた。
「おお〜」
串焼きは結構大きくて、肘から手首程まである串に、手の甲ぐらいの大きさに切られた肉が刺さっている。
肉汁が滴ってて美味しそうだ。
それに、香辛料のいい匂いがする。
「うーん……美味しい〜」
肉を噛んで、串から外そうとしたが、噛み切れた。
それほどまでに柔らかかった。
それに、脂が少ないのが個人的に高ポイント。
味は…うん。最高。
気がついたら4枚ある肉を半分食べていた。
そんな時に、シチューの方も届いた。
「うーん…美味あ」
申し訳ないが、僕は一方を食べ終わってからもう一方を食べる事にしている。僕は串焼きを食べ終え、シチューを1口食べた。
「うっま…………」
1口サイズに切られた肉がこれまた美味しい。それに、シチューは濃厚で美味しかった。
僕がいい感じの表現を知らなくて非常に残念だ。
「あれ?」
気がついたら皿の中は空だった。
アレーナンデダロー。