クリスティアーネ <クリスティアーネの挿絵あり>
門を抜け、てくてくと町中を冒険者ギルドに向かって歩いていく。
顔見知りと出会うたびに、「もう三人目かよ」「シルヴィアと申します! よろしくお願い致します!」のやり取りをしてて頭が痛い。
エリナも特に異論をはさむことなく、俺の腕にしがみついたままニコニコ笑っている。
冒険者ギルドの入口にカートに乗せたダッシュエミューをマジックボックスから出させて中に入る。
「「こんにちは!」」
「わっすー」
「いらっしゃいませ、トーマさんとハーレムの方々」
「そういう括り方はやめろ。入口に凍ったままのダッシュエミューがカートに乗せて置いてあるから、回収と査定を頼む」
「かしこまりました。査定終了まで少々お待ちください」
「いつものように掲示板でも見てるよ」
「十分ほどで終わりますので、終わりましたら声を掛けますね」
「頼む」
掲示板を見ると、貨幣輸送馬車の依頼があった。
もうそんな時期なんだなーと感慨深く思ってると
「トーマ様、この輸送馬車の護衛任務ですが」
ポンコツが周囲に人がいないのを確認しながら、少し声を押さえて話しかけてくる。
「そうだ。これが間引き依頼の一つだ」
「しかしこんなに怪しい依頼に引っかかるのですか? 貨幣造幣ギルドはこの町には存在しませんよ?」
「引っかかるから二、三ヶ月に一回程度の間隔で間引いてるんだと」
「なるほど、公共事業としては問題は無さそうですね」
「どれだけコストをかけてるかにもよるが、治安維持には有効だろうな」
エリナの頭をなでながら答える。「えへへ!」と上半身にしがみついてくる嫁を軽く抱きしめて他の依頼を見るが、他に美味しい依頼は無さそうだ。
「トーマ様お待たせいたしました」
事務員に呼ばれ、無事換金が終わった俺達は、夕食の買い物をしつつ孤児院へと向かう。
昼飯を外で食うのは良いけど、ミコトに忘れられちゃうのは嫌だなーなどと考えながらてくてくと歩いていく。
◇
歩いて五分ほどで孤児院が見えてくるが、その孤児院の前にどことなくポンコツに似た風貌の女が、二人の同年代の女性を控えて立っていた。
その女はやや赤みがかった栗色のゆるやかなウェーブの長髪をした上品な感じの女で、胸部装甲のサイズはポンコツより大きいだろう。
「トーマ様、あれはわたくしの姉です」
「お前の? という事は領主家の?」
「はい。長女ですが、その上に兄がいますので継承権としては二位になりますね。わたくしはその次です」
「あれなの? お前を連れ戻しに来たとか、領主家に反発的な俺を処分しに来たとか?」
エリナをぎゅっと抱きしめて足を止める。
「大丈夫だよお兄ちゃん! 何があっても私がお兄ちゃんを守るから!」
「アホか、大事な嫁は俺が守るんだよ」
「お兄ちゃん……大好き!」
「いえあの、トーマ様、エリナ様。クレア様の魔法講師として私が呼んだのです」
「ああ、全属性で特に白魔法が得意とかって言ってた」
「はい。姉は王都にある魔導士協会で研究員として籍を置いてますので、魔力の励起などの技術を教えるのは得意かと」
「魔導士協会ってどこかで聞いたことあるな」
「お兄ちゃん、最初私たちに魔法を教えてくれたおじいちゃんのいる所じゃなかったっけ?」
「そういえばそんなことを言ってたな。じゃあ大丈夫かな」
「ええ、トーマ様に危害を加えるどころか、わたくしが姉にトーマ様の事をお話したらかなり興味を持ったようで」
「一応聞くけどなんて言ったの?」
「わたくしの命の恩人で、この国の現状を憂いている英雄だとお話ししましたが?」
「眼科行け、いやエリナこいつを治癒してやってくれ」
「エリナ様も平民出身でありながら十六歳という若さでメギドアローを使いこなし、また、夫であるトーマ様の理念に共感して恵まれない子供たちの為に尽力されている聖女だとお話しましたが」
「お兄ちゃんシルヴィアさんに治癒の必要は無いよ!」
「わかってたけど俺の嫁ってチョロいなー」
もう駄目だこいつら。と諦めてポンコツの姉の元へ歩いていく。
クレアの為だ、我慢しよう。
ポンコツの姉という人物に近づく。
遠目でも美人だとは思っていたが、ポンコツ同様華美な衣装は俺が嫌うと聞いていたのか、シンプルな服装にも関わらず恐ろしいほどの高貴さと美貌も持つ女だ。
化粧っ気の無い妹とは違いうっすらと化粧はしているが、俺と同年代だろうか、控え目な化粧がまた更に魅力を引き出しているようだ。
領主家の長女か、お姫様みたいなもんだしな。
元気ハツラツ脳筋美女のポンコツも一応姫様だったのを思い出した。
「姉上」
立ち止まったポンコツが俺たちを紹介しようとすると、それを手で制したポンコツの姉が佇まいを正して挨拶をしてくる。
「トーマ様、エリナ様でいらっしゃいますね? わたくし、シルヴィアの姉のクリスティアーネ・グライスナーと申します」




