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お手並み拝見


 朝の弁当販売は二日目も順調だ。

 昨日の倍程の量を用意して、サンドイッチの種類も増えたので、サンドイッチは二切れで銅貨十枚の値段に設定して販売する。

 サンドイッチの中では照り焼きチキンサンドのコストが他より高いので、これだけは銅貨十五枚にしたが売り上げは悪くない。


 ポンコツの売り子も問題無いようだ。

 ガキんちょにも丁寧に徹する性格なので客との受け答えも良いし、弁当箱への盛り付け以外は完璧だ。こぼすなもったいない。

 ちょっと庶民的な食べ物だが、見た目の良いポンコツが勧めることでその辺りの忌避感が無くなるようで、ちょっと上品そうな客にも焼きそばパスタやナポリタンが売れるようになった。


 販売開始から一時間程で大分売れた。

 薄利多売でやってるので、この量だと売り上げ額的にはまだまだだが、これからどんどん客が増えてくれれば孤児院の収入の柱として行けるんじゃないだろうか?


 客足も少なくなったころ、空になった容器を片付けていた一号が、売り上げの状況をクレア達売り子に聞いていた俺に声を掛けてくる。



「兄ちゃん、姉ちゃん、あとシルヴィア姉ちゃんも、これ用意したから使ってくれ」



 一号が、販売している弁当箱より二回りはでかい弁当箱を寄越してくる。



「一号なにこれ?」


「朝にお弁当販売した後に狩りに行くと弁当を持っていくかもって兄ちゃん言ってただろ。それで大きめの弁当箱を用意したんだ」


「アランありがとう!」


「アラン様ありがとう存じます」


「一号、ありがとうな。大事に使うわ」


「いくつか試作で大きさを変えて作ったのを職人に頼んでた奴なんで、兄ちゃんたち専用に作った訳じゃないんだけどな」


「基本サイズの弁当箱は元々大きめで作っておいたが、大食らいや複数人でシェアするとかには良いかもな。まだいくつか完成品はあるんだろ?」


「あるよ。数はそんなに多くはないけどな」


「売れ行き次第で作るサイズも複数用意した方が良いかもな。弁当箱の方は任せたからクレアと相談しつつ作ってくれ」


「任せとけって兄ちゃん!」


「頼もしいなキャプテン」



 俺達狩り組は、売れ残りの中から自由に選んで弁当箱に詰めていく。

 サンドイッチの扱いが難しいが、詰め放題にさせてグラム単位で販売ってのもありかもなと一応責任者のクレアにアイデアだけ伝えると、俺達は狩りに向かう。





「で、ポンコツは仮にも騎士団所属だったんだからそこそこ戦えるんだろ?」


「ドラゴンスレイヤーであるトーマ様やエリナ様と比べるとどうしても劣ってるとは思いますが」


「まあまずはお手並み拝見だな」



 てくてくと西の平原を歩いていく。

 何度かダッシュエミューを狩った付近まで来ると、落とし穴を一つ作り、手分けして周囲に餌を撒く。



「なんかお兄ちゃんに髪を弄られるの久しぶりな感じがするー」


「髪を乾かすのは昨日もしたけど、髪型弄るのはそうだな」


「トーマ様、ダッシュエミューらしき反応があちらにありました」



 ポンコツはそう言うと平原の一方向を指差すが、俺には見えない。



「お前の探査魔法ってどれくらいの範囲なんだ? 俺には全く見えないんだが」


「半径八百メートルです。探査範囲が騎士団でも上位でしたので、地竜の時は偵騎として出撃していました。風ではなく土属性魔法なので空を飛ぶ生物はほとんど感知できませんが、その代わり地下十メートル以内の生物の感知も出来ます」


「空の探査が出来ないデメリットはあるが、状況によっては使い勝手も良さそうだ。良いぞポンコツ、早速役に立ったな」


「ありがとう存じます!」


「で、こちらに向かっているのか?」


「まっすぐこちらに向かう様子ではありませんが、付近を通過するコースを取ってますね。進行方向がそのままであればですが」


「予想コース付近に身を隠す物があるか?」


「あの草むらはどうでしょうか?」



 ポンコツが指定した場所は、百メートルほど先にあり、背の高い草が密集していて俺達三人が身を隠しても問題なさそうだ。



「よし、じゃああそこに身を隠そう」


「はーい!」


「わかりました」



 身を隠した状態でダッシュエミューを待つ。

 風下だし、エリナの射程圏どころか俺の射程圏まで引き付けても大丈夫そうだ。



「ポンコツの得意な魔法はなんだ?」


「土と水ですが、攻撃魔法限定ならば水ですね。刀身を延伸させる魔法も使えますし」


「ならここに向かってるダッシュエミューを氷漬けにするなりして捕らえる事はできるか?」


「可能です」


「じゃあやってみてくれ、逃がしてもエリナが仕留めるから」


「任せてお兄ちゃん!」


「ところで何故トーマ様はエリナ様を抱きしめているのですか?」



 俺はエリナを後ろから腰に手を回して軽く抱きしめている状態だ。

 ポンコツがやっとその事に突っ込んできた。

 良い匂いがするんだよなエリナは。



「落ち着くから」


「えへへ。私も落ち着くー」


「わたくしを抱きしめても落ち着くと思います。是非お試しくださいませ」


「冗談だよ。協力魔法というかな、二人で同時に同じ魔法を使うと、威力が増すんだよ」


「そういえばわたくしの姉がそのような研究をしていましたね」


「やっぱとっくにそういう研究はされてるわな。でだ、その場合だと二人が同じ魔法を使えないといけない」


「そうですね」


「けど、俺を魔力タンクとして使えば、エリナの魔法の威力や射程距離が増えるんじゃないかと昨日思いついたんだよ」


「トーマ様を魔法石代わりにするという事ですか?」


「増幅という意味ではそうだな。感覚的には燃料供給というか、エリナが俺から魔力を引っ張り出して、潜在能力以上の魔法を使えたりしないかなと」


「夫婦魔法だねお兄ちゃん!」


「まあそういう事だ」


「面白い事を考えますね。姉が聞いたら喜びそうです」


「まだ内緒にしておいてくれな。秘匿技術だったりして怒られでもしたらたまらん」


「かしこまりました」


「っと、俺の探査魔法にも引っかかったぞ。ポンコツ準備しろ」


「はい」


「エリナはポンコツが逃がしたらこの状態で風縛を試してみろ。俺は風縛を使わずに、お前に魔力を移せるか試してみる」


「はーい!」


「魔力の譲渡……そのような事が可能なのでしょうか?」


「わからんからやってみるんだ」


「トーマ様、来ました。迎撃します」


「よし、やれ」


氷の棺(フリーズコフィン)!」



 ポンコツが二百メートル程先のダッシュエミューに魔法を放つと、ダッシュエミューの氷像が出来上がる。



「凄いな、流石貴族と言ったところか」


「ありがとう存じます!」


「このまま首を斬り落として持って帰るか」


「では試し斬りをさせて頂きます」


「おう」



 凍り付いたダッシュエミューに向かって歩き出す。


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