一日一回
この春にリフォームが終わった孤児院に戻る。
道に接した壁と、建物自体の外装の修復に加え、エリナと俺が一緒に暮らす部屋を含めた増築も行ったので随分費用が掛かったらしい。
そのおかげでかなり外観の印象がかなり良くなった。
イザベラ孤児院の看板ももちろん新しいものに変わっている。
エリナと婚約した時から俺とエリナの金はエリナが丸投げしてきたので俺が一括管理するようになったし、リフォームが終わった頃には報酬の分配金額も変わった。
喫緊の問題が落ち着いたので、孤児院には毎月金貨一枚だけを入れることにした。
というか婆さんが、「修復、改築も終わったし食事の面倒を見て頂いているのだから、今後はお金は一切必要ありません」と頑なに分配金を拒否したので、なんとか俺達も婆さんを説得して決めた金額なのだ。
そして孤児院自体で収入を得る方法としてエリナや婆さんと話し合った結果、俺とエリナの金で空き家になっていた隣家を買い取り、隣家のリフォームと孤児院との連絡通路設置や台所を広くするなどの孤児院内のリフォームも行う事になり、未だ工事中だ。
今までダッシュエミューをメインに狩っていたし、あのアマから貰った分の金も加えて、かなりの貯蓄が出来ていたが、このリフォームでかなり貯蓄を減らしてしまった。
土地買収やリフォーム費用は国からの支援などは全く無かったが、婆さんが国と交渉して、託児所の公共的なメリット等を認めさせた。
結果、孤児院の周囲に魔法を使った街灯の設置、定期的な巡回警備、付近に警備兵の詰所の新設を勝ち取り、託児所を利用する為の料金や利用者への国からの補助などはこれから交渉を重ねるが、まずは試験的に知り合いの幼児や児童を無料で預かり、必要経費等の計算を行うことにした。
費用計算は婆さんとクレアが行うとの事。
クレアは元々優秀ではあるが、特に数字に強く経理向きなんだと。
台所などの孤児院側のリフォームは終わったが、買い取った家屋のリフォームがまだ終了してないから、今まで通りリビングで預かるのに加えて風呂に入れてあげる程度だけどな。
リビングは常にガキんちょ共が騒がしいから、俺とエリナが使っていた部屋はお昼寝部屋として使用している。
そんな事を考えていると、いつものようにエリナが孤児院の綺麗になった扉を開けて迎え入れてくれる。
「帰ってきたぞ弟妹ども!」
「兄さま! 姉さま! お帰りなさい!」
「「「おかえりー」」」
「クレア、みんな! ただいま!」
最近かなり歩き回って行動範囲の広がったミコトの手を引きながら出迎えに来たクレアの頭をなでる。
「ぱぱ! えりなまま!」
「ミコトちゃーん、ただいまー! エリナママ居なくて寂しかったー?」
ミコトの視線に合わせるようにエリナがしゃがみ込み、ミコトを抱きしめる。
「ミコトー、ちゃんとクレアのいう事を聞いておりこうにしてたかー?」
俺もミコトの視線に合わせるようにしゃがみ、向日葵のような笑顔を向けるミコトの頭をなでる。
ミコトはほんと天使だなー。
「あい!」
「そっかー、偉いぞミコトー」
わしゃわしゃとミコトのストレートの黒髪を撫でまわすと、「きゃっきゃ!」とご機嫌だ。
「兄さま、ミコトちゃんは兄さまと姉さまが居ない間も凄くおりこうでしたよ。早く私も兄さまとの子供が欲しいです」
「十歳児が何言ってんの?」
「愛に年齢なんて関係無いですよ兄さま。私の事嫌いなんですか?」
「クレアは滅茶苦茶可愛いと思うし、将来は恐ろしいほどの美人になるだろうし、年下どころかエリナや俺への面倒見も良い上に気が利いてしっかりしてる。料理の腕前も俺をとっくに超えてるし、家事も万能。クレア以上の女性なんかそうそう居ないだろうなっていう位には好きだぞ」
「兄さま……ありがとうございます! 結婚しましょう!」
「妹として愛してるしクレアは凄く大事な家族だけど、異性に対する愛情では無いんだよ。今はまだな」
「もう! 兄さま!」
「今日はこれで終了だぞクレア」
「わかりました。また明日頑張りますね!」
クレアとの約束で、俺に求婚をするのは一日一回だけと決めてある。
律義にそれを守るクレアは流石に委員長だな。
俺も自分の気持ちをはっきりと伝えるようにしている。
エリナの時にはヘタレてはっきり自分の気持ちを言えなくて、大分やきもきさせちゃったしな。
その代わりスキンシップは特に制限を決めていない。
エリナが俺にやたらと付きまとってたのを見てるし、流石にそれを制限するのは可哀そうだ。
エリナがミコトと手をつなぎ、ガキんちょ共とリビングに向かう。
クレアが俺の胸甲とマントを外して、「あとで洗っておきますね」と入口の片隅に置くと、エリナの代わりに俺の腕に抱きついて、俺の部屋へと付いてくる。
部屋の前でクレアから着替えを受け取って部屋で着替えてから廊下に出ると、クレアが俺の洗濯物を受け取る。
この辺はエリナには出来ない芸当だよな。
完全に良妻じゃないか。
「兄さま、今日のお昼ご飯はやきそば風パスタですよ」
「クレアの味付けが完全に俺好みなんだよなー」
「料理は兄さまから教わりましたからね。あとで明日の分の食材のメモを渡すので買い物をお願いしますね」
ミコトが成長し、手がかからなくなって来た二、三ヶ月前あたりから、クレアは本格的に料理をするようになった。
あっという間に料理を覚え、今では朝と昼はクレアに任せてる状態だ。
朝と昼は少し軽めにした代わりに、晩飯は俺とエリナで食材費を無視したがっつりとした料理を作り、クレアが補佐に入っている。
「わかった。しかしもっと良い食材を買ってきても良いんだぞ?」
「安くて美味しくて栄養満点の料理を作るっていうのが、今の私の目標なんです!」
「託児所の経営を考えたら助かるんだけどな。俺はその辺全く考え無しだったから」
味付けが俺の好みという言葉でご機嫌になったらしいクレアが、うふふっと俺の腕に絡みつく。
今はまだ子供だから女性として意識はしてないけど、これ数年後ヤバそうだな......。
歳の割りに大人びてるし、話し方や仕草ももう大人のそれだ。
外見の成長も孤児院の中では一番だし、おしゃれにも気を使ってるせいか、下手したらエリナの方が年下に見える。
クレアとくっついたままリビングに入ると、エリナはまだ胸甲とマントを着けたままミコトとイチャついている。
俺とクレアがリビングに入ってきたのに気づいたミコトがこちらを向き、にぱっと笑顔を見せる。
「ぱぱ! まま!」




