それでもやっぱり彼はヘタレだった <エリナⅡの挿絵あり>
「うわー、あれか、ブラックバッファローって」
「おっきいねー」
「黒毛牛なら美味そうかなと思ったけど、見た目が想像以上に凶暴だな」
「ブラックバッファローって人を襲うって話だしね」
「ヤバかったら一撃で殺していいからな」
「わかったお兄ちゃん!」
「いい返事だぞ嫁」
「えへへ!」
結婚式から一ヶ月後、俺がこの世界に来て一年が経った。
俺とエリナは東の荒野に異常発生したブラックバッファローという魔物を探しに来ていた。
魔物は餌を確保するために、基本はつがい以外は単独行動との事だったので来てみたら、大きさは日本の牛と変わらないが、角がやたらと立派で顔も怖い。
野菜屑を食うというので、適当にバラ撒いていたうちの一つに食いついてるのを見つけた。
残念ながら落とし穴を仕掛けた方にはまだ来ていない。
今は風下に身を隠した上で、防音魔法と防御魔法で俺とエリナを覆っているが、襲ってきたらひとたまりも無いだろうな。
名前:トーマ・クズリュー
年齢:19
血液型:A
職業:ヘタレ勇者
健康状態:良好
レベル:――
体力:100%
魔力:100%
冒険者ランク:D
名前:エリナ・クズリュー
年齢:16
血液型:お兄ちゃんと一緒!
職業:お兄ちゃんのお嫁さんです! えへへ!
健康状態:幸せ過ぎて怖いくらい!
レベル:28
体力:100%
魔力:100%
冒険者ランク:D
一ヶ月前のエリナとの結婚を機に二人で市民登録をしたおかげで、無事俺の名前は全て表示されるようになった。
エリナ・クズだと可哀そうだしな。
こいつならはみ出してでも全部表示できたかもしれないけど。
冒険者ギルド登録証は登録情報が他ギルドより少ないので、市民登録証と機能統合できると言われたので銀色のクズ登録証からはおさらばだ。
その代わり報酬から税金が必ず天引きされるようになるし、税率も収入に応じて上がる上、市民登録証の方に冒険者ランクや体力などの情報が表示されてしまうので、表示されてる情報は冒険者ギルドの物と同じになってしまう。
だが、冒険者ギルドで銀行口座に直接入出金できるというメリットもあって大満足だ。
ただ、相変わらずエリナの登録証はバグってやがる。
メッセージボードじゃねーんだぞ、えへへ! ってなんだ。
なんで感想欄みたいになってるんだ。
どこかのホテルの寄せ書きノートかよ。見た事無いけどな!
しかもコイツ気分で変えやがるから門やギルドで見せるたびに色々変わってるんだぞ。
昨晩のお兄ちゃんすごくたくましかった……てへへ とか門番に見せるな。俺が死ぬ。
まあでも今はそんな訳の分からん事を考えるより、目の前の事に集中しよう。
流石に命が掛かってるからな。
「群れだったら無理でも、単体だったら何とかなるかと思ってきたけど、どうするかなアレ」
「私がばーんってやっちゃっても良いけど、お肉と皮も高く売れるんだよね」
「最悪魔石と角は確保して帰りたいけど、丸々持って帰るのにブラックバッファローを載せられる折り畳みリヤカーを買っちゃったから、早く元を取りたい」
「高かったねー」
「金属製で最大積載量二トン、ミスリルの取っ手に魔力を通せば十分の一の力で運べるとか言われてつい買ってしまったからな。銀貨五十枚もしたけど」
「異常発生してるブラックバッファローを一頭持ち帰れば金貨二枚は稼げますよって防具屋さん言ってたしね」
「しかもこの町にはブラックバッファローを狩れる猟師も冒険者もいないから独占できますよとか乗せられてしまった」
「お兄ちゃんは調子に乗ると駄目になっちゃうからね」
「それはお前もだけどな。考えてても仕方がない、まずはエリナの魔法が通用するか試すか」
「えっと、火魔法で良いの?」
「一番威力があるからな。角は無理だろうけど、魔石は魔力を帯びてるから、魔法の炎だと燃えにくいって聞いたし。風縛を試したいところではあるけど、失敗して怒らせたら怖いからな」
「ヘタレだねー」
「安全に狩る為に慎重になるのをヘタレって言うな。エリナの攻撃魔法で倒せれば、次は風縛を試せるしな」
「じゃあアレに魔法を使うね!」
「一撃で倒せなくてこっちに向かってきたら、落とし穴を掘るから俺の後ろに隠れろよ」
「わかった!」
「よし、俺が防御魔法を解除したらやれ!」
「はい!」
ブラックバッファローは人を襲う魔物だからな、気合を入れよう。




