どりる
腕に縦ロール娘をくっつけながら歩いて帰ると、昼前に孤児院に到着した。
稼ぎも良いし平原にはブーブー鳴く動物も居ないし、ダッシュエミューが安定的に狩れるならこっちをメインにしたいな。
エリナがいつもの挨拶をして開錠すると、ガキんちょ共が群がってくる。
「姉さま、すごい髪型ですね......」
クレアがミコトを抱っこしながら出迎えに来たが、入ってきたエリナの髪型に驚いたようだ。
「たてろーるって言うんだよクレア! ミコトちゃーん、エリナお姉ちゃんだよー、髪型違うけどわかるかなー」
「だー! だー! きゃっ! きゃっ!」
クレアに抱かれたミコトが、エリナの縦ロールのドリルに強く興味を示す。
触りたそうに一生懸命手を伸ばしている。
「わわ、ミコトちゃんが喜んでるよお兄ちゃん!」
「ドリル部分を触りたいんだろ」
「どりる?」
遂にエリナのドリルに手が届いたミコトがガシガシ引っ張る。
「いたた、ミコトちゃん、お姉ちゃんちょっと痛いかなー」
無理にやめさせられないエリナが、引っ張られる痛みに困惑しながらも、ミコトの好きなように引っ張らせる。
「兄さま! 私もたてろーるにしてください!」
「クレアはゆるふわウェーブの髪だから、ミコトの好きそうなドリルが作れないと思うぞ。でもお団子にすればミコトが興味を示すんじゃないか?」
「おだんごですか?」
「髪を纏めてボールみたいなのを二個作るんだよ。赤ん坊なら喜ぶんじゃないか?」
「兄さま! 是非私の髪をおだんごにしてください!」
「あとでヘアピンとか買ってくるよ。他に固定する方法わからんし」
「お願いしますね! 兄さま!」
ミコトに、キャッキャとドリルを引っ張られて嬉しいやらちょっと痛いやらで困惑してるエリナを、クレアが羨ましそうに見つめている。
「兄ちゃん仕事してたんじゃないのかよ」
「獲物を待ってる間暇だったからな。エリナの髪で遊んでた。力作だろ」
「すごいんだけどあんまりエリナ姉ちゃんには似合ってないかもな」
「その気持ちはわかるぞ一号。縦ロールは性格が悪い貴族令嬢の髪型ってイメージだし」
がやがやと全員でリビングに移動する。
まだ昼飯は食べてないようだ。
まぁまだ十一時過ぎ位で早いからな。
「じゃあ早いけど飯にするか。サンドイッチだけだと寂しいから、ちゃちゃっと簡単なスープ作っちゃうかな」
「お兄ちゃん私も手伝うよ」
やっとミコトから解放されたエリナが逃げ出してきた。ドリルがぐしゃぐしゃだ。
「飯食ったら縦ロールをツインテに戻しちゃうか」
「そうだね、ミコトちゃんは喜んでくれたけど、すぐに飽きちゃったみたいだし」
「ダッシュエミューが来ちゃったから、ドライヤー魔法が途中になってしっかり固まらなかったからな。びょんびょんしなくなって飽きたのかも」
「うーん、残念なような、飽きてくれて助かったような不思議な気がする!」
「まぁしばらくはミコトに話しかける時はツインテにしといた方が良いぞ。顔を覚えてもらえなくなりそうだ」
「そうだよねー、なんか新しい玩具扱いだったし」
「じゃあエリナ、オニオンスープを作るからベーコンと玉ねぎ切ってくれ」
「わかった!」
今日の昼飯はハムサンド、タマゴサンド、テリヤキチキンサンドにオニオンスープだ。
ミリィがミコトの名前をラスクと刷り込むので、ミリィのラスクの為のパンの耳確保も兼ねている。
とは言え、本物のラスクは食パン型の奴だし、実はパンの耳を揚げたのはラスクじゃありませんでしたと言うしか無いか。
いつものようにがやがやと喧しい昼食も終わり、エリナの髪型もドライヤー魔法で真っ直ぐに戻しツインテに戻した。
縦ロールが横に座ってると邪魔なんだというのが理解できたので、今後は自重しよう。
「じゃあちょっと買い物に行ってくるわ」
「お兄ちゃん私も行く!」
「お前はミコトにツインテ姿を刷り込んでおけ」
「たしかに! 外に出てるから忘れられちゃいそうだしね!」
「じゃあ行ってくる」
「行ってらっしゃい! お兄ちゃん!」
久々に一人で外に出る。
エリナの体調が悪い時以外は基本いつも一緒だからな。
冒険者登録証の健康状態に、体調不良の原因が出るからもうやりにくいったら無いわ。
そんなもん見せられてどうしろと。辛いなら休んどけとしか言えん。
ちょっと一人じゃなきゃ買えない物もあるしな。
冒険者ギルドで金を下して高級ゾーンに行かないと。
あとは晩飯の買い物ついでに野菜屑やら罠用の布とかクレアと約束したヘアピンを買うか。
いや、ミコトが触るかもしれないからヘアゴムの方が良いかな? 売ってれば一緒に買うか。




