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命名


 リビングに戻ると、ガキんちょどもはとっくに昼飯を食い終わっており、眠っている赤ん坊に群がっている。



「お兄ちゃん、この子うちで受け入れるの?」


「ああ、正式な手続きはこれから婆さんがやるが、この孤児院の新しいメンバーだぞ」


「よかったー、この子すごく可愛いもんね」


「姉さま、この子の世話はいいんちょーの私がします」


「えークレアずるーい。カルルの食事係も取っちゃったじゃない」


「姉さまはそれ以外の面倒を見たでしょう?」


「そうだけどさー」


「姉さまはもう冒険者のお仕事をしてるじゃないですか。可愛がるのは良いですけど、お世話は私の仕事ですよ」


「クレアのけち」


「なんで六歳も年下のクレアの方がしっかりしてるんだよ……」


「お兄ちゃんこの子の名前はわかったの?」


「いや、どこにも書いてなかった」


「じゃあ名前を付けてあげようよ!」


「そうだなー、俺はしばらく新入りとか言いそうだけど」


「お兄ちゃんは人の名前を言わないきゃらを辞めなよ!」


「キャラって言葉を使いこなしてんじゃねーよ」


「兄さまは訳の分からない名前を付けますからね。いいんちょーとか意味わからないですし」


「お前さっき自分で委員長って言ってたじゃん」


「もうちゃんと名前つけてあげて! お兄ちゃんが最初に見つけたんでしょ!」


「うーん、女の子だろ? うーん。なんか無いかな、命名ねえ命名……そうだ、ミコトってどうだ? 漢字で書くと命」


「かんじ? でもミコトちゃんって可愛いと思う! お兄ちゃんやればできるじゃん!」


「ミコトちゃん……可愛い名前ですね兄さま」


「お、好評だな。一応他のガキんちょの案も聞いて決めようぜ。委員長ちょっと聞いて来て」


「わかりました!」



 委員長のクレアが他のガキんちょにアンケートを取りに行く。

 委員長キャラがバッチリ合ってるじゃねーか。

 俺のネーミングセンス良いじゃん。


 あいつすげぇしっかりしてるんだよな。

 話し方も大人みたいだし。

 ガキんちょの面倒見も良いどころか好んでやってるしな。


 体つきもエリナの身長を追い越しそうなほど急成長してるし。

 部分的にはすでに追い越している。

 数年後には緩衝材が必要無くなりそうな感じ。

 胸甲を着けるような危ない仕事をさせるつもりはないけど。


 クレアの髪は、日本では見かけない青色でゆるふわウェーブの長い髪型だ。

 両サイドの髪を軽く後ろに流して二本の黄色のリボンで纏めている。

 将来は知的美人だな。妙に大人びてるし。



「お兄ちゃんついんてーるにして!」



 クレアの仕事ぶりに感心していると、俺に背中を向けて言い放つエリナ。ガキかよ。



「ポニテのままだったなそういや」



 エリナの髪型をツインテールにする。

 他のガキんちょの髪のセットはエリナがやってるんだから自分でできるだろって言うとお兄ちゃんがやった方が可愛いからとか言いやがる。

 完全にエリナの掌で踊らされてるな俺。



「できたぞ」


「ありがとうお兄ちゃん! 私可愛い?」


「可愛いぞエリナ」


「うーん、ちょっとはヘタレが治ってきてるのはわかるんだけど、気持ちが籠ってない気がする!」


「どうすりゃいいんだよ……」



 理不尽な事を言われていると、アホ妹とは違ってテキパキと働く有能な委員長が帰ってくる。



「兄さま、皆の意見を聞き終わりましたよ」


「ミコト以外にどんな候補があった?」


「ラスクちゃんって言うのがありましたけど却下しました」


「ミリィだろ。どんだけ気に入ってるんだラスク」


「あとは全員一致でミコトちゃんですよ兄さま」


「お、じゃあ命名命だな。逆から読んでも命名命」


「? お兄ちゃん、逆から読んだらとこみいめいめでしょ?」


「漢字フォントがねーんだよなこの世界」


「兄さまはたまに変な事を言うきゃらを辞めた方が良いですよ。発作は諦めましたけれど」


「辛辣過ぎだよ九歳児……」


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