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それでも彼はヘタレだった


音響弾(ソニックバレット)! お兄ちゃん! そっちに二匹行ったよ!」


「任せろ! 電撃の槍(ライトニングスピア)!」



 俺は、直前上に並ぶようにエリナに追い立てられて来た二匹のホーンラビットを電撃の槍で纏めて貫いた。

 俺の手持ちで一番貫通力が高い魔法だ。

 電気の帯なので目玉や内蔵は焼け、毛皮にも多少のコゲ跡が付くが、外傷を一切作らず、そのままギルドに納品すれば少し高値で売れるのだ。


 外側に傷を作らない為に、ホーンラビットの口の中から喉を割いて血抜きをするのはエリナの仕事である。

 グロ克服は相変わらず出来ていない。



「やったね! お兄ちゃん!」



 エリナがホーンラビットを一匹、残雪の上を引きずってくる。


 今日はこれで五匹か。

 これ以上狩ると解体の必要が出てくる。

 時間も丁度良いし引き上げるか。

 決して解体シーンを見たくないからではない。ごめん嘘。


 早速エリナが俺の仕留めた分を血抜きする。

 いつもありがとう妹よ。愛してるぞ、妹としてな。



「エリナが上手く追い込んでくれたからな。ウサギは冬眠しないからかなって思ってたけど、魔石を持つ魔物は冬でも活動するってのはありがたいよな」


「そうだね! 冬に採取できる薬草の種類は少なくなるし雪に埋もれちゃうからね、魔物が減らないのは助かるよ」


「最悪手持ちの金で越冬する必要があるかと心配してたけど、冬でも活動してる魔物のおかげで安定して稼げるから助かるな」


「ドライヤー魔法で私たちは温かく狩りできるしね」


「お前、温度調節できるようになったのにずっと俺に髪乾かさせるのどうなのよ」


「お兄ちゃんにやって貰った方が気持ち良いんだもん。他の子たちのは私がやってるんだからいいでしょ」


「まぁお前の髪を触るのは好きだから良いんだけどな」


「でしょ? お兄ちゃん専用なんだからね。私の髪は」


「じゃあさっさと帰るか。もう十分だしギルドに寄っても孤児院の昼飯に間に合いそうだ」


「うん!」



 最近新しく新調した頑丈で大きい背負い籠にホーンラビットを五匹入れる。

 前の籠より重くなったが俺の背に合わせて防具屋が設計した専用籠だ。

 散々弄られたけど良い買い物をした。


 体にぴったり密着することで体感の重さが軽減されるのだ。

 しかも胸甲の背中部分にアタッチメントを付けて籠をロックできる特注品だ。

 滅茶苦茶安く作ってくれたから何も言わずに弄られ続けた。悔しい。


 帰路につくと、相変わらず腕にしがみついてくるエリナ。だがもう冬で厚着をしている為、肘が胸甲に当たっても痛くない。




 俺が<転移>してから半年程が経とうとしている。

 あれから俺達は成長した。

 特にエリナがな。


 エリナの身長は少し伸びた。

 それでも百五十には届かないかなという程度だが。

 体つきもほぼ毎日野外活動をしているせいか、少し筋肉がついて、細身のままだけどしなやかな女性らしさが出てきた。

 胸甲の内側に詰め込んだ緩衝材は、まだ少しも減ってはいないが。




 名前:トーマ・クズ


 年齢:18


 血液型:A


 職業:ヘタレ


 健康状態:良好


 レベル:――


 体力:95%


 魔力:90%


 冒険者ランク:E





 名前:エリナ


 年齢:15


 血液型:A


 職業:お兄ちゃんのパートナー


 健康状態:良好


 レベル:15


 体力:90%


 魔力:98%


 冒険者ランク:E




 ただし俺の職業は相変わらずヘタレだし、エリナの職業欄はバグってやがる。

 エリナが俺に告白した日からずっとこのままだ。

 というかこれって一応公的な身分証になってるんだぜ?

 冒険者ギルドのあの事務員に見せたら爆笑しやがった。

 

 というかこいつ自力で「職業:お兄ちゃんのお嫁さん」に変えられるんだよな。

 恐ろしい。

 

 ちなみにまだ正式に返事はしていない。


 俺の職業欄を見て理解しろ。

 一緒に寝ても何も起こらない程のヘタレだ。


 門番に登録証見せる度に言われるんだぞ。「エリナちゃんの職業はいつパートナーから嫁になるんだ?」「お兄ちゃんがヘタレなのでなかなか永久就職できないんです」「確かに兄貴の職業はまだヘタレのままだな。頑張れよエリナちゃん」「はい! ありがとうございます!」とか毎日やり取りしやがって。

 ほっとけ。


 魔力の扱いも上達し、エリナは中級魔法も少しずつ使える様になってきて、レベルも一気に15まで上がった。

 俺も初級魔法であれば一通り使える様になり、なんとか平均レベルの威力を出せるようになったし、異世界本や前世の知識で、オリジナルの魔法をいくつか使えるようにもなった。


 薬草を採取しつつ、探査魔法で魔物を発見するたびに狩っていたら冒険者ランクも上がった。

 収入も月単位で均せばなんとか安定していると言えるレベルにはなったし、俺もエリナも孤児院に金を入れながらも、貯えができるようになった。


 エリナに春の採用試験を受けるのか? と聞いたら、パートナーなんだからお兄ちゃんと一緒の仕事をする。ときっぱり断言されたので、とりあえずクズ受け入れ機関である冒険者ギルド所属のままである。



 本来魔物が少ない南の森で、安定してホーンラビットを狩るのは難しい。

 そもそもむやみに人を襲う魔物ではないとの事。

 もちろん縄張りに不用心に入ったりしたら襲って来たりする程度の脅威はあるのだが。

 

 だが俺が探査魔法で探知し、エリナが風魔法の音響弾で俺達の方に獲物を誘導するという方法で、なんとか安定して狩れるようになってきた。

 俺の探査魔法は最初は半径二十メートル程度だったが、段々範囲が広がっていき、今では半径二百メートル近くまで広がった。

 エリナは探査魔法が苦手のようで範囲は半径五十メートル程度だが、攻撃魔法に関しては才能があり、俺の探知した獲物付近に正確に音響弾を最大射程二百メートル以上で狙って撃つことができる。

 攻撃魔法が直撃すると獲物が消し飛ぶから、威力が無く、派手な音だけが発生する音響弾を使って追い込むのだ。


 なんとかこれで孤児院を安定して運用できる目途が立ってきた。

 問題が起こらなければな……。

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― 新着の感想 ―
[一言] おぉ!レベルが上がったか?と思ったら……頑張れトーマ! それに比べてエリナのレベル更新の早いこと! 職業が『お兄ちゃんのパートナー』にはギルドの事務員でなくても笑ったけど、本人はいたって本…
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