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絵本を読んであげよう <エリナ部屋着の挿絵あり>



 風呂から出ると、女子チームはまだキャッキャと髪を梳かしている。

 やり過ぎたらハゲるんじゃないか?

 あと婆さんは早く寝ろ。



「風呂から上がったぞー」


「おかえりー! お兄ちゃん! 見て見て! どう? 髪を梳かしたらもっと艶が出たっぽいの!」


「髪を梳かしすぎるとハゲるぞ」


「ハゲないもん! お兄ちゃんのハゲ!」


「ハゲてねーよ! 良く見ろよおら!」


「ハーゲ! ハーゲ!」


「くっそ、こいつ一時間毎に態度がデカくなってやがる」



 イラつく俺に一番ちっこいあせものガキんちょが俺の足にしがみついてくる。

 なにこれ可愛い。



「よしよし、抱っこしてやるからな」


「にーちゃん、にーちゃん」


「お前は賢いな。二号と呼ぶか」


「お兄ちゃん! その子はカルル! 変な名前を覚えちゃうから駄目!」


「そっかーカルルかー」


「にごー、にごー」


「お兄ちゃん!」


「スマン、スマン。お前はカルルだぞー、兄ちゃんと一緒に絵本読むか絵本」


「あい!」


「よしよし、カルルは可愛いなー。ちょっとエリナ、絵本持って来て。カルルの好きそうなやつ」


「なんか負けた気分だけど、わかった! 持って来るね!」


「返事は最高だぞ妹よ」


「ありがとお兄ちゃん。はい絵本」


「さんきゅ。さーカルル読むぞー。昔々赤ずきんという可愛い女の子が……って赤ずきんちゃんかよ! これ怖い話じゃね?」


「へ? お兄ちゃん赤ずきんちゃんが怖いの? ヘタレー」


「いやいや、オオカミにガブっていかれる所とか怖くね?」


「カルルはこれがお気に入りでいつも喜んでるけど」


「マジか。強い子なんだなカルル」


「お兄ちゃんと違ってヘタレじゃないもんねーカルルー」


「へたれ、にーちゃん、へたれ」


「おいこらエリナ」


「ごめんなさいお兄ちゃん」


「一応聞くけど、これ赤ずきんちゃんとお婆さんが助かる方? 助からない方?」


「え、二人が助かる話があるの? お婆さんは赤ずきんちゃんが食べちゃったのに?」


「グリムじゃなくてペローの方かよ! 婆さんよくこんな本置いてるな……」


「にーちゃん! えほん!」


「おーごめんなカルル。よしよし、続き読むぞーって読めるかー! 怖いわー!」


「えーお兄ちゃんヘタレー」


「ヘタレで結構! エリナ! 人が死なない本を持って来い!」


「もーお兄ちゃん人使いが荒いー」


「うっさい! 教育に悪いわ!」


「にーちゃん!」


「ごめんなー、ちょっと待っててなーカルルー」


「はいお兄ちゃん。白雪姫なら良いでしょ?」


「……これ鉄の靴を履く方? 履かない方?」


「履くよ?」


「だから怖い絵本を持って来るんじゃねーよ!」


「だって王妃様は死なないでしょこれ」


「いや、死ぬぞこれ。実際にあった処刑法らしいぞ」


「そうなんだ。最後白雪姫が、真っ赤に焼けた鉄の靴を履いて踊ってる王妃様を見て、笑うところで終わってたから知らなかった」


「これ死ぬまで踊らされるんだぞ。笑って終わるシーンはマイルド版と共通だけど、余計に怖いわ」


「じゃあ別の本を持ってくるよ」


「どうせシンデレラだろ。もういいよ、俺の知ってる話をするから」


「お兄ちゃんのお話私も聞きたい!」


「にーちゃん! はなしー!」


「兄ちゃんの話か、俺も聞きたい」


「わたしもきくー」


「おっちゃんのはなしききたいー」



 なんだかんだ全員集まってきたな。

 あと婆さん早く寝ろ。

 カルルは抱っこしたままちょいちょい揺らしてやる。

 もう普通に歩ける子だけど癒されるから抱っこしたままだ。


 あとちょっと怖い話を思い出して怖くなったし。



「よしよし、じゃあ始めるぞー。むかーしむかし、ある所におじいさんとおばあさんがいました......上流から大きな桃がどんぶらこ~どんぶらこ~」


「ももってなにー? おいしいのー?」


「どんだけ大きいんだおっちゃん?」


「どんぶらこー、どんぶらこー」



 駄目だ、絵が無いと大きさが伝わらんし桃を知らん子がいたらそもそも成立せん。

 よく考えたらキジとか絶対伝わらなさそうだ。


 カルルの癒し力は伝わり過ぎて怖い童話の件は忘れた。



 色々話したけど、手持ちの話で一番受けたのはカチカチ山でした。


 結局お婆さんが悲惨な目に合う話が受けるって、大丈夫なのかこの孤児院。

 


 俺の事をおにーさんって呼ぶ女子最年少の銀髪のガキんちょが、お婆さん汁が出てきたときに「おいしそー」とか言ってたのはショックだった。

 その場面でも婆さんは特に表情変えずにニコニコしてたけどな。

 というか寝ろよ。



 話が終わったあと、一号と物置部屋の荷物をどかす。

 なんと大きい物以外はガキんちょ共が昼に出して掃除までしてくれてたらしい。

 なので大きな木箱を一号とどかして、ベッドを入れるだけで終わった。

 あとの細かいものは明日な、明日。


 エリナは婆さんにくっついて治癒魔法を教えてもらうそうだ。

 結局寝ないのな婆さん。



 俺は自分の部屋でスマホの百科事典アプリからペニシリンと蒸気機関、黒色火薬と先込め銃、あと電気関連としてコイルと白熱球の情報を今日買った紙に書き写す。

 だが日本刀はあっさりと見つかったし今書き写した情報も怪しいな。

 あとコンソメとブイヨンを調べてその違いを初めて知って衝撃を受けた。

 出汁入り味噌と出汁位違う物だったのか。

 

 カルルの為のベビーパウダーも調べたけど、中途半端なものを使うと有害とか書いてあったので明日市販のものを探そうと思う。

 ヘタレに冒険は無理だ。

 自分で試すならともかく俺の癒しの存在のカルルだしな。

 エリナが治癒覚えたら治るかもしれないし。

 一度婆さんに聞くのも良いかもな。

 ベビーパウダーも含めて。

 

 爺さんから貰った魔法解説書の中から使えそうなものだけ覚え、あとは寝るまでおまけで貰った異世界転生本を読み込むのだった。

挿絵(By みてみん)

エリナ部屋着


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