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風呂に水を張ろう



「おーい、エリナ、風呂の準備するから道具の場所とか教えてくれるか?」


「はーい! アラン、あとよろしくね」


「わかったよエリナ姉ちゃん」



 井戸はこっちだよ! というエリナの後をついていく。



「いつもはどうやってるんだ?」


「井戸からポンプを使って、桶に水を溜めたのをみんなで運んで浴槽に溜めてるよ。三日ぐらいかけてちょっとずつ」


「たしかに重労働だな。ポンプがあるのならホースみたいなのは無いのかな」


「ほーす? ほーすって何?」


「あれ、ホース無いのか。別の言葉かな? 下水道はあるみたいだし、配管とかって言えばわかるか?」


「はいかん? んー、よくわかんない」


「じゃあこの世界の風呂ってどうやって水を溜めてるんだろう?」


「お風呂があるお家って珍しいんだよ。ここも、ずっと昔はお貴族様が住んでたお屋敷だったんだって」



 やけにトイレも頑丈な造りで広いし、広い風呂場まで完備されていると思ったら貴族の家だったのか。

 築百年くらい経ってそうな感じだけど。

 貴族なら使用人とかも多いだろうし風呂の準備は問題無いか。



「じゃあ庶民の風呂は銭湯みたいなものがあるのか?」


「せんとー? 銭湯ならあるよ」



 なら今日は銭湯に連れて行って明日ホースが無いか市場で探すのもありか。

 夜にガキんちょ共を外出させるのはちょっと怖いけど、婆さんの魔法があれば大丈夫か?



「銭湯って近いのか?」


「そんなに遠くないよ。市場より近いし」


「なら飯の後にみんなで銭湯行くか」


「お兄ちゃんヘタレたの?」


「言い返せないけど、ホースがあるなら無駄な事はしたくない。一応井戸を見ておくか、ポンプの口径も調べたいし。ええと定規とかメジャーってあるか?」


「じょーぎ? めじゃー? メジャーあるよ! 取ってくる!」



 なんかいちいち口元に指をあてて、頭をこてりと倒して言葉を確認する仕草が可愛いな。

 狙ってやってるとしたら末恐ろしいが、天然だと信じたい。


 などとアホな事を考えてるとエリナが巻き尺っぽいのを持って来たのでそのまま井戸まで行く。

 風呂場も近くにあって、鎧戸の窓がある。ここから直接ホースなり通せば楽になるな。



「口径は十五センチか。ここから風呂の鎧戸までは意外と近いが一メートルのメジャーじゃ足りんな。エリナそこに立ってくれ」


「ここ?」



 ポンプの口からメジャーを目いっぱい伸ばした一メートル部分でエリナにメジャーの端を渡して俺が移動する。

 二メートルの地点でもう鎧戸の近くだ。



「三メートルもあれば十分か。最悪流しそうめんみたいに板で水路を作ってその場で桶を持ち上げて水を流す方法で、移動せずに水を溜められるようにするか」


「そういえばお兄ちゃん、魔法でえいっ! って直接水を出せないかな。私は水魔法使えないけど」


「お前賢いな。火魔法で沸かす事ばかり考えてて水魔法の存在をすっかり忘れてたよ」



 登録証を見ると俺の魔力は98%に回復していた。

 帰り道で風魔法を使わなかったら100%だったかな? 使う前に見ておけばよかった。


 エリナの登録証を見ると30%だ。あれから2時間くらい経ったのか。

 早速風呂場に行って水魔法を使う。



「<アクアクリエイト>!」



 ばしゃーと水が出る。

 桶一杯よりやや多い位か。

 登録証の魔力を見ても98%のまま変わらない。



「回数は必要だけど行けそうだな」


「そういえば白魔法で飲み水を出す魔法があるよ」


「俺が使ったのはどっちなんだろうな」



 あとは大波を起こす魔法や水を刃のようにして敵に攻撃する魔法くらいしか知らないぞ。

 あとの攻撃魔法は水じゃなくて氷だし。

 しかも記憶もあやふやだ。

 映画版の方だっけかな。



「お兄ちゃんが魔法を使う時って何を喋ってるか分からないからなー」


「あーそういうもんなのか。なら恥ずかしがらなくても大丈夫じゃん俺」


「お兄ちゃん、飲み水の方の魔法使っても良い?」


「ちゃんと許可を取るエリナは偉いな。よし、使ってみろ。登録証の魔力確認は忘れるなよ」


「うん! 造水(メイクウォーター)!」



 ドバシャーンと百リットルくらい出た。

 なにこいつ。

 飲み水でこの量はおかしいだろ。



「……魔力どれくらい減った?」


「えっとね、29%だって」


「じゃあ俺より強力な魔法なんじゃねこれ。魔力をもっと抑えて出してみよう。のどが渇くたびにこんなに出してたら水浸しになるぞ。魔力も勿体ないし」


「わかった! 造水(メイクウォーター)!」



 パシャッと水が出る。

 それでも桶一杯の俺と同じ位だ。



「魔力は?」


「29%のままだね」


「もっともっと抑えてもう一回。ちょっと桶を構えるからそこ狙って発動してみろ」


「はーい! 造水(メイクウォーター)!」



 ぴちゃっと桶に水が入る。

 五百ミリリットルくらいか。



「お、良いぞ、この感覚を忘れないようにな」


「はい! お兄ちゃん!」


「じゃあちゃちゃっと水溜めるからちょっと待っててな」


「私が魔法使った方が早くない?」


「うーん、お湯を沸かすのにどれくらい魔力が必要かまだ分からないから今回は待ってな。お湯を直接出せればいいんだけど火と水の複合魔法とやらで、初心者は別々に使ったほうが良いって爺さんの本にも書いてあったしな」


「はーい。私は水魔法使えないしね」


「じゃあ水を溜めるぞ。水位が五十センチ位になったら教えてくれ <アクアクリエイト>!」


「<アクアクリエイト>! <アクアクリエイト>!」



 登録証を確認しながらひたすら水魔法を使う。

 十回使うと1%減る程度か。


 ほんとわかりにくいなこの表示方式。

 魔力総量と使用魔力がわかる方法とか無いのかね。

 爺さんにそのあたり聞いておけばよかったな。もらった本に書いてあれば良いんだけど。


 浴槽は大人四人が楽に入れそうなサイズだ、二メートル四方ってところか。

 五十センチの水を張ると二千リットルか?


 エリナが百二十リットルくらい入れてくれたから残り千八百八十リットル。

 一回二十リットルだとしてもあと九十四回くらい魔法を使えばいいんだな。

 魔力換算で約10%だ。

 桶で汲むより楽だけど、流石に大変だな明日は絶対ホース探してこよう。 


 ぜーぜー言いながらエリナの「もうお水これだけあれば大丈夫だよ!」の声に救われて魔法を止める。

 やっと水溜めが終わった……。


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