魔法Ⅱ
「炎の矢!」
一通り初級攻撃魔法を見終わった俺達は実演に入る。
エリナは一発で魔法の発動に成功する。
こいつ天才か。
そういや名前も似てるのな。
髪の色は違うけど。
あれ? アレに飲みこまれたら髪の色も一緒じゃね?
でもエリナはストレートだしな。
別人だ別人。
「<フレアアロー>!」
発動したけど恥ずかしい。炎の矢じゃ発動しないのは何かの呪いか、もう完全にあのイメージなのか。
「<ファイア>!」
あ、発動した。火力MAXにしたライターみたいな火だけど。
「<メ〇>!」
……握りこぶし大の小さな火の玉がぽよんって出ただけだ。ゲーム出展だとあまりイメージが沸かないのかな。
「火球!」
エリナが火球魔法を唱えると、バスケットボール大の火球が出現して標的を焼き尽くす。
エリナは凄いな。これ初級でも難しい奴じゃないの?
「火球!」
出ない。
やはりアレか。
「<ファイヤーボール>!」
ぽふん! メラメラメラ
出ました。
着弾して焚火みたいになってる。
かめ〇め波とか出せるんかな。
周りに人がいる状況で絶対に試したくないけど。
動画流出されたくないから、防犯カメラの無い所でこっそり試そう。
一通り実演が終わると爺さんからアドバイスを貰う。
「トーマの方は初級攻撃魔法は一通り使えるの。ただ威力が低いようじゃ。照れを無くすことと反復練習で威力向上や、より難易度の高い応用魔法も発動できるようになるじゃろう」
「照れちゃうんだよな。どうしても」
「ネーミングに恥ずかしさがあるなら自分で発動しやすい名前を付けるとよいぞ」
「そっか、アニメのままだとどうしても照れちゃうからそれもありか」
「お嬢ちゃんの方は素晴らしいな。しばらく鍛錬を続ければ中級魔法も割と早く使えるようになるじゃろう」
「ありがとうございます!」
「中級、上級と極めると色々な魔法が使えるんじゃ。例えば風魔法なら空を飛べるとかじゃな」
「まじか!」
「すごーい!」
「とはいっても魔力消費が多過ぎて、この国一番の使い手でも数分間空中に浮かぶくらいじゃがな。それでも体を軽くすることによってスピードを上げたりと色々応用が可能じゃ。実演してみせたいんじゃが、歳をとると魔力量がどうしても減ってしまうんでな、今の儂じゃ浮くことすらできないんじゃよ」
「なるほど、奥が深いな魔法って」
「そっか、だから院長先生は……」
「そろそろ二時間じゃな、これほど飲みこみの早い生徒は初めてじゃったよ。素質があっても魔力が励起できなかったり、魔力が励起できても魔力操作が出来なかったり、魔力を集めることが出来ても発動が出来なかったりと、中々魔法を扱える人間というのは少ないんじゃが、ここまで優秀なのは珍しいの」
「爺さんありがとう。たしかに講義料以上の収穫だった」
「おじいちゃんありがとうございました!」
「ほっほっほっ、本当は駄目なんじゃが、二人にはこっそり儂の本をやろう。儂が今まで使っていた魔法の一覧じゃ。イメージさえ掴めればおぬしらはどんどん上達するじゃろう。魔力量を増やすにはとにかく魔法を使いまくる事じゃ。体力と一緒じゃの」
「爺さん、助かるよ」
「ありがとうおじいちゃん! 私頑張るね!」
「うんうん。頑張るのじゃぞ。儂はここのギルド長に用事があるから失礼するが、ここの訓練場はあと二時間は使ってよいからの」
「爺さんありがとな」
「おつかれさまでしたー!」
チ〇カシを見ると丁度十五時だ。
爺さんちょっとサービスしてくれたんだな。
っとそうだ、今丁度二人の魔力は0%だから回復にどれくらいの時間を計るのにちょうどいいな。
「エリナ、今丁度十五時だから、一時間後に魔力がどれくらい回復してるか確認しよう」
「わかった!」
「爺さんからもらった本を読みながら一時間待つか」
「そうだね!」
上達すればレビ〇ーションとかレ〇ウイングとかも使えるのだろうか。
でも属性の素質はあっても上位魔法は厳しいって言われたしな。
ドラグ〇レイブは無理だろな、力を借りる存在がいないし。
いないよな?
あぁ今企業の面接試験が受けられたら「特技は何ですか?」「イオ〇ズンです」って言えたんだが。
いやまだ使えないけど。
でもあれって閃光魔法だっけ? 爆発とか雷属性とか色々設定変わってるんだっけ?
とアホな事をむむむと考えてると
「お兄ちゃん、変な事考えてない?」
「良くわかったな、すごいなエリナ」
「だってお兄ちゃんだもん。わかるよ」
くっそ、何も言い返せない。
仕方ないので黙って爺さんから貰った本を読んでいく。
おお、剣に魔法をかけるなんて事もできるのか、これは是非習得したいな。
ナマクラっぽいけど剣を手に入れたばかりだし。
探査魔法……風の幕を十メートル四方に張って生物の侵入を感知するのか、応用で幕の強度を上げてバリアみたいにも使えると、なるほど。
いやすごいな、これは一日じゃ読み切れないし、一つ一つ試してたら時間もかかる。じっくり少しずつ習得していくか。
「お、解毒魔法や病気の治癒魔法があるな」
「院長先生も昔は使えたみたいなんだけどね」
「そうか、だからエリナの病気を治すのにヨモギを取りに行ってたんだ」
「そうそう、帰ったら院長先生に教えてもらえるかも」
「そうだな、覚えたら念の為にガキんちょども全員に治癒魔法掛けてやるか。栄養足りないのは無理だろうけど」
「うん!」
チプカ〇を見ると丁度十六時だ。
「よし一時間だ。俺は25%になってるな。エリナは?」
「私は10%だって」
「魔力総量がわからんからあくまでも目安だな。回復量は一定なのか個人差があるのかもわからん」
「でも一時間で10%だと今日中には回復しないね」
「寝たり何か食べたりすれば回復量は上がるかもしれないし、魔力回復ポーションみたいなものもありそうだな」
「そっか! 色々試してみようよお兄ちゃん! ってあれ? 私レベルが上がってるよ」
「本当だ、レベル5だったのに7になってる。魔法習得して上がったんだなこれ」
「凄いのかな? これ凄いのかな?」
「凄いんじゃないか? 6を飛ばしていきなり7だろ? これで15歳の平均程度にはなったんじゃないのか?」
「わーい! これでお兄ちゃんの邪魔にならなくて済むね!」
「邪魔なんて思ってないが、魔法をもっと使って、色んな魔法が使えるようになればもっと上がるだろうな。頑張れよ」
「うん! 私もっともっと頑張る!」
「ああ、そうだな。とりあえず買い物して帰るか。あとエリナの野外活動用の服と武器が欲しいな」
「武器?」
「採取に刃物があれば便利だし、いざという時にも安心だしな。ま、ナイフ程度でも無いよりはマシだろ」
「いいの?」
「安全のためだ。遠慮するな」
「うん! じゃあ早速行こう!」
エリナに手を引かれて受付の前に行くと、丁度あの事務員がぼけーっと座ってたので声を掛ける。
「ちょっといいか?」
「はい、なんでしょう?」
「良い講師に教わることが出来たよ。ありがとうな」
「いえいえ、仕事ですので」
「で、あの訓練場って借りるのは可能か?」
「予定が入ってない限り貸し出し可能です。一時間銅貨百枚で、標的一本につき銅貨十枚です。原状回復していただけるなら地面を掘るような魔法を使っても構いませんが、あまり荒らされるようですと別途整備料金がかかります」
「わかった、魔法の練習をする時には借りるかもしれない」
「かしこまりました。予約も可能ですのでその際はお申し付けください」
「あと、簡単な武器や防具を揃えたいんだがお勧めの店はあるか?」
「こちらの地図を差し上げます。装備関係、薬品関係、道具関係など必要な店が書かれています。印のある店で登録証を見せるという恥ずかしい思いをすれば割引も受けられますよ」
「恥ずかしいって、そりゃ職業ヘタレだけども」
「銀色の登録証を見せた途端に塩対応になる覚悟もしておいてくださいね」
「冒険者ギルドの登録証はクズの証明って事だしな。気を付けるよ」
「はい、お気をつけて」
「ああ、ありがとう」
エリナと地図を見て、まずは装備だなと武器屋へと歩いていく。
地図を見ると武器屋の隣が防具屋のようだ、系列店かな?
エリナのタグを見せてもらうと体力が45%になってた。
体力無いなこいつ。
まあ食事事情が改善されて体動かしてればそのうち体力もつくだろ。